[ブリュッセル 27日 ロイター] – 欧州連合(EU)は28─29日にブリュッセルで首脳会議を開く。最優先の議題は難民・移民対策とみられるが、以下に協議が予想される5つの懸案事項を挙げた。
●難民・移民対策
ドイツ連立政権の一角をなすキリスト教社会同盟(CSU)は、他のEU加盟国にたどり着いて登録された後、ドイツに入国しようとする難民を当該加盟国に送り返したい考え。メルケル首相はこれに反対しており、連立崩壊につながりかねない問題となっている。
地中海を渡る難民の大半にとってEUの玄関口になるイタリアは、こうしたCSUの意向に猛反発。CSUが我意を通せば、域外から到着する難民ばかりか、ドイツに入った難民も再び引き取らなければならないからだ。イタリアは、難民が初めに到着した加盟国に責任を負わせている現在のEUのルールを改正するよう要望している。
ただ首脳会議の合意素案に基づくと、難民・移民に関するルール改正にまでは踏み込まない見通し。まずは北アフリカ諸国の沿岸警備隊とEUの境界防衛機関の機能強化を後押しし、EUに難民が来ること自体を防ぐ策を講じる線で意見がまとまりそうだ。
各国は、域外に難民キャンプを設立する案も支援するだろう。
●貿易
EU首脳は、米国が導入した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への報復措置や、米国を世界貿易機関(WTO)に提訴することを支援するとみられる。
一方歩み寄りの姿勢を示す意味で、米国の懸念を招いている中国の貿易慣行により適切に対処できるように、WTOを改革することに前向きになる。
●ブレグジット
当初今回の首脳会議は、来年3月のブレグジット(英のEU離脱)に向けた交渉の節目となる予定だった。ところが英政府内でEUへの要望を巡り意見が対立する中で、交渉合意の期限は10月に先送りされている。
交渉に進展がないことから、EU首脳はあらゆる関係者に対して、企業にとって破滅的な事態となる合意なしのブレグジットを意味する「あらゆる結果」に備えるよう警告している。
●統合深化
今回の首脳会議で、将来の金融危機に立ち向かう能力を高める方向にユーロ圏の改革を進めるという野心は、ほぼ立ち消えになった。
欧州安定メカニズム(ESM)の役割拡大で原則的には合意しそうだが、具体的にどんな権限を新たに加えるかの決定は12月にずれ込む。
銀行同盟に欧州預金保険制度が加わるのは、ユーロ圏の銀行の不良債権が大幅に減少した後になる。
ユーロ圏の共通予算やソブリン債再編を実行しやすくすることなども議論されるだろうが、合意期限は設けられていない。
●防衛
7月にブリュッセルで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に、EU首脳は米国の圧力を受けて防衛力強化を約束するだろう。
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