21世紀に入ってクラウドコンピューティングサービスが拡大し、中国との間で人工知能(AI)の開発競争が展開されるに伴い、データセンター需要が国家レベルの重要さを持つようになった。米エネルギー長官のクリス・ライト氏はこれを「マンハッタン計画2.0」と表現する。
データセンターとは、サーバファーム、スーパーコンピュターネットワーク、および暗号資産マイニングなどに使用する施設、設備を指す。現時点でアメリカに存在するデータセンターは数えきれないほど増加している。
世界最大級の統計データプラットフォーム「Statista」によれば、今アメリカには5426棟(2025年3月時点)のデータセンターが存在する。
デンマークの「Data Center Map ApS」は3764棟(2025年6月時点)と報告し、アメリカの「DataCenters.com」は2482棟(2025年6月時点)が全米で稼働中の数だとしている。
様々な統計を総合すると、アメリカに存在するデータセンターは、中国を含め他のどの国と比較しても5〜10倍の数を誇る。「Visual Capitalist」のランキングによれば、実に地球上のおよそ半分のデータセンターはアメリカにある。
4月30日に議会議員とシリコンバレーのベンチャーキャピタル代表者が集まった「Hill & Valley Forum」で米内務長官のダグ・バーガム氏は、送電網を整備し、より多くのデータセンターに電力を供給することはイランの核開発と並んで「我々が今直面する二つの脅威のうちの一つだ」と警鐘を鳴らした。もし電力需要が満たされなければ、アメリカは「中国とのAI競争に敗北する」。
2024年の米エネルギー省の予測によれば、データセンターの電力需要は2028年までに3倍に膨れ上がる。北米電力信頼度協議会 (North American Electric Reliability Corporation)も前年に同じ数字を報告していた。
近年、アメリカの電力需要は久しく停滞していたが、2022年に登場したOpenAIのChatGPTによって「増加」へとシフトした。生成AIの革命は、電力事業者、地域の送電事業者、および各州の電気通信事業を担う公益事業委員会に衝撃を与え、データセンターの需要を支える送電網の拡大が急務となった。
データセンターの建設は急ピッチで進んでいる。事業用総合不動産サービスを手がける米CBRE社の予測によれば、2025年に4750以上のデータセンターが着工する。今存在するデータセンターがほぼ倍増する計算だ。
不動産コンサルティング会社のDodge Construction Networkの分析(2024年9月)では、データセンターの建設は事業用不動産のうち最も成長の早いセグメントだ。
しかし、提案された建設計画のうち地方政府の認可を待っているものがいくつあるのか、現時点で確認できる信頼性の高いソースはない。
米コロンビア大学の公共政策分野で客員教授を勤めたロバート・マッケンジー氏は、データセンター建設に関する不確実性のあまり、そのトレンドと反対意見を調査する「Data Center Watch」のような会社が設立されるようになったと指摘する。
マッケンジー氏はまたデータセンター建設について、「非常に具体的だが聞き伝えに過ぎない」ローカルニュース、あるいはSNS上の報道がほとんどを占めると話す。
「まだ誰一人として全ての情報を統合し、整理できていない」「それゆえアメリカ全体の状況も不明で、実態がどうなっているのか見当もつかない」、と語った。

Data Center Watchが2週に1度公表する分析によれば、現在データセンターに関する2つのトレンドが確認されている。一つ目は、予想を上回るデータセンターの建設申請が行われていること、二つ目は地元の反対に遭遇していることだ。
「あちらこちらで地元住民の反対に遭遇しているというローカルニュースやブロガーの記事を多くみる。地元の抵抗は想像以上に強い」「要するに、我々が普段耳にする新データセンターの建設は、すでに進行中だということだ」
また、事業者は提出したデータセンター建設申請のうち少数しか着工していないため、電力量の予測も難しい。2月に開催された米国法定公益法人協会(National Association of Regulatory Utility Commissioners)の冬季エネルギー政策会議で、米政策・法務コンサルティング会社「ALN Policy and Law」の代表を務めるアンジェラ・ナバロ氏は各州の公益事業委員会に対し、「データセンター建設をめぐって、デベロッパーたちが最善のディールを求めて長い列をつくっている」と報告した。
