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少林寺住職の汚職の実態が判明 利益配分をめぐって当局と対立

2025/07/29
更新: 2025/07/29

中国の名刹・少林寺の釈永信住職が、資産横領や不適切な関係など複数の疑惑で当局の取調べを受けている。長年商業化の旗振り役を担ってきた釈永信と中国共産党(中共)当局との対立、資産管理や利益配分をめぐる思惑が背景にあるとみられ、世論の注目を集めている。

少林寺の住職である釈永信に対する取調べが27日に明らかとなった。関係筋によれば、当局は25日深夜に釈永信を拘束し、旧正月前後の海外訪問から帰国後には出国も制限していた。釈永信を取り巻く資産管理や所有権の問題が再燃し、背景には中共当局との間で利益配分の不均衡が存在するとする分析もある。

同日夜、少林寺管理処は、釈永信が寺院資産やプロジェクト資金を横領・侵占したうえ、複数の女性と長期にわたり不適切な関係を持ち、私生児をもうけたと公表した。また、仏教戒律にも重大に反していたと主張している。

少林寺関係者の話によれば、釈永信は25日深夜に当局の要請で呼び出され、その翌日には取調べ情報が広まった。釈永信は今年の旧正月期に海外出張から帰国した直後、すでに出国を制限されていたが、その後、国内での行動には制限はなかった。5月頃に、鄭州市や登封市の宗教局および統一戦線部に属するスタッフが、少林寺管理処の名義で少林寺に常駐を始めた。

釈永信と少林寺の過去のスキャンダル・社会的影響

釈永信は俗名を劉応成といい、1965年9月6日に安徽省頴上で生まれた。1981年少林寺に出家し、1987年から寺務に参与、1999年には正式に住職に就任した。

長年にわたり、釈永信は少林寺の商業化を主導し、年間収入は2億元を超えるとされている。2015年には収賄や私生活の乱れを取り沙汰されたが、2017年に当局は「証拠不十分」と結論づけた。それにもかかわらず、海外資産やスキャンダルに関する噂は途切れることなく続き、釈永信は世論の注目を集めてきた。

現在、釈永信は中国仏教協会副会長、河南省仏教協会会長を務め、かつては全国人民代表大会の代表も担っていた。現体制の下では、彼のような寺院管理者は「政治和尚」としての役割を果たし、体制内の恩恵を享受している。そのため、個人的な問題も社会的影響が大きくなりやすい。

財新網の報道は、今回の寺院資産の横領、不適切な関係、私生児の存在などの通報内容が10年前の告発とほぼ一致している。ただし今回は、民間による告発から政府の通報に格上げされた点が異なる。また、地方政府が事前に少林寺管理処の名義で常駐スタッフを配置していたことに注目する。

少林寺を巡る資産管理・利益配分の対立構造

過去10年間、釈永信と少林寺は「参拝料金」「寺院管理権」「少林商標権」をめぐって地元政府とたびたび対立してきた。2023年に開業した五星ホテル「中州国際少林大飯店」も新たな火種となった。釈永信は寺の利益拡大を狙い、宗教施設としての少林寺を法人化し、より自由な運営体制を求めていた。今回の取り調べでは、性的スキャンダルに加えて、寺院資産の管理と所有をめぐる問題が再び焦点となっている。

時事評論家・李林一氏は、財新の報道が示唆するように、取調べの本質的な要因は少林寺が蓄積してきた巨額資産にあると分析する。経済の減速局面にある中、当局内の幹部が寺院の収益を巡って主導権を争い、釈永信との間に利益配分の不均衡が生じたとみる。また、これまで黙認されてきた釈永信の不正やスキャンダルも、利害関係が崩れたことで表面化したという見方を示している。

資料によれば、少林寺が映画で有名になってから、釈永信は映像産業にも進出し、「河南少林寺影視有限公司」や「少林寺実業発展有限公司」(後に「河南少林無形資産管理有限公司」に改称)など複数の企業を設立。観光業に関連して、住職と企業経営者を兼ねる形で少なくとも17社に関わり、「少林CEO」とも呼ばれた。

注目すべきは、釈永信が旧正月前後の海外訪問から帰国後、すぐに出国制限を受けた点である。昨年11月11日~22日にかけてアゼルバイジャン・バクーで開催された国連気候会議(COP29)には、中国代表団の一員として参加し、大会のスピーチで「人類の欲望の過度な膨張が自己喪失を招いている」と発言した。

この発言に対し、ネット上では「言っていることは正論だが、この人物が言うと説得力に欠ける」「偽善的だ」「誰の金で旅費を払っているのか」「また国際的に恥をさらした」など批判的なコメントが相次いだ。

唐兵