最新の調査によると、中国で事業を展開する日系企業の数が過去最少となり、直近2年間で4千社以上が中国市場から撤退した。専門家は、一時的な事業縮小ではなく構造的な転換が進んでいるとみている。中国経済の減速や過当競争、地政学的リスクに加え、経済活動を国家安全保障と結び付ける動きが強まっていることも、日系企業が対中投資を見直す要因となっている。
帝国データバンクが発表した調査によると、今年6月時点で中国に進出している日系企業は前年同期比22%減の1万118社となった。統計を開始した2010年以降で最も少なく、ピークだった2012年と比べて約3割減少した。
2024~2026年には4137社の日本企業が中国市場から撤退し、過去最多を記録した。一方、同じ期間に子会社や工場、駐在員事務所などを新設して中国に進出した企業は1221社にとどまり、コロナ流行期を除けば最低水準となった。撤退企業が新規進出を大幅に上回っている。
米国の経済学者、黄大衛氏は、中国経済の低迷が続くなか、日系企業にとって中国市場の魅力が薄れていると指摘した。
「これまで日系企業は、中国進出について大きく2つの観点から採算を見ていた。一つは生産拠点としてのメリットだ。中国はコストが比較的低く、サプライチェーンも整っていたため、現地で生産して第三国へ輸出できる。もう一つは販売市場としての魅力で、所得が増え、人口規模も大きく、消費も拡大していた。今は、この2つの前提見直す必要がある」
今年第2四半期、中国のGDP成長率は4.3%まで低下し、政府が掲げる年間目標の4.5~5%を下回った。3年余りで最も低い伸びとなった。8月の社会消費品小売総額(売上高)は前年同月比0.4%増にとどまり、固定資産投資は7.2%減少。失業率は5.3%に上昇した。
台湾南華大学国際事務・経営学科の孫国祥教授は、中国進出の日系企業の減少について、一時的な縮小ではなく「構造的な転換」だとの見方を示した。
「撤退の理由は、もはやコスト上昇だけではない。関税リスク、地政学、台湾海峡をめぐるリスク、人員の安全、重要鉱物の輸出規制、中国国内需要の低迷などが加わっている。中国経済の減速が続き、政治リスクや安全保障上の懸念がさらに強まれば、この動きは短期的な景気循環ではなく、サプライチェーンや投資先の長期的な再編につながっていくだろう」
黄氏はさらに、当局が経済活動を国家安全保障と結び付ける動きを強めていることも、日系企業にとって見通しにくいリスクになっていると強調した。
共同通信の集計によると、中国で2014年に反スパイ法が施行されて以降、少なくとも17人の日本人がスパイ活動の疑いなどで拘束された。このうち、アステラス製薬の日本人幹部は昨年7月、懲役3年6月の判決を受けた。
今年5月には、富士電機の日本人社員2人が大連で相次いで拘束、逮捕された。中国共産党(中共)当局は、2人がレアアースに関する輸出管理規定に違反した疑いがあるとしている。
こうしたリスクは、日本企業の海外事業の展開先にも変化をもたらしている。
マネックスグループの専門家、イェスパー・コール氏の試算によると、東証株価指数構成企業の利益に占める中国の割合は、2020年の23%から現在は15%未満に低下した。一方、米国の割合は25%から35%へ上昇している。
孫氏は、日本企業の中国市場に対する姿勢が、かつての「大規模な事業拡大」から「縮小、再編、依存度の引き下げ」へと変化したとみている。
「日本企業が米国へ向かうのは、収益性の高い市場に軸足を移すとともに、関税や政治リスクを避けるためだ。インドでは人口増加による内需や製造業振興策を見込み、東南アジアではベトナム、タイ、インドネシア、マレーシアなどを中国に代わる生産拠点として活用している。いわゆる『チャイナ・プラスワン』さらに進んだ『チャイナ・プラスN』だ」
多くの日系企業が中国から撤退するなか、中共は改めて日本企業を歓迎するとの姿勢を打ち出している。
9月29日、中共国務院副総理の何立峰は、日本国際貿易促進協会の訪中団と会談し、日本企業の中国での事業展開を一貫して歓迎しており、市場機会を共有したいと述べた。
黄氏は次のように述べている。
「日本企業が必要としているのは、実効性のある安定した事業環境だ。投資を歓迎すると言うだけでなく、法律や規則が明確かつ一貫して運用されるのか、市場競争が公平なのかが重要になる。さらに、地政学的な問題や反日感情を抑えられるのか、社員の身の安全や企業資産が守られるのか。こうした点が、企業が再び中国への投資を拡大するかどうかを左右する重要な要素になる」
同氏は日系企業が一度ほかの国に工場を建設し、従業員を育成してサプライチェーンを確立すれば、その後の追加投資も中国以外に向かいやすくなるとみている。個別の企業が中国市場へ戻ることはあっても、かつてのように中国へ大きく依存する事業モデルに戻るのは難しいとの見方を示した。
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