7月28日に熊本県を襲った令和8年熊本地震について、地震調査委員会は震源断層の長さを約30キロと推定した。断層破壊は2016年の熊本地震で動かずに残った日奈久断層帯の一部とみられ、震源域は南へ広がる恐れもある。地震調査委員会は少なくとも1週間、最大震度7級の揺れへの警戒を呼びかけている。
政府の地震調査委員会は7月29日、今度の地震を引き起こした震源断層の長さを約30キロと推定したと発表した。破壊が起きたのは日奈久(ひなぐ)断層帯の一部で、2016年の熊本地震では動かずに残っていた区間が今回動いた可能性が高い。震源域はなお南へ広がる兆しを見せており、少なくとも1週間、最大震度7級の揺れへの警戒を呼びかけている。
約30キロと推定された震源断層
7月28日午後4時27分、熊本県熊本地方の深さ約16キロを震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。宇城(うき)市と氷川(ひかわ)町で最大震度7を観測し、九州から中部地方にかけて広い範囲が揺れた。
地震調査委員会は、地殻変動の観測と地震波の解析から、震源断層の長さを約30キロと推定している。これは、地下で実際に岩盤がずれ動いた範囲を示す。破壊は震源付近から浅い側へ向かって進み、地表近くまで達したとみられる。
余震が分布する範囲は、北東から南西にかけて約50キロに及んでいる。ただ、これは本震で割れた断層そのものの長さではない。震源断層の長さと地震活動の広がりは別のものであり、区別してみる必要がある。
この地震は、北北西から南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地殻内で発生した。国土地理院の観測によると、八代市の千丁(せんちょう)観測点は北東方向へ約87センチ移動している。深さ約16キロで始まった破壊が、地表にも大きな変位をもたらした形である。

2016年に動かなかった日奈久断層帯の区間
今回の震源断層は、日奈久断層帯の「日奈久区間」の北東部と、「高野―白旗(たかの―しらはた)区間」の一部に及ぶと考えられている。この断層帯は、2016年の熊本地震とも関わりが深い。
2016年(平成28年)の熊本地震では、布田川(ふたがわ)断層帯と日奈久断層帯の一部が動いた。一方で、日奈久断層帯の南側は、そのとき動かずに残っていた。
東京大学地震研究所の酒井慎一教授は、今回の地震について「2016年の地震では、ずれ動かずに残っていた日奈久断層帯の南部分が動いたと考えられる」と指摘した。10年前にたまったひずみが、今回の地震で解放された可能性がある。
地震調査委員会は、令和8年1月1日を基準とする長期評価で、日奈久区間について今後30年以内にマグニチュード7.5程度の地震が起きる確率を、最高ランクの「S*ランク(高い)」と評価していた。危険性は事前に指摘されていた区間だった。

南へ広がる地震活動と今後の警戒点
地震活動は、発生から2日を経てもなお続いている。7月29日午後10時すぎにはマグニチュード5.8、最大震度5弱の地震があり、30日午前5時すぎにもマグニチュード4.6、最大震度4の地震が発生した。
気がかりなのは、震源域が南へ広がる動きを見せていることである。ウェザーニュースなどによると、当初の震源域よりやや南の、日奈久断層帯の「八代海(やつしろかい)区間」に近い領域でも地震が起き始めている。酒井教授は、日奈久断層帯の南側は海に面しているため、今後の地震の規模によっては津波の危険性もあるとして、海域での地震に注意を呼びかけている。
地震調査委員会は、揺れの強かった地域では発生から1週間程度、最大震度7程度の地震に注意が必要だとしている。特に発生から2~3日は、強い揺れをもたらす地震が多いと警告している。
想定していた断層が動いた
今回の地震は、未知の断層によるものではなかった。事前に高い危険性を示し、2016年に動かずに残った区間として研究者が注目していた場所で起きた。それでも、被害を防ぐことはできなかった。
約30キロという震源断層の推定値は、単なる数字ではない。10年前に解放されなかったひずみが、想定した断層区間で、想定した規模で解き放たれたことになる。今後、八代海区間へ活動が広がるのか、それとも収束に向かうのか。九州の地下には、なお緊張が続いている。
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