よそでやってくれ
データセンターの建設ラッシュは、米全土で地元住民の反対に遭っている。
Data Center Watchが3月に公表したデータによると、アメリカ22の州で少なくとも142の団体が組織的にデータセンター建設および拡張工事を阻んでいる。これにより、2023年3月〜2025年3月の2年間で建設が止まったものは金額にして180億ドル、計画が遅れたものは460億ドルに上る。
マッケンジー氏は、Data Center Watchが毎週更新しているような情報は不完全な統計だと指摘する。それらは「公式発表、あるいは市民会館で検討中のもの、メディアで報道されたものを情報源にしている」。

しかし、現在表に出てきた報道は国中でデータセンター建設が問題となっていることを示す氷山の一角に過ぎない。
「我々が3月の報告書を作成していた時、『なんと、640億ドルもの規模で計画が進んでいないのか?』と思ったよ」「地元住民の反対がこれだけ強いということだ」
今年の2月、AI用データセンター建設が集中する16の州で800人を対象にしたアンケート調査によると、「最先端のAIデータセンターは米国にとって極めて重要だ」と答えた割合は93%に上った。ただし、地元にデータセンターが建設されることに賛成したのは全体の35%にとどまった。
アンケートを実施したジョー・ワーニモント氏はエポックタイムズに対し、「明らかに、デベロッパーの考えと地元住民の体験に隔たりがある」と語る。
「住民が反対しているのは必ずしもテクノロジーそのものではない。むしろ、地域の資源や開発のコントロールを握り続けたいという願望からくるものだ。しかし、現実はそうなっていない」
様々な研究・調査結果が、データセンターに対する反対意見の存在を指摘している。その一部は特定の地域、場所特有のものだが、電力需要、水の確保、騒音の不満、周辺の資産価値の減少といった懸念はほとんどの場所で共通している。
特に、建設プロジェクトが生み出す雇用効果に懐疑的な意見が多い。また、地元政府がデベロッパーに丸め込まれ、水面下で税制上の優遇やインセンティブを与えているのではないか、と疑う声も少なくない。州レベルの法律が規定するところにより、地元政府の計画担当者が建設プロジェクトの申し入れを拒否、あるいは修正できないよう制限されている、という指摘もある。

超党派の反動
データセンター建設への抵抗は超党派で存在する。地元勢力はAIへの関心に関わらずプロジェクトに難色を示しており、今やデータセンターが新たな「うちの裏庭ではよしてくれ」の火種になっている、とData Center Watchの報告書は結論づけた。
報告書では、「かつて地元住民が工場、建設、大型商業施設の建設に反対したように、今度はデータセンターが批判の対象になった」「騒音や水の使用から電力需要、資産価値といった問題に至るまで、今やサーバーファームは大規模開発に対する抵抗の矛先にいる。地元の反対は姿を変えつつあり、データセンターは疑いもなく批判の的となっている」と述べている。
ワーニモント氏は、「(地域の反対が)特定の政党と結びついているかわからないが、単に『自分の近所に(データセンターが)できてほしいか』という問題だろう」と指摘した。
非営利消費者支援団体「パブリック・シチズン(Public Citizen)」のテキサス支部で準会員(気候・クリーンエネルギー担当)を務めるカミル・クック氏は、テキサス州でのデータセンター反対運動は「明らかに党派の色合いが強い」と話す。テキサス州の田舎では、データセンターに抵抗するのは強い共和党支持者であることが多い。
クック氏はエポックタイムズに対し、「私が接触した団体のほとんどは、データセンターの増築に反対する共和党支持の人たちだった」「我々がサポートした団体は全て、地元の共和党勢力、例えば市の支部などと非常に密接なつながりをもっていた」と語った。
4つの波
「データセンター連合」の広報責任者を務めるジョン・ヒューキル氏は、データセンター計画に向けられる批判のほとんどは、データセンターに限らずどのような土地利用の際にもしばしば直面する課題である、と指摘する。
結成から6年が経つデータセンター連合は組合員数が36に上り、メタ社(Facebookの親会社)やアマゾンウェブサービス、マイクロソフトなどの大規模クラウドプロバイダーや、Equinix社などのコロケーション(データセンター内のサーバースペースを貸し出す)サービスを提供する企業が加盟している。
