「協調的引き締め」 ウォーシュFRB議長によるIMF講演の要点

2026/10/17
更新: 2026/10/17

ウォーシュ氏は、米国および世界経済の回復力に対する驚きを表明し、それは「5〜6カ月前には予測できなかった」と述べた。

米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長は、海外での討議において、インフレ抑制に取り組む世界の主要中央銀行による「協調的引き締め」を認めた。

ウォーシュ氏は10月16日、タイのバンコクで開催された1週間にわたるIMF・世界銀行年次総会の一環として、国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事との対談に参加した。

同氏の講演は、FRBが目標である2%を67カ月連続で上回るインフレと、急騰する米国債利回りに苦慮する中で行われた。

FRB議長は、フォワードガイダンス(先行きの指針)を提供しないという方針を継続し、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて詳細への言及を避けた。

以下は、同議長の発言における主な要点である。

 

「協調的引き締め」

FRBは先月、3年以上ぶりとなる利上げを実施した。しかし、利上げに踏み切った主要中央銀行はFRBだけではなかった。

欧州中央銀行(ECB)や日本銀行も、戦争に起因するインフレに対処する中で、0.25%ポイントの利上げを実施した主要機関の中に含まれる。

ウォーシュ氏は「FRBにおいて、我々は物価の安定を実現することを極めて明確にしてきた」と述べた。

「ここ数カ月を振り返ると、各国が独自の判断に基づき正しい行動をとった一方で、我々の合意を通じて、世界中の大半の地域で金融政策の協調的な引き締めが行われた。これはフリーライダー(ただ乗り)が存在しないことを意味する」

エコノミストらは、イングランド銀行(英中央銀行)が来月25ベーシスポイント(bp)の利上げを実施すると予想している。カナダ銀行(カナダ中央銀行)については、当局者がインフレの高止まりと経済状況の悪化とのバランスを取る必要があるため、今月後半に利上げを行うか据え置くかで投資家の見解が分かれている。

米国では、市場関係者の大半が、FRBが主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を現行の目標誘導水準である3.75〜4%に据え置くと見込んでいる。しかし先物市場は、12月の追加利上げを示唆している。

「私は会合の結果を予断しない」とウォーシュ氏は語った。「今年の残りの会合で何を行う可能性があるかについて、今語るべきだとは考えていない」

 

経済の強靭性(レジリエンス)

ウォーシュ氏は、米国および世界経済の強靭性に対する驚きを示し、「5〜6カ月前には予測できなかっただろう」と述べた。

「G20諸国のこれほど多くが持ちこたえ、経済の好調を維持しているとは、当時の自分には予想できなかっただろう」と同氏は付け加えた。「米国単体であればそう見通せたかもしれないが、これほど多くの国について同じように言えたとは思えない」

アトランタ連銀によると、個人消費、設備投資、民間在庫の変動に支えられ、米国の第3四半期成長率は3.6%になると予想されている。

一方、IMFも最新の世界経済見通しでウォーシュ氏の見解に同調した。

経済活動は高インフレと「バッファーの減少」に耐えてきたものの、IMFは「リスクは下振れに偏っている」と警告した。エコノミストらは、紛争、財政の脆弱性、人工知能(AI)への期待の見直し、そして貿易摩擦の再燃を世界経済への脅威として挙げた。

国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は、2026年10月14日、タイのバンコクにあるクイーン・シリキット国立コンベンションセンター(QSNCC)で開催された2026年IMF・世界銀行グループ年次総会において、グローバル政策アジェンダに関する専務理事ブリーフィングで講演を行った(Anthony Wallace/AFP)

報告書は「上振れ要因としては、AI投資の勢いの強化やAIによる生産性の向上、あるいは地政学的リスクや貿易摩擦の持続的な緩和が成長を後押しする可能性がある」と指摘している。

先行きについて、IMFは世界経済の成長率が今年は3.1%に減速するものの、2027年には3.4%に回復すると見込んでいる。

 

AIによる生産性ブーム

ウォーシュ氏は、人工知能が国内外の生産性を押し上げ、各国をより豊かにするとの期待を改めて示した。

しかし同氏は、特に労働市場にとっては「非常に険しい道のり」となる可能性があるため、注意が必要であると述べた。

「私から楽観的な見通しを受け取ってほしいが、それは目的意識の真剣さによって引き締められた楽観主義である」とウォーシュ氏は述べ、人々が10年後にこの時期を振り返り「重要かつ決定的な時期だったと言うだろう」と付け加えた。

全米12地区の連銀による経済動向の定期要約であるFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)では、一部の企業が「AIへの投資によって生産性を向上させた後、人員を削減したり、採用を延期したり、雇用の伸びの鈍化を見込んだりしている」ことが判明した。

この新技術が生産性やより広い経済に与える影響について、強気な予測を立てている向きもある。

例えば、ペン・ウォートン・バジェット・モデルは、AIによってGDPが2035年までに1.5%、2055年までにほぼ3%押し上げられると試算している。

 

新しい分析ツール

 

FRB議長就任の初期、ウォーシュ氏は100年以上の歴史を持つ中央銀行に改革をもたらす可能性のある5つの金融タスクフォースを導入した。

ウォーシュ氏によると、金融政策の決定者らは長年にわたり、「基調的なインフレ動向を見極めようとして、旧式のモデルでデータを無理にこじつけてきた(拷問にかけてきた)」という。

「そう遠くない将来、それはこじつけではなくなる」と同氏は述べた。「中央銀行の手元であらゆる世界の情報に即座にアクセスできるようになり、そのデータを精査するための新たな分析ツールを活用できるようになるだろう」

新たな情報源により、政策当局者は数カ月前に何が起きたかよりも、今何が起きているかについて、より大きな確信を持つことができるとウォーシュ氏は語った。

中央銀行がすでに調整を進めている分野の1つが銀行監督である。

FRBのミシェル・ボウマン金融監督担当副議長は今月初め、州の規制当局との監督業務を調整するため、中央銀行が5つの地域拠点体制へと移行することを明らかにした。

この措置は、12の地区連銀すべてがそうした関係を個別に担っていた従来の体制を置き換えるものである。従来の体制は、執行の遅れ、説明責任の欠如、複雑な内部委員会をもたらしていたと同氏は述べている。

「実務上、これらの委員会はもっともらしい責任回避の口実となり、特定されたリスクに対処するための迅速かつ決定的な行動をとる検査官の意欲を削ぐ要因となっていた」と、ボウマン氏は10月6日のFRB主催イベントでのスピーチで述べた。

「委員会の運用改善は重要な第一歩であるが、より広範な変革が求められている」

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。