「体罰が怖い」 10歳の留守児童、殺虫剤で自殺

2011/06/28
更新: 2011/06/28

【大紀元日本6月28日】10歳の少年・小南(仮名)は15日朝、自宅で殺虫剤のボトルを丸ごと1本飲み干して自殺した。通学カバンの中には、未完成の宿題ノートが入っていた。

捜狐ニュースが24日に伝えたところによると、小南が飲み干したのは強い毒性のある有機リン酸塩の殺虫剤・ジクロルボスで、中国では農薬の一種として使われている。殺虫剤を飲み干した小南は、母親の腕の中で激痛にもだえたのち、間もなく息を引き取った。

小南は、陝西省西安市藍田県孟村郷に12歳の兄と80歳近くの祖父母と共に暮らしていた。2000キロ以上離れた新疆ウイグル自治区へ出稼ぎに出ていた母親が偶然、帰省していた日、事件は起きた。

事件の朝6時15分ごろ、母親は「急いで。学校に行く時間よ、お兄さんを起こして」と小南を起こした。飛び起きた息子は、「学校に行きたくない、宿題がまだ終わってない。先生が僕を叩くので怖い!」と答えた。

この言葉を気にも留めず、母親は小道の掃除を始めた。数分後、家に入った母親は強い刺激臭が部屋に充満しているのに気づき、空になった250グラムの殺虫剤のビンが床に転がっているのを発見した。小南が飲み込んだのだとわかった。

すぐさま母親は息子を抱えて殺虫剤を吐き出させたものの、すでに瀕死の状態だった。搬送された2つの病院とも、絶望的な結果を母親に伝えた。

終わらなかった6つの宿題

小南の宿題が書き留められた粗末なノートが、通学カバンの中から発見された。事件当時、小南は7つの宿題を抱えており、それは「間違った問題の20回の口述、20回の記述」というものだった。その日は、たった一つだけに「OK」のマークが付けられていた。ノートによると、小南はたいてい、1日に7つほどの宿題を抱えており、多いときは10以上あったようだ。

母親は、「小南は終わった宿題に『OK』をつけていたけれど、この日はきっと兄弟と遊んでいて終わらせられなかったのだ」と話す。母親の証言からすると、宿題を終わらせられなかったのは小南本人にも原因がないとはいえない。ましてや殺虫剤を飲めば死ぬことなど、10歳にもなれば分別がつく年のはずだ。

しかし母親は、毎日課される宿題の量が自殺の一因だと考えている。母親と親戚が小南の学校の同級生に尋ね回ると、その多くが大量の宿題に不満を持っており、そして教師は期限内に提出できなかった生徒を叩いたという。しばしば小南はそのうちの一人になっていた。ある同級生は、「叩かれていたのは小南だけじゃない。誰でも宿題が出来なきゃ叩かれる」と母親に伝えた。

出稼ぎの両親 1カ月の帰省中の悲劇

小南の両親は生活を支えるため、遠く離れた新疆ウイグル自治区まで出稼ぎに行っており、帰省できるのは旧正月の1カ月ほどだけだった。事件当日は偶然、母親だけが休みをとって帰省している最中だった。「小南が、私の腕の中でもがき苦しむ様子を忘れることができない」と、この青天の霹靂を母親はまだ飲み込めていない。「息子がいないのに、お金を稼ぐ必要があるのか」と母親は泣き叫んだ。

小南の家族は、必ずしも息子の自殺の直接の責任が学校にあるとは考えていない。しかし、宿題の量と教員の体罰は小南を間接的に自殺に至らしめたと主張する。「両親が息子の側におらず、世話をしなかったから、私たちは酷く自分たちを責めている。でも学校にも責任がある」と母親は述べた。

留守児童 愛情の欠落 

一方、専門家は、事件の真の要因は学校側ではなく家庭環境にあると見ている。小南の自殺について陝西省心理教育研究会の宋馨会長は、学校側の話は自殺の導火線に過ぎず、爆弾となったその主因は、家庭内の「愛情の欠乏」にあるという。「愛情を受けなかった子どもは、簡単に命を捨ててしまうことさえしかねない」と宋氏は分析する。

宋氏いわく、両親の愛情を得ていない子供の心は、常に不安定な状態にあるという。小南のような多くの留守児童は、意思疎通の困難な老人と一緒に生活しており、一般的な生活習慣を身に着けることが出来ない。「両親など他の人から愛情を注がれなければ、苦悩や恐怖が心の内に充満し、困難を打開できない」という。

また、このような環境下で育った留守児童はコミュニケーション能力に欠け、将来、さまざまな問題を引き起こしかねないという。広東省未成年犯罪者管理所の調査データによると、刑務所に収容されている未成年犯罪者の中で、留守児童は2割を占めている。また広州大学の研究では、犯罪記録のある成人農民工のうち、8割は留守児童だったことが明らかになっている。

台湾誌「アジア週刊」によると、中国全土で2億5千万人いる出稼ぎ労働者が故郷に残した留守児童の数は、6000万人近くに上る。

宋会長は、両親が出稼ぎのために家にいない家庭に、「子供の健康な心理を形成するために、なるべく早く帰省して、そばにいてあげて」とアドバイスを送っている。また学校側に対しては、「留守児童の家族とよく交流すること、学校生活において教員は、子供たちから目を離さず、たくさんの愛情ある態度で接してほしい」と助言した。

(翻訳編集・佐渡道世)
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