京東の独家電大手買収にEUが異議 中共補助による不公平競争を調査

2026/07/23
更新: 2026/07/23

欧州委員会は7月22日、中国のEC大手、京東(JD.com)に対し、同社が約25億ドルでドイツの家電量販大手Ceconomyを買収する計画について、「異議告知書」を送付した。欧州委は、この買収が外国補助によって市場競争をゆがめる可能性があると暫定的に判断し、京東に回答を求めた。

京東は、異議告知書の受領について、EUの「外国補助金規則」(FSR)に基づく調査手続きの一環だと説明した。同社は今後も審査に協力するとし、この買収はヨーロッパ小売業のイノベーションと競争力の向上につながるとの見方を改めて示した。審査手続きは2026年下半期に完了する見通しだという。

欧州委は今年5月、FSRに基づき、この買収計画について詳細な調査を開始した。最終判断の期限は10月2日で、買収を承認するかどうかを決める。

外国補助で不公平な優位を得たか

FSRは2023年に正式に施行された。EU競争法の規制の抜け穴をふさぐことが目的だ。これまでEUは主に「国家補助」の枠組みによって、加盟国政府が企業に与える補助を規制してきた。一方で、EU域外の政府が企業に提供する支援については、有効な審査の仕組みが十分ではなかった。

FSRでは、企業がEU域外の政府から資金面の支援を受け、その結果としてEU市場で不公平な競争上の優位を得たと判断される場合、欧州委が調査できる。必要に応じて是正措置を求めることができ、場合によっては企業買収を禁止することも可能だ。

欧州委が問題視する「外国補助」は、主に3つの条件を満たすものを指す。第一に、EU域外の国の公的機関が資金面の支援を行っていること。第二に、それによって特定の企業が利益を得ていること。第三に、EU域内市場の競争をゆがめる可能性があることだ。

対象となる支援の範囲は広い。政府補助金、優遇融資、融資保証、減税や免税、政府による直接投資に加え、市場価格より安い土地の売却や、市場価格より高い価格での政府調達なども含まれる。

欧州委は現在、京東が中共政府から優遇融資、税制優遇、各種補助を受けていたかどうかを調べている。さらに、こうした支援により、Ceconomy買収において他の入札者より不公平な優位を得たかどうかを評価している。これが今回の審査の中心となる。

EUが最終的に、市場競争をゆがめる事実があると判断した場合、京東に是正措置を求めることができる。具体的には、取引条件の見直し、一部資産の売却、事業運営上の約束などが想定される。是正措置が不十分だと判断されれば、EUは取引を禁止できる。手続き上の義務に違反した企業には、罰金を科すこともある。

京東の年次報告書に政府補助の記載

京東は2014年に米ナスダック市場に上場し、銘柄コードはJDとなっている。2020年には香港証券取引所にも上場し、銘柄コードは9618である。

京東がこれまで米証券取引委員会)(SECに提出してきたForm 20-F年次報告書には、政府助成金または政府補助金を受けたことが記載されている。年次報告書によると、関連する補助金には、ハイテク企業支援資金、物流園区やスマート物流建設への補助、クラウドコンピューティングや技術研究開発への補助、地方政府による企業誘致奨励金、雇用や人材育成に関する補助などが含まれる。

一方、京東は、これらの補助はいずれも適用される会計基準に従って処理しており、通常の政府支援措置にあたるとしている。

公開情報によると、北京経済技術開発区、江蘇省宿遷市(京東創業者の劉強東氏の出身地)、西安、武漢、成都などの地方政府は近年、京東の物流園区、スマート物流拠点、サプライチェーン建設を支援する政策を発表してきた。これらには固定資産投資への補助、土地優遇、物流ハブ建設などの措置が含まれる。こうした地方政府による支援政策は中国では珍しくはない。アリババ、テンセント、拼多多、美団などの大企業も同様の支援を受けたことがある。

ただし、企業が政府補助を受けること自体は違法ではない。EUの今回の調査の重点は、関連する補助によって京東がEU市場での競争、または今回の買収取引において不公平な優位を得たかどうかにある。

Ceconomyはヨーロッパ最大級の家電量販グループ

Ceconomyは、MediaMarktとSaturnという2つの有力ブランドを展開している。ドイツ、スペイン、イタリア、オランダ、ベルギー、オーストリアなどヨーロッパ11か国で千店を超える店舗を運営しており、ヨーロッパ最大級の家電量販グループの一つとされる。

アナリストらは、取引が完了すれば、京東は成熟した小売網、ブランド、サプライチェーンを一気に取り込めるとみている。自社でヨーロッパ市場の拠点を一から築くよりも効率的だという見方だ。

近年、中国国内のEC市場では競争が激化している。京東はアリババ、拼多多との競争に加え、douyin電商や快手電商などのプラットフォームからも挑戦を受けている。国内事業の成長は鈍化傾向にあり、同社は海外展開を進めている。ヨーロッパはその海外戦略における重要市場の一つだ。

京東はこれまで、この買収はヨーロッパ市場のイノベーションと競争力を高める助けになるとの立場を示してきた。同社は今後もEU規制当局に協力し、審査手続きを進めるとしている。

李思斉