イランは戦争に勝っているとは到底言えない

2026/09/09
更新: 2026/09/09

論評

テレビやラジオ、ブログでは、米国は戦争に敗れた、あるいは敗れつつあると主張する評論家や、自称専門家の声があふれている。戦争がトランプ政権の予想ほど順調に進んでいないことは、ほぼ疑いない。また、11月の中間選挙までに米国が明確かつ完全な勝利を収められないことが、イラン政権にとって大きな勝利になると考えるなら、それは正しい。もっとも、そのような完全勝利を短期間で収める可能性は極めて低い。しかし、それは本当に、戦略面やその他の面でイランが戦争に勝っていることを意味するのだろうか。

歴史が示すように、敵に対してミサイルや無人機を発射する限定的な能力を維持しているだけでは、戦争に勝っているとは言えない。水路を限定的に支配する能力についても同様である。軍事力の低下、戦略的孤立、経済崩壊、地域秩序の再編という、いかなる合理的な基準で見ても、この戦争に勝っているのは米国である。この戦争は、ヒズボラを含むイランの代理勢力が1983年、米海兵隊施設をトラック爆弾で攻撃し、米軍人241人を殺害した後に行われるべきだった可能性が高い。

事実を見てみよう。米軍は、イランの通常海軍の圧倒的多数を撃沈するか、航行不能にした。米中央軍の元副司令官であるロバート・ハーワード退役海軍中将は、イランが海軍能力の80~90%を失ったと評価している。イラン最大級の艦艇の大部分が航行不能となるか破壊されたことで、イラン政府が実質的な海軍力を展開する能力は、能力の限られた少数のイスラム革命防衛隊(IRGC)の小型高速攻撃艇へと縮小し、その数も減り続けている。

米国はイラン全土の航空支配を獲得してはいないが、広い範囲で航空優勢を確保している。トランプ政権は、1500回の攻撃によってイランの防空システムの約80%を破壊したと主張している。もちろん、あらゆる戦争がそうであるように、実際の数字が判明するのは戦争終結からかなり後になる。しかし、イランの防空能力が深刻に低下したことは、ほぼ疑いない。さらに、イラン政権が直面している深刻な経済状況を考えれば、これらのシステムを更新することは非常に困難である。仮に最終的に更新できたとしても、何年もかかるだろう。それも政権がそれまで存続していることが前提となる。

産業とインフラの面では、軍事作戦はさらに決定的な成果を上げている。米軍と連合軍は、イラン国内の1万3千か所を超える標的を攻撃した。この中には、イランの兵器工場の90%が含まれている。標的を攻撃することと破壊することは同じではないが、ダン・ケイン統合参謀本部議長は、イランの防衛産業基盤が「粉砕された」と表現している。

米中央軍によると、イランのミサイル、無人機、艦艇の生産施設と造船所の3分の2以上が損傷または破壊された。これには、ほぼすべてのシャヘド型無人機工場と、固体ロケットモーターの製造施設が含まれる。固体ロケットモーターは、イランの安価ながら効果的な弾道ミサイルの製造に不可欠である。

衛星画像の分析では、革命防衛隊司令部、空軍基地、海軍拠点、弾道ミサイル施設を含む、イランの50カ所を超える軍事基地に広範な被害が確認されている。イランがこれほどの被害を受けたことはかつてない。近年で最も包括的な経済制裁によってイラン経済が締め上げられている中、この産業能力を再建するには何年もかかるだろう。それも、極めて不人気な政権がそれまで存続していることを前提とした話である。

戦場以外でも、イランの威信と中東で影響力を行使する能力は著しく低下した。かつてイラン政府に公然と逆らうことを恐れていた国々が、今ではイラン国内の軍事目標に空爆やミサイル攻撃を行うところまで踏み込んでいる。

アラブ首長国連邦(UAE)はイランとの関係を断ち、トルコとパキスタンを含む自衛協定に加わった。サウジアラビアもイランの標的に対する攻撃に参加した。イランから何十年にもわたって威圧されてきた近隣諸国が、米国の支援を受け、「中東のいじめ役」に立ち向かっているように見える。これは、イラン政権が完全には立ち直れないほどの大きな打撃である。

イラン経済は混乱状態にある。食品・飲料の前年同月比インフレ率は113.8~128%へと急上昇し、生活に不可欠な食料品の価格は過去1年間で2倍以上になった。総合インフレ率は60~80%を超え、多くの食品分野でインフレ率が3桁に達している。

