アメリカ中間選挙はイランの思惑通りにはならない

2026/09/18
更新: 2026/09/18

本稿は、ポッドキャスト「Victor Davis Hanson: In His Own Words」の9月上旬の配信回を一部編集した書き起こしである。

アメリカ国民の間では、イラン戦争は過ちだったと捉えるのが一般的な見方であり、大半の人々がそう感じていると私は見ている。イラン寄りの立場をとる人々の一部からも批判の声が上がっていた。私自身は、緒戦の38日間にとどまらず軍事作戦をより長く継続し、スコット・ベッセントが提唱した「アナコンダ計画(包囲絞殺戦略)」のような締め付け策をもっと早い段階で導入すべきだったと考えていたが、こうした戦略をめぐる議論はどの戦争でも必ず生じるものだ。

しかし、それが政治的または軍事的な過ち、あるいはその両方であったという一般的な共通認識は、果たして正確なのだろうか。

現在、多くの事象が同時に進行している。まず、イラン政府が突如として「米軍に民間施設を攻撃された」などと言い出したのはなぜか。彼らは具体的にどの標的かを明確にしていないが、そもそも民間人を標的とすることを明白な目的として、イスラエルに何百、何千ものドローンやミサイルを送り込んできた張本人こそがイラン政府である。それが彼らのやり口だ。彼らは常に民間施設を攻撃してきた。

それゆえ、仮にアメリカがようやくデュアルユース(軍民両用)の標的を攻撃し始めているというのが事実だとしても、世界がこの抗議に同情すると彼らがなぜ考えられるのか。デュアルユースとは、民間用途にも軍事用途にも転用可能なものを指す。橋梁、送電網、空港、テレビ局などがそれに該当する。

この事実こそ、他ならぬイラン側が「民間標的を攻撃するのは不公平だ」などと言い出すほど、彼らが追いつめられている証拠である。

第二に、彼らは「正々堂々と戦場で対峙しないのは不公平だ。本当に強いのなら戦場で迎え撃つべきだ」と主張した。

これを翻訳すれば、こういう意味になる。「米軍がイラクに駐留し、バース党員やその後の過激派イスラム主義者に成形炸薬弾を渡してアメリカ人を殺害できた時代は実に都合が良かった。ファルージャ(イラク中部の都市)の市街地で我々の土俵で戦ってくれた時は好都合だったが、今のアメリカは我々の流儀では戦っていない。圧倒的な技術と火力による空爆戦で我々を殺戮している。こんなものは不公平だ」と。

これもまた、彼らが激しく憤慨していることを示す第二の兆候である。

では、第三の兆候は何か。トランプ大統領の発言だ。彼は常套句のように度々口にしているが、「イランがこれほど必死に対話を求めてきたことは過去に一度もない」と述べている。それほどまでに熱烈であり、トランプの目にはイラン側が対話を渇望し、もはや後がない状態に映っているのだ。

一体何が起きているのか。

他にも兆候はある。イスラエルや米政府内からは、米情報機関がついにトルコの強い制止を突っぱねた、という情報が漏れ始めている。 トルコは自国内に多数のクルド人を抱え、彼らの独立・分離運動を「国家の存亡に関わる脅威」として極度に恐れている。そのため、アメリカに対して「頼むから(イラン国内の反体制派である)クルド人を武装させないでくれ。絶対に容認できない」と執拗に警告し続けてきたのだ。中東のどこであれ、クルド勢力が武器を持って強大化すれば、自国のクルド人をも刺激しかねないからである。

だが現在のトルコにとっては、自国のクルド勢力への警戒心以上に、地域の宿敵であるイラン体制を揺さぶりたいという思惑のほうが勝っているのかもしれない。真相は定かではないが、「米情報機関がイラン系クルド勢力の武装支援に踏み切った」という噂は現実味を帯びており、9月上旬にイラン国内のクルド人たちが全国規模の反体制ストライキや抗議デモを起こしたという報告とも見事に符合している。

クルド人であるか否かを問わず、何百万人もの人々がストライキを起こし街頭に繰り出す事態が、現在のイランのような危機的状況下でどのような結末をもたらすかは、誰にも予測がつかない。

もう一つの兆候は、イランが別の戦線を必死に開こうとしている点だ。ハマスを利用する工作は失敗に終わった。ハマスは実質的に機能不全に陥っている。イスラエル軍は日々、ハマスの指導部を排除し続けている。

ヒズボラも青息吐息である。イスラエルはヒズボラの幹部陣を壊滅させ、レバノン政府は西側の支援を受ければ自力でヒズボラを排除できるとの自信を深めつつある。

唯一の不確定要素はイエメンのフーシ派である。彼らは現在、紅海封鎖を脅迫しており、イランから支援を受けているとみられている。だがこれも容易に阻止できる。仮に空路が維持されていたとしても、イランからイエメンへの全航空便を停止させれば済む話だ。彼らの補給能力には限界がある。

私が言いたいのは、中間選挙を7週間後に控えた今、イラン情勢が一気に緊迫度を増しているということだ。そしてそれは、イランがあらゆる物資や輸入品を購入できず、石油を一切売却できなくなっている現実の直接的な結果である。彼らは日量5億ドル規模の経済的損失を被っている。物資の再補給も容易ではなく、せいぜい中国やロシアから鉄道等で搬入する程度だが、そうした橋梁もすでに破壊されている。

