中国本土では連休が8日間(10月1日~8日)と長く、全国の高速道路や主要観光地は観光客であふれ返った。しかし、そのにぎわいとは裏腹に、観光地周辺のホテル、民宿、旅行会社の経営者たちは「実際は赤字だ」と口をそろえて嘆いている。人は多いが、全く儲からないどころか損失を出しているという。
中国の金融・ビジネス・職場事情に詳しい著名セルフメディア「金融八卦女」の報道によれば、旅行業界関係者3名の証言から、今年の連休は「商売にならず、むしろ損失だった」という声が多く聞かれる。値下げが当たり前となり、宿泊率は著しく低迷し、最もショックだったのは「一夜にして観光客が消えた」という現象であった。これは一部地域に限らず、広範囲で共通する傾向であった。
たとえば、広東省の有名観光地近くにあるホテルでは、宿泊率はわずか3割にとどまった。ホテル経営者の阿強氏によると、大型連休期間中に台風が広東省に上陸し、10月1日~6日までずっと雨天が続いた。つまり、連休の主要な旅行日程はすべて台無しになったという。
阿強氏は、「多くの宿泊予約がキャンセルされた。毎日不安で眠れず、連休中は常に価格を調整していた。1日に8回も価格を変更するのが日常で、価格調整ソフトや、前売りパッケージ、TikTok(抖音)や会員向けチャネルなど、使える手段はすべて使ったが、結局は高いキャンセル率に苦しめられた」と語る。
さらに、「天気の問題だけではない。多くの人は最初からホテルに泊まる気がない。旅行者の多くは節約志向が強く、お金を使わずに済むなら使わない、使うとしてもできる限り少なくしようとしている。こっちは必死に頑張っているのだが、結局は赤字で終わった」と肩を落とした。
民宿は供給過剰 100万元投資も「大赤字」
雲南省麗江で民宿を経営する阿兵氏も、「連休中の売上を集計したところ、大赤字だった」と語る。
彼の民宿は立地も良く、全部で10室ある。例年であれば、連休前に1室あたり1500元(約3万円)以上まで価格を上げていたが、今年は様子がおかしいと感じ、すぐに値下げを実施した。最終的には700元(約1万4千円)台にまで価格を下げたが、それでも客足は鈍かった。
「麗江は民宿が多すぎて、過当競争が深刻だ。10月2日、3日は宿泊率が75%以上あったが、4日、5日には3割以下に急落した」とのこと。
阿兵氏は、今年の連休に大きく稼ぐつもりで、100万元(約2千万円)以上を投じて民宿の内装を全面改装した。10室はすぐに満室になると見込んでいたが、結果は大きく期待を裏切った。
「確かに街中には観光客がたくさんいたが、皆自家用車で来ているようで、民宿に泊まりたがらない。どうやら2025年は大赤字になりそうだ」と語った。
大西北の人気観光地 旅行会社は壊滅的な被害
阿杰氏は、甘粛省と青海省を巡る「青甘環線」ルートを専門とする少人数制の旅行会社を運営している。草原、砂漠、ゴビ、塩湖、丹霞、ヤルダン地形といった西北地方の絶景とシルクロードの文化遺産を巡るルートだ。
だが今年の大型連休について、阿杰氏は「白髪が増えるほどストレスを感じている」と打ち明ける。
「旅行会社の注文は壊滅的で、連休中も数件しかツアー予約がなかった。観光客の大半は自家用車で来ており、旅行会社を必要としない。車中泊する人も多く、テントを張って景区(景勝地や観光地)の駐車場やキャンプ場で泊まっていた」と語る。
旅行者の「節約志向」が鮮明に 高価格を敬遠する傾向
「金融八卦女」の報道によると、現在の経済状況の中では、連休中であっても旅行者は価格に非常に敏感になっており、少しでも高額な商品やサービスは敬遠される傾向にあるという。
大手予約サイト「美団(Meituan)」の統計では、ユーザーはホテルを予約する際に平均で4.3のプラットフォームを閲覧し、12軒のホテルを比較してから決定しているという。価格を上げるどころか、隣のホテルより20元(約400円)高いだけでキャンセルするケースも珍しくない。
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