<評論>官僚の目線で見た真の中国

2009/10/30
更新: 2009/10/30

【大紀元日本10月30日】中共政権の宣伝部門と一部の極端な愛国主義者は、中共非難を海外の反中国勢力の行いとしている。しかし、中共政権の官僚は、無意識のうちに政権を批判してしまっている。この事実は、現代中国の真実を反映するだけでなく、中共の言論統制に関して理解する機会を与えてくれる。

中国の官界には二種類の言語がある。一つは公の場に使う立て前のもので、たとえば、会議やマスコミに用いる原稿。もう一つは官員の本音で、親戚や親友にしか語れない。前者は60年以上話し続けられてきており、小学生の作文もこの手の言語に満ちている。後者は官員の権力範囲が拡大するにつれ、口から滑り出てしまうもので、インターネットを通して広がっていく。

まず二つの官員の話を分析してみよう。一つは「博訊ネット」が公開した報道である。10月15日、北京の宣伝部門は内部会議を開き、基調講演にあたった宣伝部の官員が、「この国はまだ共産党のものであり、世論の方向付けはわれわれがしっかりと掌握しなければならない。腐敗はわれわれを台無しにすることができず、世論のコントロールを失うことは党を滅ぼし、国を滅ぼしかねない」と発言した。

この言葉の意味は、官僚の腐敗は重要ではなく、中共政権と政府は腐敗への取組みを第一要務とみなしておらず、皆が党の周りで団結し、自己保存の意識さえあれば十分である、と解釈できる。肝心なことはマスコミと世論の方向付けを厳しくコントロールし、腐敗への非難を制度に繋げてはならない。中国社会の実状はどうでもよく、世論をコントロールし、中共政権に不利となる情報を封鎖し、中共政権がコントロールした世論から中共政権の偉大さと西洋社会の没落・腐敗を国民に示し、自分はありがたい盛世に生きていると感じさせればよい、というわけである。

このような話は「人民日報」や「新華ネット」には載せられない。「人民日報」、「新華ネット」に掲載されているのは中共政権の高官層が、氾濫する官員腐敗を懸念する記事などである。中共政権は腐敗する官員に対して寛大な処分をほどこしており、1億元(約13億円)以上の汚職に対してもせいぜい死刑の執行猶予を言い渡される程度である、と中共の官員は充分承知している。

もう一つは国内報道で、重慶の市長である薄煕来のマフィア組織を取り締まる心得の解釈。薄氏による「マフィア組織の取り締まりは積極的なものではなく、マフィアに強いられて、取り締まらざるを得なかった」との発言に対して、ネット上では様々な解釈が飛びかっている。大まかに3種類に分けると、①この話には他の意味はなく、単にマフィアの凶暴性を描きたい。②薄氏にとって、重慶でマフィアを取り締まることは多大なプレッシャーで、自ら話すことで関係を和らげようとしている。③薄氏の失言を非難する。中国社会を長期的に観察し研究してきた私個人の見解では、①が最も実情に合っていると思う。薄氏の重慶市長就任は、その後の昇進のための資本を蓄積することが目的だ。しかし、重慶市長に就任して以来、タクシー運転手のデモ、バス事件、3・19奪銃事件などが相次いで発生しており、薄氏の業績にプラスにならないだけでなく、薄氏が無能であることを十分に証明した。このような状況の下で、薄氏がマフィアを取り締まるのはやむを得ないことだ。現在のマフィア勢力は、警察と政界が共に育てたもので、マフィアと地方政府が共に地域の管理にあたるのは、中国のほぼ全土に見られる現象である。一部の地域では、マフィアの方が地元政府より顔がきく。

党文化特有のイデオロギーと言語は常に中共政権の官員に、思いもよらない形で解釈されてしまう。たとえば、2009年6月に記者が河南省鄭州市の経済援助適用住宅を調査した際、鄭州市計画局の逯軍・副局長に詰問された。「あなたは党のために話すのか?それとも庶民のために話すのか?」この話は党と庶民の利益がまったく相反していることを認めており、インターネットを通して大騒ぎとなった。今まで中共政権は、ずっと一つの観念を中国人の頭に注いできた。「中共政権は人民の利益を代表する最高者である」。逯軍氏の発言は中共政権の虚言にビンタを打ったかのようであった。

1999年の旧正月のときに、国務院の総理である朱鎔基氏のお供をして、中共宣伝部長である丁関根氏が「人民日報」を視察した。朱総理は「あなたたちはしっかりと人民の代弁者となってください」と従業員を励ましたが、丁氏はすぐに「党と人民の利益が一致するならば、人民の代弁者となる。何よりも大事なことは、党の代弁者になることだ」と補足した。

上述の話は、党の利益と人民の利益が完全に一致していないことを示している。2009年8月湖南省衡山県の店門鎮長である周建国氏は、建物を壊す現場を指揮した際に、自分の家を死守し、立ち退きを拒否する民衆に対して「私たちには党性しかない。人間性は重んじない。かかれ」と命じた。山西省のある裁判所の所長は「私は上の天を管理し、下の地を管理し、その間にある空気を管理する」と自己の権力を誇示した。

これらの官員の発言は一時的な冗談ではなく、現代の中国における真の認識である。権力者の視点からみると、汚職や腐敗などは怖いものではなく、真の敵は「言論の自由」である。マフィア勢力は政府と結託して人民を管理しているので、マフィアを取り締まる必要はない。政府の利権が脅かされるようになってはじめて手を出す。党が人民の利益を代表する最高者であるというスローガンは、自分を騙す名目に過ぎない。政府そのものが自我を追求する集団となってしまった。

中国社会はここまで堕落してしまい、もはや救いようがない。党と政府に残された手段は、「自国の世論を統制する」以外にない。海外の中文マスコミをも統制しようとしている。これが、10月15日、北京で行われた宣伝内部検討会で配られた「インターネット管理三年計画」の主旨である。

(翻訳編集・張J)
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