イランの通貨リアルは暴落した。数万か所の工場や石油化学施設が閉鎖されるか損傷し、影響を受けた産業施設は2万か所に上るとの推計もある。石油収入も以前の数分の一に落ち込んだ。新たな制裁が発動され、自力では解除できない封鎖も続く中、イラン政権は、シャーを打倒して以来経験したことのない深刻な苦境に陥っている。

比較のために示すと、米国の食料品価格の上昇率は過去1年間でわずか2.7%である。ガソリン価格の上昇に押し上げられた米国の総合インフレ率も3.5%にとどまる。

イランの苦境をさらに深めているのは、油井から長期間にわたって原油をくみ上げなければ、その後の生産能力が大きく低下することが多いという問題である。政権は軍部隊や治安部隊に対し、期日通りに給与を支払うことにも苦慮している。海外の銀行口座や金融経路も遮断または凍結された。国際通貨基金(IMF)は、2026年の国内総生産(GDP)が6%超縮小すると予測している。封鎖が続けば、2027年ははるかに悪化するだろう。

イラン政権、歴史的な苦境に

政府が自国の部隊に給与を支払えなくなれば、政権を維持することははるかに難しくなる。部隊の圧倒的多数は徴集兵である。

経済的困窮に加え、イスラム政権が自国領土を守れず、繁栄ももたらせないことが目に見える形で示された結果、現在の紛争が激化する前から政権を支持していた少数のイラン国民の間でも、支持が低下している。

政権による抑圧と統制の程度を考えれば、正確な世論調査結果を得ることは難しい。しかし、GAMAAN研究所の報告によると、国民のかなりの割合が、攻撃は正当化される、あるいは失敗した体制に対する少なくとも必要な清算であると考えている。ドナルド・トランプ大統領は、イラン国内で政権そのものよりはるかに高い人気を得ている。トランプ氏への支持は約44%であるのに対し、イスラム共和国への支持は約13%である。

世界経済に影響を及ぼすイランの能力は日々低下

ホルムズ海峡を迂回できる能力を世界にもたらすパイプラインやタンカーの建造が進むにつれ、同海峡の重要性は日々低下している。早ければ6か月後には、ホルムズ海峡を通航する必要性は紛争開始時の数分の一にまで低下し、イランは恒久的に弱体化することになる。

喜望峰を回る新たな航路などを利用した場合でも、1航海当たりの追加費用は、運ぶ原油の価値の約0.5~1%にすぎない。言い換えれば、これまで見られた原油価格の変動幅のごく一部である。

超大型原油タンカー(VLCC)は過去最多の規模で発注されており、2027年には約60隻が引き渡され、2028年と2029年にはさらに多くが引き渡される見込みである。この追加輸送能力により、ホルムズ海峡を迂回する代替航路を利用しやすくなる。同海峡が依然として脆弱性であることは確かだが、今回の紛争の結果、その重要性が低下することにほぼ疑いはない。

公平を期すなら、トランプ政権は時として過度に楽観的だった。戦争が計画通りに進んでいないことは、ほぼ確実である。また、政権が航空戦力だけで達成できることに妥当な水準以上の自信を持ち、米国の防空能力の有効性を過大評価する一方、イランの無人機とミサイルの有効性を過小評価していたことも明らかである。

この紛争は、米国の防衛産業基盤に重大な欠陥があることも明らかにした。海軍が真に有効な沿海域戦闘艦を十分な数で開発・配備できなかったことも浮き彫りになった。さらに、ミサイル1発ごとに数百万ドルを費やす慣行は、米国の国家安全保障を危険にさらす失敗であり、中国共産党のような相手と戦う可能性を少しでも確保するためには、直ちに是正する必要があることも示した。

これらは、緊急の対応を必要とする現実の問題である。しかし、いずれも現政権が生み出した問題ではなく、現政権が引き継いだ問題である。

それでも、こうした問題や欠陥によって、戦略上の基本的な構図が変わるわけではない。イラン海軍はほぼ消滅し、空軍は地上にくぎ付けとなり、工場と基地は壊滅的な被害を受け、経済は崩壊しつつある。地域における影響力も縮小し、大国の同盟国も公然と大規模な支援を提供しようとしていない。

大局的に見れば、散発的に無人機やミサイルを発射して船舶を妨害できることは「ピュロスの勝利」にすぎず、世界にホルムズ海峡への依存を減らす動機を与えている。

戦争によって厳しい中間選挙がさらに厳しくなっていることは確かである。メディアはこの戦争を利用し、一般の米国人の生活を改善し、より安全にしてきたトランプ政権の数百に及ぶ実績から注意をそらしている。しかし、米国がこの戦争に負けていると主張することは、全くばかげている。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。