日中首脳相互訪問の思惑=台湾・明居正教授

2007/01/29
更新: 2007/01/29

【大紀元日本1月29日】日中両国はこのほど、4月中の温家宝首相が訪日の期間中国会で演説を行うことに向け、具体的内容を詰めていくことで合意した。これが実現できれば、中国指導者が22年ぶりの日本国会での演説となる。最近、日中首脳間の相互訪問の思惑について、台湾総統府両岸関係特別顧問チームのメンバー、台湾大學政治学部の明居正教授は26日に本紙の取材で、日中両国にそれぞれ深層で策略が進行していると分析した。

明居正教授は台湾大學政治学部の前学部長、台湾中国政治学会理事長。2000年から台湾国家政策研究基金の国家安全チーム特別研究員も勤め、台湾総統府両岸関係特別顧問チームのメンバーとして国家政策提言に活躍している。

明居正教授は、外交は内政を補完する目的であり、中共が最近極力、日本を丸め込む行動の背後に、国際政治の圧力を均衡するほか、崩壊寸前の政権への延命目的であると指摘した。

日本側の動きについて、明教授は、安倍首相は前任の小泉前首相とは違い、柔軟と強硬の両方の外交手段を使って中国側と対応していると分析した。日本は中国に友好的な姿勢を進めているように見えるが、バランスを取るため、その同時に却って中国の人権問題を取り上げて話を進めるだろう。日中両国は外交策略においてもっと精緻化されてきたので、日本は硬軟外交の手段を上手に使えば、中共は自分の目的を達成するのは安易ではないだろうと明教授は分析した。

明教授が述べたコメントの概要は次のとおり。

中共の計算

胡錦濤国家主席の権力はまだ完全に安定していないようである。だから胡錦涛氏が江沢民氏及びその残力との権力闘争はいまだ最終結論が出ていない。中共十七大(中国共産党第17回全国代表大会)の前まで激烈な死闘があり、現在では胡錦濤は必ずしも勝算があるとは言えない。

中共上層内部の険悪な闘争から、胡錦濤はあらゆる可能性を利用して自分の政治名声を上げようとしている。もし彼の名声はそれほど高くないであれば、彼が党内でのリーダーシップにおいて大きい困難をきたすであろう。過去の小泉時代では、中共は高姿勢な態度できたが、日本との緊張関係は、胡錦濤氏の政治生命に対してはマイナスの作用もある。そのため、胡錦濤氏は自分の権力を固めるため、安倍氏が新首相に就くきっかけに、安倍首相、つまり日本を丸め込もうとした。これは彼にとって政治上の点数を稼ごうという目的である。

中共は近年大国外交政策を展開してきた。日本は経済貿易、軍事、科学技術上においてすでに大国となっており、近年政治大国の方向にも向けている。そのため、中共にとって日本との関係をうまく扱うことは大国外交の一環であり極めて重要である。日中間の経済貿易関係も密接であるため、日本との経済貿易関係を安定させることも、中共の経済と技術発展にとっては実質的な利益に係わる事である。

日米安保問題も絡んでいる。アジアの安全情勢の根本保証は日米安保である。日米安保関係において、米国は従来、主導的な役割を果たして来たが、最近日本は以前よりもっと力を出しており、米国と対等的なパートナーになりつつある。それは米国の望みでもあるが、日本の地位の向上により、日米安保が共産中国に対するプレシャーが増すと見られる。

常に日米安保の力を弱めようとしている中共にとって、日本を先にターゲットにすべき対象であろう。日本に対して使う外交手腕は、高圧的な攻撃と軟性の丸め込みの二つの手段があるが、現段階では安倍に対してはほとんど軟性に扱い、それほどの強硬手段を使っていない。

しかし、我々が冷静に見通さなければいけないことは、外交は内政のための手段であり、中共は極力日本を丸め込んでいることは、国際政治上の圧力を均衡する目的ほか、崩壊寸前の共産独裁政権を延命することが根本の狙いである。

安倍の謀略

日本において、小泉前首相の在任中、中共との関係は硬直していた。それは小泉氏の強烈な個性から、中共が厳しい態度を取っていたからだ。

安倍首相は実質上ややタカ派的人物であり、多くの場合では激しい発言が見られる。例えば北朝鮮がミサイル発射する事件が起きた際、官房長官としての安倍氏は小泉首相が報道していないうちに、すぐさま非常に強烈な態度で表明した。このことは安倍氏の日本国内における名声を一気に上げるきっかけとなった。つまり、安倍氏の政治的立場は実際に小泉氏とは大差がなく、一部の問題においてむしろ小泉氏よりも強いと言える。

安倍氏が首相に就いた後、日本は中国との関係は友好的になったとみんなが感じている。実際に安倍氏は相当の策略家だと思う。彼はただ者ではない。安倍氏は中共に対する外交は硬軟外交、つまり、一つは軟性、他方は硬性、このように互いに援護してまた互いに促進しながら進めている。この点はすでに現状から見られる。

例えば最近、安倍氏は防衛庁を防衛省に昇格し、また、自衛隊の組織も強化し始めた。自衛隊は将来海外においてより重要な役割を演じ、日本の外交、国防と世界の平和維持に於いてもっと積極的な役割を果たせると称した。安倍氏は、日本の自衛隊を日本の国家軍隊と考えているようだ。ほかのバランス的な方法を取らずにこのまま進めば、外部から、軍国主義に向かっているのではないかとの懸念を喚起しやすくなるだろう。そのため、安倍はより温和な硬軟政策を取った。

私から見ると、安倍氏の硬軟外交はより深いものであり、長期的な効果を生じると思う。現段階では安倍氏の硬軟外交は共産中国に使っているが、次のステップでは、韓国に対しても使うだろう。

中共の計算は失脚か

歴史的に見ると、日本の外交は、西側の大国に従う特徴を持っている。西側の大国が肝心なことにおいて取った立場は、日本に対してプラスであれば、それに従う立場を取っている。特に米国に対して従順な立場を取っている。準強国にとっては、それは賢明な戦略であるかもしれない。

最近、米国、ドイツ、欧州連盟、カナダ、オーストラリアを含めて西側の多くの国々が、中国の人権問題に対して声を上げている。安倍氏もきっとこの動向に気づいたと思う。近いうち、安部氏も中国の人権問題に対して声を出すと思う。それは安倍氏の硬軟策略の重要な一環であろう。

総括的には、日中両国は最近、外交策略において前よりもっと精緻化されている。更に、バランスを取るため、日本は即ち中共の人権問題を取り上げて中共を批判するだろう。もし日本はこのように硬軟外交を上手に操れば、中共がその目標を達成するのは非常に難しくなるであろう。

(記者・辛フェー)
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