中国の移植を「美談」にした日本のメディア、数カ月前から報道計画か 倫理組織が問題視

2020年07月16日 11時09分

愛知県名古屋に技能実習生として来日中、心臓病を患った中国人女性(24)が6月13日、中国当局の手配したチャーター便で武漢に帰った。

在日本中国大使館などによると、わずか13日後の25日、女性は武漢の病院で心臓移植手術を受けた。中国では、他国と比較して何倍も早く移植手術を受けることができるのは、中国共産党政権が系統的に、良心の囚人を含む収監者から強制収奪した臓器を医療ビジネスに利用しているからだと人権団体、米国務省、欧州議会などが指摘している。

この中国人技能実習生の帰国について、地元の中日新聞や東京新聞、NHK、フジテレビ「とくダネ!」などが取り上げている。しかし、これらの報道のなかで「なぜ中国では短期間で心臓移植を受けられるのか」という事情や背景について伝えていない。これを重く見た倫理組織は、「移植ツーリズムを宣伝しかねない」として、中国臓器移植の闇について緊急集会を開いた。

フジテレビの番組「とくダネ!」に出演した医療ジャーナリスト・伊藤隼也氏は、「武漢は待機期間が非常に短い、数カ月で移植を受けることができる」と説明した。伊藤氏は出演者から「どうしてそこまで短期間で受けられるのか」と質問を受けると「日本との制度の違い、人口が多い、移植に対する考え方も違うのだろう」とコメントした。

知らないはずはない

中国臓器移植問題に取り組む倫理組織「SMGネットワーク」事務局長でジャーナリストの野村旗守氏は7月6日、都内で緊急集会を開催した。「中国政府が実習生のためだけに、コロナ危機で渡航制限の敷かれるなか、チャーター便を飛ばし『日中の命のバトンを繋いだ』として宣伝した。女性は共産党幹部の子息でもない」と指摘。この事案そのものが、中国共産党の臓器移植ビジネスを推していると語った。

「中国移植産業では年間1兆円程度の利益を上げていると言われている。日本のメディアは、ドナーが一体どこから来ているのか、一言も言及しなかった」と報道姿勢を批判した。

集会に出席した、アジア連帯評議会事務局長で評論家の三浦小太郎氏は、中国の臓器移植問題が各国ですでに問題視されていることから「日本の現場の医師たちが中国の(臓器移植の)状況を知らないはずはない」とした。また、一般的に、病院が治療中の患者情報を第三者に公開することはないにもかかわらず、「とくダネ!」取材担当者が長い間中国人実習生を追跡報道していることから、報道自体は数カ月に渡る計画性があると指摘した。

日本は、2008年の「イスタンブール宣言」に署名している。同宣言は、渡航移植を抑制し自国での移植に尽力することを誓うものだ。いっぽう、中国で腎移植手術を受けた患者が、同宣言などを理由に診療を拒んだ浜松医科大学医学部付属病院を訴えた。2019年5月、東京高裁は、一審の静岡地裁の判決と同様に患者(原告)の請求を退けた。

集会に参加した元東京新聞論説委員で、現在は東京医療保健大学・大学院客員教授の日比野守男氏はこの浜松での裁判事例を取り上げて、中国の臓器移植問題を「日本のメディアや藤田病院は、知らないはずはない」と述べ、事態を承知で中国渡航移植を促すような「美談作り」に関わった関係者を批判した。

ハラール臓器

出席したウイグル人のエスズさんは、アラブ諸国の裕福な人達のために、イスラム教徒のドナーが提供される「ハラール臓器」について語った。新疆ウイグル自治区で強制収容所に入所させられたウイグル族の20〜50代の人々は、中国各地に輸送され、当地の管理下に置かれていると述べた。

中国は、臓器移植に関する法律を2007年3月31日に発表している。それによれば、第3条は「いかなる組織や個人も人体器官の売買に関与してはいけない」第10条「生存者からの臓器提供は、贈呈者の親族又は3親等以内の血縁者に限る」とある。このため、エスズさんは中国共産党政権が自国の法律にも違反していると指摘した。


エスズさんは、カシュガル市の空港の道には内陸へ移送するための臓器専用輸送通路があること、中国の南方航空が「実績」として7カ月あまりで500もの臓器を国内で輸送していること、健康な人体は「資金」になり、肝臓は例として約1600万円相当に変えることが可能だと述べた。

こうした背景を受けて、トフティ氏は、日本のメディアが「中国の移植手術は1~2カ月でできる」と報道をしたことについて、「道徳のない医師を元気付けるような内容だ」と批判した。

野村氏は、今回の名古屋の実習生をチャーター便に搭乗させた航空会社も、南方航空だと付け加えた。

SMG地方議員ネットワーク代表世話人の丸山治章・逗子市議会議員は、「日本の移植待機患者は1万人という現状だ。番組を見ると、中国への渡航ツーリズムを招く報道と言わざるをえない」と述べた。また、中国臓器移植問題を伝えなかった日本のメディアに対して、意見のメールを入れたりして、継続的な動きが必要だと述べた。

移植環境に問題のある国への渡航者が絶えないのは、日本の法律が整備されていないことも挙げられる。日本の法律上、臓器売買の関わる移植に関与することは違法とみなされるが、海外での違法性を追求する法律はない。

丸山議員は、「厚生労働省は現行の法律で十分に対応できるという態度で、法改正の動きがない」と指摘。「国会議員連盟もないので、地方議員の仲間と活発な活動を続けたい」と述べた。


アジア自由民主連帯協議会の古川フミエイツ広報部長は、今回、中国側が協力した名古屋の実習生の渡航移植は、在日本中国大使館や官製紙・人民中国などが、日本と中国が協力した「美談」として移植の事例を紹介している背景を踏まえ、数カ月にわたって用意した中国臓器移植のための宣伝計画だと指摘。

さらに、日本臓器移植ネットワーク登録病院である藤田病院が、日本の主治医の紹介状を受けて、日本からの移植希望患者が中国に渡った場合、日本の海外医療保険が適応される恐れがあると述べた。

(編集・佐渡道世)

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