ヒューキル氏はエポックタイムズに対し、「今起きているのは、データセンター建設の進む州や自治体が増えていることの現れだ」と語る。データセンターそのものが世間的に新しいだけでなく、建設が進む場所の多くが歴史的に産業発展を経験してこなかった二次、三次マーケットであることも関係している。
ヒューキル氏によれば、データセンターの発展は大きく分けて4つの波があり、その第1波はインターネットが急速に普及する2000年代に現れた。
第1波は、取引速度のさらなる向上を求めるウォール街に近い、ニューヨーク州とニュージャージー州で出現した。
第2波は、カリフォルニア州のシリコンバレーとバージニア州北部に現れ、その周辺地域は現在世界で最もデータセンターの密度が高いことから「データセンター・アレイ(Data Center Alley)」と呼ばれている。
第3波は、オハイオ州、ジョージア州の郊外、準郊外などに代表される二次マーケットに現れつつある。
ヒューキル氏は、「ここ2、3年で成長してきた三次マーケットは、歴史的にデータセンターの建設をほとんど全く経験していない。例えば、ミシシッピ州、アラバマ州、アイオワ州、インディアナ州といった場所を考えてみてほしい」「抵抗運動はこうした場所からきている」と述べた。
三次マーケットの成長には多くの要因がある。土地の安さ、電気代の安さ、豊富な水資源、経済発展を願う自治体の意向などだ。
「(三次マーケットに)進出するメリットが大きくなっている。これまでは主要マーケットでしか数十億ドル規模の投資が行われてこなかった州でも、三次マーケットで同規模の投資がみられるようになる」「データセンター業界が一枚岩ではないことを知っておくことが重要だ」、とヒューキル氏は指摘した。
土地利用やゾーニングを専門とする法律事務所「Curata Partners」の創設者で代表を務めるコリーン・ギルス弁護士は、データセンター開発をめぐる課題についてエポックタイムズに語ってくれた。

ギルス氏は、「データセンターが直面する課題には、地域の状況や文脈に起因するものもある」「建設場所は?外観や周辺との融合性はどうか?」と話す。
人口増加の著しい場所では、交通インフラや教育インフラの整備にも様々な難題が発生する。その場合、批判は必ずしもデータセンターに向けられているというより、地域の発展や開発の話題全般に及ぶ。不動産事業者は、こうした地域住民の訴えは正当なものだと認識している。
一方で、開発側の「誤認識」が依然存在するとギルス氏は指摘する。例えば、「Aという場所にデータセンターがある場合、Bという場所にデータセンターを建てる際にも、水や電気の使用といった同じ影響、同じ課題にぶつかる」と思い込んでしまうケースだ。しかし、実際は地域によって問題の焦点は異なっている。
柔軟な対応
データセンター建設で最も議論に上るのは、水と電気の大量使用、騒音の発生、そして雇用についてだ。
データセンター建設が生み出す税収や優遇措置に関する密約、あるいは建設の申し入れを断れないよう制限する法律の存在などもよくみられる問題で、それぞれ分析に値する。
電気の使用
送電網市場を分析するMonitoring Analytics社によれば、データセンターの建設が急ピッチに進んだ場合、米中西部13州での公共料金負担が今年だけで94億ドル増加すると見込まれている。13州に住む6500万人の電力需要は、北米最大の卸電力市場「PJM Interconnection」に加盟する1100の送電事業者が担っている。
2024年12月に公表された米エネルギー省の分析によると、データーセンターは同規模のオフィスビルと比べ、平方フィートあたり10〜50倍の電力を消費する。
アマゾンのとあるシニアマネージャーは米メディアの取材に対し、ペンシルベニア州・ルザーン郡にあるデータセンターだけで、人口200万人以上を抱えるピッツバーグ全域の電力需要に匹敵するだろうと語った。
ゴールドマン・サックスは、データセンターに起因する世界の電力需要は2027年までに1.5倍、2030年までに2.65倍に膨れ上がると予測する。
米ローレンスバークレー研究所の報告では、2028年までにデータセンターが全米の電力需要に占める割合は12%まで上昇する可能性があるとしている。2023年時点ではわずか4%にすぎなかった。
ペンシルベニア州で非営利市民団体「Protect PT」の代表を務めるジリアン・グレイバー氏は、地元住民が懸念している問題の一つに「データセンターによって増加する電力需要」があると指摘する。
