仏ランコムの香港音楽イベント、民主運動の歌手で中止 波紋ひろがる

2016/06/10
更新: 2016/06/10

フランス化粧品大手ロレアル(L’Oréal)傘下ブランドのランコムLANCÔME)は、民主運動支持者として知られている香港の女性歌手が参加するイベントを中止したとして、6月8日、香港の約16の政党組織と団体が抗議活動を行った。この影響で、同日香港にあるすべてのランコム販売店が営業中止となった。

ランコムは6月19日に、香港での新販売店オープンに合わせて、広告に起用した歌手の何韵詩(デニス・ホ―)さんのミニコンサートを予定していたが、「安全上の問題」で5日に中止を発表した。その翌日、何さんを広告に起用しないと声明を出した。

何さんは2014年香港の「雨傘運動」を支持し、積極的に参加したことで知られている。また公の場で民主的な発言をしばしば述べていた。

ランコムが何さんのミニコンサートを行うと決めた後、中国政府系メディアの「環球日報」は5日、ミニブログサイト微博において、香港独立を支持する芸能人を起用したことで激しく非難した。また、7日の社説において「中国市場から利益を得たいと考えるいかなる企業も、中国の利益を脅かすような事を絶対にしてはいけない」と脅かした。

 香港16の団体が抗議

6月8日、香港の民主党、工党、香港衆志、社会民主連線(社民連)などの16の政党と団体、約200人が香港中心部にあるショッピングモール、銅鑼灣(コーズウェイベイ)タイムズ・スクエアの前で、ランコムの決定に対して抗議活動を行った。

抗議参加者で社民連の呉文遠主席が共同声明を発表し、ランコムが中国政府からの圧力に屈したことを非難し、「何韵詩さんだけでなく、長年民主を追い求めてきた香港市民、民主と自由を尊重する世界の人々を侮辱したことになった」と、ランコムに対して謝罪を求めた。また、市民にランコム製品のボイコットを呼びかけた。

また、一部の抗議参加者はショッピングモールにあるランコムの販売コーナーで抗議のスローガンを張り付けた。

ロレアルは事前に抗議の情報を得て、同日の営業を中止した。抗議団体の訴えに対してまだコメントを出していない。

騒動の背後に中国共産党の「五毛党

ランコムが民主運動を支持する歌手の何さんを起用したことに、国内インターネット上でも、ランコムのフェイスブックや微博アカウントにも、「愚かなランコム、この中国市場シェアを失ったよ」「ランコム出て行け」との罵りやボイッコトのコメントが殺到した。

ブルームバーグはこのほどの報道において、中国国内インターネット上でのランコムへの攻撃は中国「五毛党」によるとものだとの見解を示している。5月発表されたハーバード大学の研究によると、中国共産党がネット上では言論自由を統制するだけではなく、共産党を称賛し、世論を共産党の都合の良い方向に引導するため、「五毛党」が毎年約5億件のコメントやブログを流しているという。

社民連の呉文遠主席はブルームバーグに対して、中国共産党政権が各企業に政治的な圧力をかけて、強制的に自己審査をさせていることは明らかで、「この出来事を通じて、コンサートを中国国内で行うことはないのに、共産党政権がその権力を利用して、海外まで手を伸ばし、国際企業を脅迫していることを浮き彫りにした」とコメントした。

中国の化粧品市場規模は昨年、約251億元(約4257億円)だった。ロレアルが市場の30%を占め、シェア1位となっている。

(翻訳編集・張哲)

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