お助けマンか悪魔か 宿題代行サービスが中国で大繁盛

2016/08/10
更新: 2016/08/10

中国の小中学生の夏休みは忙しい。山のような宿題をこなすので精いっぱいだからだ。子供の負担を軽減しようと、宿題代行業者に依頼する親も少なくない。こうした風潮は子供の人間形成にマイナスな影響を与えると憂慮する声も上がっている。

ネットメディアSixth Toneの報じたところによると、中国の大手オンラインショッピングモール淘宝網(タオバオ)で代筆サービスを検索すると、2000件近くがヒットする。この中には、論文の代筆や筆跡模写付きの宿題代行サービスなども含まれており、ある母親は、毎日宿題に四苦八苦している小学5年生の息子の様子を見るに見かねて、代行業者を探すつもりだと語った。

タオバオに出店している山東省のある代筆業者は、この仕事を初めてもう7年になるという。先月は2600件もの代筆依頼を請け負った。顧客から、使いまわしでなくオリジナルの原稿を求められた場合の料金は1000文字当たり400元(約6000円)。「文章のオリジナリティは保証します」とこの業者は言う。

広東省の別の業者は、300人の大学生を兼業「書き手」として雇用している。でき上がった宿題を、依頼主の筆跡をまねて清書する場合、100文字当たり1元(約15円)が上乗せされる。この会社の社長は「顧客の筆跡に最も近い清書係を選びます。店の7月の売り上げは約50000元(約76万円)でした」と胸を張る。

親が子供の宿題をお金で解決するという風潮について、上海市内の小学校長張莉さんは、現代社会の道徳教育が衰退していることを如実に表していると深く憂慮している。

「誠実であることは一人の人間として人生における基本原則です」と張さんは語気を強めた。子供たちが責任感や誠実さを身につけることができるよう、教師や親はもっと彼らに注意を払うべきだと張さんは考えている。

上海でもっとも優秀な小学校に通う4年生の娘を持つ卓暁林さんは、学校の宿題は簡単すぎるので、今年の夏休みには娘を英語、数学、絵画、ピアノの4つの夏期コースに通わせるつもりだと語った。

「宿題の内容を子供たちがすでにマスターしているのなら、その教科の勉強をする必要はありません」と卓さんは言い張る。子どもの宿題に代行業を利用することについて、「子供たちに誤ったメッセージを伝えることになる」と懸念を示した。

上海の高校で地理の教鞭を取っている陳小玲さんは、生徒の多くが宿題なんてどうでもいいと思っていることは重々承知していると明言した。だがそれでも宿題を出すのは、そうしなければ保護者から教師の責任を果たしていないと非難されるからだと本音を口にした。

中国で大繁盛している宿題代行や論文代筆サービスは、宿題にあえぐ子供には、楽をさせてくれる「お助けマン」のように見えるかもしれないが、誠実で責任感のある人間を育てるという教育本来の目的から見ると、これは親切の仮面を付けた悪魔と言えるのでは。

(翻訳編集・島津彰浩)

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