「ペンシルベニア市民は、電気やガス料金の高騰を心配している」「電力の確保は、産業全体の喫緊の課題だ。それはデータセンターに限らず、21世紀型の産業すべてに当てはまる」
ヒューキル氏は送電網の拡張について、「データセンターの需要が理由の一つにある。また、産業の国内回帰や製造業とも関係がある。ビジネス、電気自動車、家電製品など、あらゆる分野で電化が進んでいる。これらの電力需要も決して小さくない」と指摘した。
データセンター連合エネルギー政策担当副代表のアーロン・ティンジャム氏は2月の冬季エネルギー政策会議で次のように話した。多くのデータセンター開発事業者は、天然ガスや石炭よりも風力や太陽光といった再生可能エネルギーおよび原子力による発電を望んでいる。しかし、小型モジュール原子炉(SMR)が普及するまでの間、当面は電力供給に余裕のある地域を選ばざるを得ない、と。
現役の発電施設や稼働を停止した石炭火力発電所の共同利用、もしくは自前の発電設備の設置を求める事業者も少なくない。既存の送電インフラに依存せず、自由に発電規模を拡張できるからだ。

ギルス弁護士は、「『これではあなたたちの電気が我々のところに届くまでに時間がかかりすぎる。自家発電設備が整ったら、送電設備をお返しする』と言ってきたクライアントもいる」と話した。
データセンターにはベースロード電源(昼夜関わらず、安価で安定的に発電できる電源)が必要で、再生可能エネルギーでは不十分だ。バージニア州ラウドン郡で責任者を務めるマイク・ターナー氏は自身が書いた自治体向け白書『A Strategy for a Changing Paradigm』でそう語る。
「平均的なデータセンターが必要とする電力量は、ソーラーパネル1000エーカー(約4平方キロメートル)分に相当する」。また、マサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島沖に設置された62機の風力タービンでも、データセンター10個分の電力しか賄うことができない。
「バージニア州議会 監査・政策評価機関(Joint Legislative Audit & Review Commission、JLARC)」が2024年12月に発表した分析によると、「今現在、データセンターの電気使用に係るコストは、すべて事業者が負担している。コストは、それを発生させた需要家(主にデータセンター事業者)が適切に負担する料金体系が整備されており、その他の一般需要家(一般家庭や中小企業)に負担が転嫁されることはない」
水の使用
データセンターでは、サーバーを冷却するために大量の水を使用する。米タルサ大学の報告では、データセンター1棟が1日に使用する水の量は、最大で500万ガロン(約1万9千トン)に上る。それは、「数千の住宅や農地に供給できる量」に相当する。
マイクロソフト社が2022年に公開した「サステナビリティ・レポート」によれば、同社のデータセンターによる水の使用量は前年比で34%増加した。メタ社の2023年レポートでは、2022年の水使用量は12億9千万ガロンに上る。
ただし、データセンターの技術も進歩している。ギルス氏によれば、水の大量使用を必要とするデータセンターはごく少数で、ほとんどは再生水と各種技術を用いたサーバー冷却システムを備えている。
「数年前は、全てのデータセンターで蒸発冷却(水の気化熱を利用して温度を下げる)を採用していた」「その頃は、冷却のために大量の水を使っていた」が、今ではほとんど見られなくなったという。
ヒューキル氏はJLARCの報告書を引用し、バージニア州にあるデータセンターのうち83%は大規模オフィスビルと同等か、それ以下の水使用量だったと述べた。しかし、同じように電力に余裕がありかつ安価な三次マーケット内でも、データセンターの密度が急速に高まることで水不足になる可能性が指摘されている。
米紙ブルームバーグは5月、全米のデータセンターのうち3分の2は「水の供給が非常に逼迫している地域」に建てられていることを明らかにした。また、バークレー研究所のアーマン・シェハビ氏による調査では、全米のデータセンターのおよそ2割は、干ばつや種々の理由で「中程度〜重度の水不足に陥っている地域」に存在する。

ペンシルベニア州西部のような水が豊富な地域でも、データセンターの「水使用」が問題になるケースがある。「場所、騒音、光害といった典型的な不満に加えて、水使用も重大な懸念材料になる」とグレイバー氏は語る。
「ガス火力発電所の電力供給を受けるデータセンターは、発電時にガスを使用する。そして、そのガスを地下から採取する際に使用される水圧破砕法(フラクチャリング)で、すでに地元の水資源が大量に使われている」