彼らは中国の衛星データ支援に依存しているが、アメリカはこれにも間もなく対処する構えだ。

したがってイラン側は、中間選挙が迫りトランプがガソリン価格を下げたがっている以上、面目を保ち、現体制の大部分を維持したまま逃げ切れるような破格の「手打ち」交渉を提示してくるだろうと踏んでいたわけだ。

だが、そのような展開には決してならない。その可能性は皆無である。

では中間選挙は、あらゆる側面から見てイラン戦争の趨勢について何を物語っているのか。

イラン側の情勢判断は根本から狂っている。彼らはこう信じ込んでいる。中間選挙が近づくにつれ、ガソリン価格の高騰で戦争への国民的支持が失われ、勢いづいた民主党議員が「この戦争は敗北だ」と宣言し、極左の社会主義系イスラム同調派、公的な知識人、議会関係者、官僚組織の人間らが「イランは傲慢なアメリカの理不尽な犠牲者である」と主張することで、中間選挙の風向きがイランに有利に働くと踏んでいるのだ。

彼らの読みでは、二つのシナリオのうちいずれかが起きる。中間選挙での敗北を恐れてパニックに陥ったトランプが突然イランに譲歩し、イラン側の海峡を完全に再開させて原油価格を押し下げようとする——だが、そのような事態は起こり得ない。

あるいはイランは、トランプが中間選挙で敗北すると考えている。過去の歴史的傾向に当てはめれば、与党は平均22議席を失う可能性があり、その結果、下院では民主党が13〜14議席の過半数を握り、上院でも膠着状態か1〜2議席の劣勢に立たされることになる。

私はその展開になるとは思わないが、可能性としてゼロではない。

しかし、仮にそうなったとして何が変わるのか。アメリカが軍事的に多大な戦果を挙げつつあるまさにその局面で、民主党がイラン戦争向けの全軍事予算を打ち切るだけの政治的体力を有していると思うだろうか。断じてあり得ない。

イランの認識は完全な見誤りである。

中間選挙が何らかの影響を及ぼすとしても、それはまったく正反対の結果をもたらす可能性が高い。トランプが事態の沈静化や交渉再開を望んだり、議会敗北を恐れたりするどころか、むしろCIAによるクルド人武装支援を初めて本格承認する契機となるかもしれないのだ。

また、今こそが最大の好機だと捉え、中間選挙前に街頭へ繰り出そうとイランの民衆と連携を図る勢力も存在するかもしれない。

宗教専制体制が深刻な危機感を抱き、トランプが反体制派を強く支持し、民主党の勝利が各所で取り沙汰されている今だからこそ、イラン民衆はこう考えるかもしれない。「民主党が勝てば、ワシントンに我々の味方はいなくなる。だが今なら、議会とホワイトハウスに頼れる味方がいる。ならば今こそ蜂起し、反体制の火の手を決定打に持ち込むべきだ」と。

総じて状況を俯瞰すれば、中間選挙は実際のところトランプ大統領、そしてイランの反体制勢力にとって有利に働いている。

トランプには、この事態を決着へ導くための明確なデッドラインが存在する。残された時間は7週間であり、彼はイラン国内の蜂起を煽り、クルド人主導の部族間反乱を後押しし、制裁、包囲、海上封鎖、禁輸措置をさらに激化させていくだろう。

中間選挙が刻一刻と迫るにつれ、イランは破滅的な苦境へと追い込まれていくことになる。

言い換えれば、トランプが攻撃の手を緩めるどころか、選挙後に民主党から資金を断たれることを警戒するどころか、目前に迫った中間選挙という期限そのものが、イラン現体制を排除するための圧力を加速させる起爆剤になっているのだ。

そして今、それが現実のものとなる確率は極めて高いと私はみている。

最後に一つ指摘しておきたい。これまで論じてきた中間選挙、共和党支持州における選挙区再編、特定の人種票を意図的に偏らせる不当な選挙区割り(ゲリマンダー)をめぐる連邦最高裁の判断、民主社会主義系候補の過激化、そして中間選挙では与党が議席を失うという歴史的通則に至るまで、それらすべての議論は、イラン国民による大規模な蜂起が現実化すれば一瞬で吹き飛ぶ。

誰も予想していない事態だが、それは歴史的な大事件となるだろう。中東の力学構造を根本から塗り替え、かつての「ベルリンの壁崩壊」に匹敵する衝撃を与え、ドナルド・トランプに過去50年間で最大の外交的勝利をもたらすことになるはずだ。

(ヘリテージ財団刊行『デイリー・シグナル』より許諾を得て転載)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
ビクター・デイヴィス・ハンソン(Victor Davis Hanson)は、古典学者および軍事史家です。カリフォルニア州立大学の古典学名誉教授であり、スタンフォード大学の古典学・軍事史シニアフェロー、ヒルズデール・カレッジのフェロー、そしてセンター・フォー・アメリカン・グレートネス(Center for American Greatness)のディスティングイッシュト・フェロー(特別客員研究員)を務めています。 ハンソン氏はこれまでに、『The Western Way of War(西洋の戦争のやり方)』、『Fields Without Dreams(夢なき耕地)』、『The Case for Trump(トランプを支持する理由)』、『The Dying Citizen(死にゆく市民)』を含む17冊の著書を執筆しています。