中国、宇宙開発計画の裏に潜む社会問題

2005/10/20
更新: 2005/10/20

【大紀元日本10月20日】中国は「神舟6号」有人宇宙船の打ち上げに成功した。これは中国の宇宙開発技術が新たな段階に達し、中国が超大国として発展して行こうとする決意を示している。しかし、専門家の間には、中国が莫大な資金を惜しまず宇宙開発技術につぎ込むことは中国の一般市民の利益になるとは限らないとの指摘がある。

*神舟6号は正常に飛行を続ける*

神舟6号の打ち上げは中国の2回目の有人宇宙船飛行となる。中国国営新華社通信の先週金曜日の報道によると、神舟6号は、当初予定した軌道を逸脱し、かなり地上に接近したため、飛行士が宇宙船の軌道を修正したという。

神船6号は今月11日に打ち上げられ、地上340キロメートルの軌道を5日間の飛行し、内モンゴルの草原にて帰還する予定だ。

2年前の神舟5号と違って、今回の打ち上げについて中国国営メディアが打ち上げの様子を大々的に報道したところにある。今回は生中継だけではなく、大量の報道も行っていた。

2年前の10月15日、中国は初めて「神舟5号」有人宇宙船の打ち上げに成功した。 これで中国は3番目の有人宇宙船打ち上げ成功国となった。2年後、神舟6号は再び2名の宇宙飛行士を宇宙に送った。中国は5年以内に宇宙基地を建設することを計画しており、最終的には飛行士たちを月に送ること目論んでいる。中国宇宙飛行の成功は一つの新しい英単語―Taikonrauts:―を生み出した(中国語で宇宙飛行士は、太空人と呼ばれ、この発音からできた英単語)。

*経済繁栄に潜む危機

宇宙開発計画には国家の強い経済力を必要とする。中国の目覚ましい経済発展はこれに保障を与えたように見える。専門家は、この20年間の中国経済の平均的なGDP成長率が9.5%であると指摘している。今現在、中国は世界最大の鉄鋼、セメント、穀物の消費国であり、第2位のエネルギー消費国でもある。そして、中国は「世界の工場」と呼ばれ、世界最大のパソコン、携帯電話、テレビなどの電気製品生産国でもある。

しかしながら、中国経済繁栄の裏に多くの社会問題が潜んでいる。2004年の世界銀行の統計によると、中国において1日の生活費が1ドル以下の人口はおよそ2億人にも上っているという。また、中国各地で絶えずに発生している貧困層によるデモや抗議行動により、中国共産党政権は大きな危機感を抱いている。

腐敗が抗議行動を拡大*

アメリカのブルームバーグ・ニュースは先週金曜日、『中国が宇宙開発を急ぐ一方、数百万人の中国人が依然として生活難』と題する特集を掲載した。ブルームバーグ・ニュースは、社会に対する不満の噴出は、不平等な社会的財産の再分配、貧富の格差の拡大および不当な土地収用などに集中している。経済の高度成長は、自然環境の汚染、政府幹部の汚職、都市部と地方との間の格差拡大といった多くの問題をもたらした。頻発する抗議行動はこれらの対立の激化を表している。周永康中国公安部部長は先月、大規模なデモは1994年の1万件から去年の7万4千件に増加したことを認めた。一方、都市開発のための土地収用で発覚した地方官員による汚職行為が農民らの抗議活動を拡大させた原因となっている。

アメリカのシアトルに本部を置く農村発展研究所の北京駐在総責任者である李平氏がブルームバーグ・ニュースの記者に対して、「今日の中国では、腐敗地方官員らが経済発展の促進を理由にし、憚ることなく農民から土地を収用している。この危機を解決するには、土地所有権を農民に返すことが重要ではないだろうか」と述べた。

*大衆に裕福層を恨む心が芽生えている*

富の集中、貧富の格差の拡大、そして政府と経済界の癒着がもたらした腐敗が中国大衆層に裕福層を恨む心生じさせている。

不良債権を持つ中国企業を買収したい外国企業に対してコンサルティングを行う中国北京の外資系会社のCEOはブルームバーグ・ニュースのインタビューに対し、次のように話していた。つまり、「裕福になった中国人の多くは彼たちの能力によって成功したわけではない。彼たちが富を得たのは彼たちがコネを持っているから。例えば、不動産を営んで金持ちとなった人々は、土地管理局にコネがあり、そのコネを使って安い土地を手に入ることができた。」 

北京で野菜を売ることで生計を立てる農民の李静さんは「宇宙開発計画はとてもいいが、政府としては、どうしたら私たち農民がよりよい生活を送ることができるのかを考えなければならない。私たちの生活は本当に大変だ」と話した。

*中国共産党は社会的不公平の解消を公約している*

中国政府は、高度経済成長がもたらしたこのような社会現象は既に共産党政権を脅かしていると認識している。中国国営新華社通信は10月6日、珍しく今現在中国に存在している問題を認めた。新華社の社説によると、経済が目覚ましく発展している一方、中国は「ますます増える発展の不均衡、再分配の不平等、不正と腐敗がもたらした潜在的かつ激化する社会問題に直面している」という。

神舟6号打ち上げの前日、胡錦涛中国国家主席は中国共産党十六期中央委員会第五回総会(五中総会)において、社会的不公平を解消することは中国共産党にとってこれからの5年間の最も重要な任務であると述べた。

(VOA記者・遠山 ワシントン 2005年10月14日)
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