真実を報道し始める中国メディア、対応に苦慮する中共政権

2006/01/09
更新: 2006/01/09

【大紀元日本1月9日】「すべてを報道する」と提唱する人気日刊紙「新京報」や、庶民の視点から中国の変革を記録する「百姓」誌が去年12月末、中共政権から厳重に「粛清」されたことが明らかになった。現在、中国では中共による報道の自由の制限に反発し、社会の暗部を報道するメディアが相次ぎ現れた。中国共産党はこうしたメディアに対し、発行停止処分、関係責任者の解任や逮捕などの強圧的手段で、事態の沈静化を図ろうとしている。中共政権の圧力に屈し、報道路線を変えるメディアがある一方、多くの報道関係者は職業理念を堅持し、真実を報道しようとする報道機関も現れた。

「百姓」誌は去年の12月29日、中共に出版業務の一時停止を命じられ、ホームページを封鎖した。黄・総編集長は1月5日大紀元の取材で、中共上層部から雑誌のキャラクターや、コラム、内容などを変えるよう命じられたことを明かし、「圧力は常にあるが、読者の期待を裏切ることなく、本来の創刊の方向性と主旨を堅持する」と語った。

北京の知識人層やエリートサラリーマンに支持されている「新京報」は、去年6月に河北省定州で官僚が武装集団を雇い、農民抗議者を襲撃させ、6人を殺害した事件を最初に報道し、国内外で強い反響を呼んだ。そのほかにも2005年11月には黒龍江省の松花江で発生した大規模な化学物質汚染事故などをスクープし、中共政権による事件の隠ぺい工作を批判した。そのため中共宣伝部の圧力で、去年12月総編集長・楊斌氏が解任され、「新京報」の編集業務は中共の管理下にある「光明日報」側に移管された。しかし「新京報」の記者と編集者はこれに抗議し、一時ストライキを決行。結果中共側が副編集長らの復職を承諾し、事態は収拾した。

「新京報」と同じ企業グループである「南方都市報」も、中共政権の報道禁止命令を無視し、広州在住の美術デザイナー・孫志剛氏が2003年3月警察に誤認逮捕された上、拷問で殺された事件をスクープ。また2005年5月広東省番禺地区太石村の村民が汚職官僚の懲戒免職を求めて集団抗議を行った事件などを報道したため、副編集長・夏逸陶氏が解任されたことが伝えられた。同紙に対する処罰は今回が初めてではなかった。2003年SARS大流行の際に、「南方都市報」が感染の最新情報を独占報道したため、中共政権の機嫌を損ない、2004年6月当時の執行総編集者・程益中氏、総裁・諭華峰氏、及び委員・李民英氏は、いわれのない汚職の罪で逮捕された。その後国内外の多くの支援により程益中氏は160日間の拘禁の後自由の身となったが、すべての職務は剥奪された。諭華峰氏と李民英氏にはそれぞれ8年と6年の収監刑が科されている。

中国共産党の機関紙「中国青年報」も四川省万源市での官民闘争や、武漢市の女子大生の約1割が売春行為を繰り返している社会問題、台湾作家・竜応台氏の台湾問題に関する文書の掲載など「報道してはならないニュース」を報じたため、関係する記者と編集者が処罰されたという。2005年8月編集者・李方氏は、公開文書で辞意を表明、「すべての人は自由に表現する権利を有し、強制や脅迫に屈し、特定の観点と信条を受け入れるべきではない」と語った。現在、中国共産党は同紙の管理者を更迭したが、報道理念が根底から異なるため、後任者は、社内で「無言の抵抗」に直面しているという。

蘊蓄のある評論で有名な北京紙「経済観察報」は2005年8月、責任編集者・許知遠氏を中心に、一部の記者と編集者が集団辞職した。許知遠氏は辞職直前に自分が担当するコラムで『この機関はすでに正義感を完全に喪失した。そのことにより私が直接的影響を受けることはないが、しかし基本的な立場は厳守すべきだ。したがって私は去ることを決意した。私はいまの「経済観察報」に嫌悪感を覚える。派閥闘争の場と化しているからだ。我々の情緒と理想が愚かで低俗な人間に容易に潰されるとしたら、その理想は試練に耐えられない証だ……』と心情を語った。

大胆に報道することで有名な「深セン法制報」は2005年11月5日、突然発行停止となった。中共政権は長期的に赤字経営に陥ったためと公表しているが、情報筋は、同紙が頻繁に社会の暗部を暴露する文章を掲載したため、このような結果を招いたと分析している。大紀元の取材に対し、関係者は言葉を濁しながら、「上からの指令による停刊である」と告げただけで明言を避けた。

河南省の地方紙「河南商報」も、2005年7月31日に発生した炭鉱水没事故で、多くの取材記者が炭鉱主から「口封じ料」を受け取ったことを暴露した。そのため中共政権から1ヵ月の発行停止を命じられ、このスキャンダルを報道した範友峰氏の現場録音資料は没収、編集責任者が辞職し、範氏も河南省を離れたと見られている。この事故では複数の死傷者が出たにも関らず、それが公表されておらず、その後メディアに対してはこの事件に関する一切の報道を禁止するとの命令が出た。

中共政権下の厳しい報道規制の中にいる国内メディアは、道徳や良知を貫き真実を報道するか、中共に服従し独裁暴政の手先となるかの難しい選択に直面している。ある評論家は「圧力を受け続けているにも関らず、多くのメディアと報道関係者は中共政権の指令に反発するようになり、暴政統治下の社会の現実を報道するメディアが増え続けている。インターネットの普及に伴い、中国共産党が報道の自由を封殺することは益々困難になるであろう。一部の共産党直系の報道機関も市場競争の圧力で、中共政権を激怒させるようなニュースを報じ始めている」と現状を分析した。

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