黄海の澄んだ朝、韓国の船長たちは数年前には存在しなかった物体を避けながら航行している。海面から突き出しているのは、石油リグのような巨大なプラットフォームで、周囲には集合住宅ほどの大きさの黄色い鋼製ケージが並ぶ。
この構造物は中国沿岸ではなく、韓国と中国が共同漁場として扱うことに合意した韓中暫定措置水域(PMZ)内に設置されている。戦略国際問題研究所(CSIS)のプロジェクト名「ビヨンド・パラレル」は、衛星画像とAISデータを用いて、転用されたプラットフォーム1基と深海ケージ「深藍」2基の計3つの中国製鋼構造物が突如出現した経緯を追跡した。
中国共産党(中共)政府はこの施設を深海養殖場と呼び、国営メディアは八角形の「深藍」を、中国が沖合養殖を工業化できる証拠として紹介している。
一方、韓国の乗組員や当局者は、ヘリポート標識、3本の連結ブリッジ、複数の甲板を備えた鋼鉄の要塞が航路上に築かれたと見ている。「朝鮮日報」英語版の詳細な報告は、主プラットフォームの規模を約100メートル×80メートルとし、数十人規模の海軍および情報要員を収容可能である可能性を指摘している。
2025年初頭、韓国の調査船オンヌリ号が構造物の点検のため接近した際、中国海警局の船舶が進路を妨害し、緊張した対峙の末に調査船は離脱を余儀なくされた。「ビヨンド・パラレル」は自動船舶識別装置(AIS)の航跡を用いてこの事案を再構成し、漁業の問題と見られていた事案をソウルにとっての国家安全保障上の懸念へと変えた。
暫定水域を鋼鉄で固定化する中国
背景には恒久化を想定していなかった法的妥協がある。2001年の漁業協定に基づき、韓国と中国は黄海中央部に暫定措置水域を設定し、排他的経済水域(EEZ)の主張が重なる部分について最終的な海洋境界を交渉する間、現状を維持することとした。同協定は双方に漁業を認めたが、新たな恒久的構造物や強硬な執行措置で現状を変更することを禁じていた。
この合意は過去10年で徐々に形骸化してきた。中国当局はまずブイを設置し、2018年に深海ケージ「深藍-1」を、2024年に「深藍-2」を設置した。さらに2022年には転用された大型プラットフォームが出現し、現在はこの複合施設の運用拠点として機能している。
Financial Timesや韓国メディアの報道は、韓国の度重なる抗議にもかかわらず、これらの構造物が韓中暫定措置水域内に設置された経緯を伝えている。
アジア海洋透明性イニシアチブ(Asia Maritime Transparency Initiative)の分析は、主構造物を退役した石油プラットフォームと特定し、6層の稼働フロアと「養殖を超える機能拡張の可能性」を指摘している。
衛星画像やAISなどの公開データを用いて海上事案を分析する調査プロジェクトSeaLightの報告は、この事案について、商用衛星画像など誰でも入手可能な公開情報の分析によって、中国側が実態を否認できない状況に至った、珍しい公開情報分析(OSINT)の事例であると位置付けている。
CSISの最近の論評で匿名の韓国当局者は、これらのプラットフォームを中共政府の「漸進的主権拡張」戦略の一部と表現し、表向きは民間の措置を積み重ねることで海上の既成事実を作り、将来の境界交渉で有利な立場を築く手法だと説明した。
ソウルが強く反発する理由
韓国外務省は、中国のプラットフォームが韓中暫定措置水域における韓国漁船および海軍艦艇の航行を物理的に妨げていると警告している。かつて直線的に航行できた水域で、韓国の航海者は中国海警に守られた固定障害物を迂回する航路を計画せざるを得なくなった。

与野党の韓国国会議員は超党派の公聴会を開き、これらの構造物が海上安全と2001年協定の精神に対する脅威であるとする決議を採択した。議員らは、共同管理水域に準恒久的なプラットフォームが設置される前例ができれば、将来的にさらに大規模かつ装備の整った構造物が設置されることを防ぐ手段があるのかと疑問を呈している。
この問題は、中国との関係安定化を図るソウルの外交課題の最中に浮上した。韓国はミサイル防衛や経済的圧力を巡る緊張を経て、再び中共政府との関係改善を試みる一方、北朝鮮への抑止と台湾周辺の危機対応のため、ワシントンおよび東京との安全保障協力を強化している。South China Morning Postは、この漁業問題が中韓関係改善の試みを損なう恐れがあると報じている。
The Timesの報道は、韓国の政治家がこの事案を南シナ海の中国による軍事化された人工島になぞらえ「ヤクザ的手法」という表現を使い始めていると伝えた。
北京の主張とグレーゾーン戦術
中共政府は、この施設が万沢豊集団や国有の山東海洋集団との合弁企業によって運営される商業養殖施設であり、国際法に適合していると主張している。中共政府は韓国当局者に視察を提案したこともあるが、韓中暫定措置水域外への移設要求は拒否している。

韓国当局者や西側の分析者は、この事案をグレーゾーン型の強制と位置付けている。これは海警、漁船団、調査船、民間インフラといった非軍事的手段を用いて、軍事衝突の閾値を超えない範囲で海上の現実を変える手法を指す。
南シナ海では、中国は浚渫船や建設部隊を用いて岩礁を滑走路やレーダー、ミサイル施設を備えた拠点に変えてきた。The Guardianや地域シンクタンクの調査は、こうした活動がフィリピンやベトナムに対する圧力手段として機能していると報告している。
黄海においても、構造物は形式上は商業施設であるが、未確定の境界水域で韓国の食料安全保障と海軍運用にとって重要な位置に設置され、中国海警による監視と阻止活動が組み合わされている。
黄海問題が韓国を超えて重要な理由
米国議会の中国共産党特別委員会および国土安全保障委員会海事小委員会の多数派スタッフ報告書は、「中国の世界的漁業攻勢」と題し、中国が世界最大の遠洋漁業船団を保有し、これを中共の「武器」として利用していると結論付けた。この報告は黄海に限らず、西アフリカから中南米に至るまでの事例を挙げているが、黄海の構造物はその戦略を象徴する存在であると位置付けている。
黄海の争いは、中国の海洋進出を注視する各国にとって前兆であり、周辺事象ではない。中共政権は影響圏にある多くの国にとって安定に対する脅威であり続けている。
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