ペンシルベニア州西部のウェストモアランド郡にあるビーバー・ラン貯水池は、近隣住民およそ10万人以上に飲料水を供給している。ところが、同貯水池は少なくともここ2年間立て続けに長期間の水不足に見舞われている。
グレイバー氏は、「フラクチャリング業者は我々の水を抜き取り続けている」「ペンシルベニア市民は節水を呼びかけられる一方で、フラクチャリング業界は知らぬ顔で水を使用する」と不満をこぼした。
データセンターの水冷に用いられる水は、ゴルフコースなどでまた再利用できる。それらの水は最終的に小川などに流れ着き、再び水の循環サイクルへと戻っていく。
しかし、水圧破砕で地下に圧入された水は化学物質を含んでいるため、再び飲料水のレベルまで浄化することはできない。すなわち、利用可能な水資源の絶対量を減らすことになる。
騒音
データセンターに設置された発電機、HVAC冷却システム、受電設備は、「都会の大通りや芝刈り機」ほどの騒音を出すこともある。聴覚保護具を製造するSensear社の調べでは、最大で96dBにもなるデータセンターの騒音を持続的に浴びた場合、難聴を引き起こす可能性がある。
とはいえ、近隣住民からの騒音苦情に対応する中でマフラーや騒音緩衝材を設置したことにより、外部に漏れる騒音は小さくなってきた。データセンター業界の情報プラットフォーム「Data Center Knowledge」が調査結果をまとめた。
データセンターは、実際には「一般的な騒音(飛行機、芝刈り機、1m弱の会話)よりも静かだ」とヒューキル氏は話す。データセンターの騒音は「人間の聴覚に害を及ぼさない上、騒音規定法や条例に違反するケースもまれだ」。
JLARCの報告書によれば、「データセンターの大部分は、騒音によるクレームを受けていない」。
「今は騒音緩衝材も導入されている」「仮にデータセンターの上部の冷却水循環装置(チリングユニット)の音が大きすぎる時は、事業者側が騒音を軽減するよう努力してきた」と述べている。

雇用の創出
企業立地・産業誘致に関する米専門誌『Area Development Magazine』によると、一般的なデータセンター1棟が創出する雇用は、電気工事士やエンジニアを中心に数百に上る。しかし、工場や本社オフィスなどと比べて長期的な現場雇用は少ない。米独立系報道機関「Pro Publica」が2024年8月の報告書で明らかにした。
「データセンターの長期雇用は比較的少数にとどまる。サーバーの管理は、他の大規模な産業施設に比べてそれほど人手がかからない。また、データセンターの駐車場は狭いかほとんど空いているため、他の巨大な製造工場とは容易に見分けがつく」
「2エーカー(8千平方メートル)あたり1つの仕事」と表現されることもあるデータセンターの雇用の少なさは、繰り返し批判の対象になっている。
しかし、データセンターに付随する雇用創出の少なさは、「よくある誤解」だとヒューキル氏は指摘する。PwCコンサルティングは2月に公表した報告書で、2017〜2023年の間で「データセンター産業は全米で460万の雇用を支え」、米データセンターでの直接雇用1人あたり「他産業で7人以上の間接雇用を生み出している」と結論づけた。
ヒューキル氏は、「データセンターの平均的なフルタイム雇用数は50〜100、という認識が一般的だ」。しかし、「この数字は、実際にデータセンターの稼働を支えている人々を正確に捉えているわけではない」と指摘する。
例えば、ネットワークオペレーターにコロケーションサービスを提供するデータセンターなら、施設の保守・管理業務も発生する。その場合、データセンターを所有する企業の従業員に加え、「サーバースペースを利用するテナントの従業員も、技術者として設備の維持業務に従事する」。しかし、これらの労働力は普通「雇用人数」にはカウントされないのだ。
透明性
データセンターへの反対意見は多岐に渡るが、州・地方政府による企業との取引もしばしば批判の対象になる。よくあるのは、政府と企業の間で税制優遇に関する合意を結び、それを機密情報として世間に公開しないケースだ。パブリック・シチズンのクック氏は、このような透明性に欠ける行為が市民の疑念と怒りを生んでいると指摘する。
「これまでの経験から、地域住民の声が届かないことが1番の問題点だと感じている」
クック氏は、「住民の意見が尊重され、住民に選択権があると思えるような、政府および企業とのコミュニケーションが全くない」と訴えた。
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