長年、台湾をめぐって強硬な姿勢を崩さない中国共産党(中共)「一つの中国」を国際社会にも受け入れさせようとする中共の主張は、軍事・外交の場面を問わず繰り返し発信されきた。
その根拠のひとつとして、中国が長年重視してきたとされるのが1943年のカイロ宣言である。
日本の無条件降伏を前提に、当時の連合国である米英中が共同で発表したこの宣言には、「満洲、台湾、澎湖諸島を中華民国に返還する」との文言が盛り込まれている。北京は現在に至るまで、台湾が中国に属する根拠として繰り返しこの文書を取り上げてきた。
中共政府、台湾政府はこれを法的拘束力のある条約と解釈したが、署名手続きも批准も存在せず、当事国に主権処理を義務づける形式でもなかったため、カイロ宣言は交戦国の指導者が戦争目的を示した政治的声明にすぎず、法的拘束力を持つ「条約」ではないとの見方が根強い。
中国問題の専門家のゴードン・チャン氏はXの投稿で以下のように述べた。
「中国は、法的効力を持たなかった1943年のカイロ宣言について繰り返し言及し続けている。なぜなら、1951年のサンフランシスコ平和条約が台湾の主権に関する中国の立場を致命的に損なうものであることを中国が知っているからだ」
1951年のサンフランシスコ講和条約は、日本が台湾に対する主権を放棄することを明記したものの、「どこに帰属させるか」については規定しなかった。同条約は中華民国(台湾)や中華人民共和国(北京)を署名国としなかったため、台湾の最終的帰属は条約上確定しなかった。
さらに翌1952年、日本と中華民国が結んだ日華平和条約でも、日本は改めて台湾放棄を確認したが、やはり主権帰属を特定する条項は盛り込まれず「帰属は連合国で決めるべき問題」として、台湾の法的地位をめぐる議論は実は現在まで続いている。
国際社会に対して「台湾は歴史的に中国領だった」という物語を維持することは、中国が国際舞台で自らの正当性を主張する上で欠かせない要素となっている。
中華人民共和国は1949年に建国されたため、台湾の戦後処理や帰属に直接関与しておらず、法的・歴史的根拠は薄い。だからこそ、中国政府は「一つの中国」を声高に主張し続けていると考えられる。
一方で、台湾内部では住民の多くが自らを「台湾人」と認識し、中国から距離を置く意識も強まっている。国際社会でも、安全保障やサプライチェーンの観点から台湾の重要性が増しており、中国の主張とは別に、台湾を「現状のまま扱うべき」とする声も各国に広がっている。

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