6月13日、銅価格の高騰による銅線ケーブル盗難の急増を受け、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)」が参院本会議で可決・成立した。金属くず買い取り業者の規制強化を通じて盗品の流通を防止し、金属盗の抑止を目指す。
新法では、以下のような措置が導入される。
本人確認義務:業者は取引相手の身元を運転免許証など顔写真付き身分証明書で確認し、記録を3年間保存。
営業届け出制:都道府県公安委員会への届け出を義務化。無届け営業には6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科もあり)
盗品申告義務:盗品の可能性がある金属の買い取り時に警察への申告を義務化。
工具規制:ケーブルカッターやボルトクリッパーなどの大型切断工具の隠匿所持を禁止。違反には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。
監督強化:警察による立ち入り検査を可能とし、違反業者には6か月以内の営業停止処分を課す。
施行は、買い取り業者関連の規定が公布から1年以内、工具所持規制が3か月以内を予定。アルミニウムなど、銅以外の金属も政令で規制対象に追加可能。
背景には、銅の国際価格の高騰がある。2025年6月時点で、銅価格はトン当たり約1万ドルを超え、過去5年間で約2倍に上昇。地政学的リスク、太陽光発電やEVの需要増が要因とされる。
警察庁によると、2024年の金属盗の認知件数は2万701件(前年比約30%増)、被害額は130億円超。このうち、太陽光発電施設での銅線ケーブル盗難が約35%(7054件)を占め、1件当たり平均2千万~3500万円の被害が発生。盗難後に金属くず業者へ即座に売却する手口が横行し、一部業者が盗品と知りながら取引するケースも報告されている。
被害は電力供給の不安定化やインフラの損害に及び、太陽光発電業界ではアルミニウムケーブルへの移行や監視強化を進めている。警察庁は、新法により2026年までに金属盗の認知件数を20%削減する目標を掲げている。
一方、買い取り業界からは「小規模業者の負担増が懸念される」との声も上がる。また、銅以外の金属への盗難シフトや外国人窃盗団への対策として、出身国との捜査協力の強化が課題とされている。
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