ネットゼロからの脱却

2026/08/30
更新: 2026/08/30

論評

わずか数年で、状況は大きく変わった。

少し前まで、政治家たちは「気候変動によって私たちは命を奪われる」と訴え、そのため温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」へ移行しなければならないと主張していた。

理論上、それは可能である。植物は炭素を吸収するため、化石燃料の使用を減らせばネットゼロを達成できる可能性がある。

世界各国の政府は、まさにそれを実行すると約束した。

ジョー・バイデン米大統領や欧州の指導者たちは「2050年までのネットゼロ」を掲げた。一時は、本当に実現するかのように見えた。スペインは太陽光発電網に数十億ドルを投じ、ドイツとスペインは電力の大半を再生可能エネルギーで賄っていると主張した。

しかし今、彼らはそれが間違いだったと気づき始めている。

欧州では電気料金の上昇に伴って企業が閉鎖し、昨年にはスペインで電力供給が16時間にわたって停止した。

これは「グリーン」の夢に警鐘を鳴らす出来事となった。

『化石燃料の道徳的擁護(The Moral Case for Fossil Fuels)』の著者アレックス・エプスタイン氏は、私の新しい動画の中でこう語っている。

「停電は、誤った電力政策を最も鮮明に示す例だ。こうした誤った政策を取っていても、停電そのものは避けられるかもしれない。しかし避けられないのは、供給不足と配給制、そして貧困だ」

さらに、ネットゼロを推し進めたことで、人々は極端な気候に対して、より脆弱な状態に置かれることにもなった。

ロイターによると、6月の熱波では1万人の超過死亡が発生した。

「欧州のこうした地域では、夏になっても涼しく過ごすことができない」とエプスタイン氏は驚きを示す。「エアコンという技術が登場して、もう100年もたっているというのに!」

米国では大多数の人がエアコンを利用しているが、欧州ではエアコンを備えた住宅は約20%にすぎない。

英国では、気候関連法規を理由に、一部の住宅所有者がエアコンを撤去するよう命じられたことさえある。

「これは、気候破局論を唱える運動が、いかに純粋に宗教的な性格を持っているかを示している」とエプスタイン氏は語る。「彼らには一つの戒律がある。『自然に影響を与えてはならない』というものだ。良いことはすべて『喜ぶ気候の神』によるもので、悪いことはすべて『怒れる気候の神』によるものだと考えている」

私は「なぜ風力と太陽光だけでは十分ではないのか。太陽光パネルはどんどん安くなり、蓄電池も長持ちするようになっている」と尋ねた。

「電力網は、最も条件の悪い日を想定して構築しなければならないからだ」と彼は答えた。

風が吹かないときや太陽が照らないときには、再生可能エネルギーを補うため、信頼性が高く安定した電源が必要になる。

現在、ドイツ、スウェーデン、英国などは、ネットゼロ推進策を見直し始めている。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は現在、規制について「気候目標、市場の現実、企業、雇用との整合性をより高めなければならない」と述べている。

さらに、「原子力発電から撤退したことは、端的に言って戦略的な誤りだった」とも語った。

まったくその通りだ。

そしてここ米国でも、気候変動への恐怖をあおる言説を耳にすることが少なくなった。

ワシントン・ポスト紙は、議員による公の場での発言やSNSへの投稿を分析した結果、「気候変動について語らなくなりつつある」と報じている。

エプスタイン氏は、「ネットゼロについて、気候破局論者たちがどれほど真剣ではなかったのか、多くの人が驚いている」と語る。「それが最もよく分かるのが、AIの台頭によって起きたことだ」

現在、テクノロジー企業は排出量の「増加」を報告している。エプスタイン氏は笑いながら、「5年前には、どの企業も『気候変動は存亡にかかわる危機だ。ネットゼロにしなければならない!』と言っていた」にもかかわらず、と指摘する。

マイクロソフトのCEOはかつて、「2030年までに、マイクロソフトはカーボンネガティブになる」と約束していた。しかしその後、同社の排出量は増加したが、それについて謝罪することはなかった。

グーグルもかつて、2030年までに「世界で初めて、カーボンフリー・エネルギーのみで事業を運営する大企業になる」と表明していた。

しかしその後、同社はこの公約をウェブサイトから削除した。

かつて「気候災害」についての本を書いたビル・ゲイツ氏も、現在では「成功は、世界の気温にどれほど影響を与えたかよりも、人々の幸福にどれほど貢献したかによって評価すべきだ」と記している。

エプスタイン氏は、「ゲイツ氏が新たな立場を公に示したという事実は、私にとって、私たちが以前よりはるかに健全な知的環境にいることを示すものだ」と語る。

さらに、「こうしたテクノロジー企業の経営者の一人くらいは、『実は私はある意味で嘘をついていた。そして、自分自身を含め、すべての人に悪影響を与える政策を支持してしまった。これからは考えを改める』と言ってくれればいいのだが」とエプスタイン氏は述べた。「しかし、誰一人としてそうしていない。まるで過去の自分など存在しなかったかのように振る舞っているだけだ」。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。