焦点:日米通商交渉、関税先送りでも「自動車」は日本の喉に刺さったトゲ

2018/09/27
更新: 2018/09/27

[東京 27日 ロイター] – 貿易不均衡の是正問題に焦点が当たっていた今回の日米首脳会談で、安倍晋三首相はトランプ米大統領を相手に、自動車輸出への25%関税の実行を回避する交渉結果を獲得した。ただ、会談後に発表された共同声明の詳細を読み込むと、自動車問題は日本の喉に刺さったトゲになる可能性がある。政府・与党関係者の中には、一定期間の先送り後、何らかの対応を迫られるリスクを意識する声も出ている。

今回の共同声明[nL4N1WD08B]は、表面上の文言を読むだけでは、解釈が難しい部分が少なくない。たとえば、日本政府が強調する米通商拡大法232条を適用した日本からの輸出車への追加関税の課税回避だ。

共同声明では「日米両国は上記について、信頼関係に基づき議論を行うこととし、その協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らない」との部分がある。日本側は、この部分を指して232条の適用は、交渉継続中にはないとの見解を表明している。

同様に表面上の文言の裏にある意図を読み取らないと、米国のこの先の政策対応を読み誤る部分がある。それは「米国としては自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること」という部分だ。

政府・与党関係者のひとりは、1)日本での米国車輸入拡大、2)米国での日系メーカー現地生産拡大、3)日本からの対米輸出削減──のいずれとも解釈可能と述べるとして米側が意識しているのは「現地生産拡大と輸出削減だ」と解説する。

その関係者は、今回の合意で日本側は、現地生産拡大と輸出削減について「実質的に先送りできた」と評価する。

しかし、上記の部分が声明に盛り込まれたことは「米国の勝利」と指摘する。そのうえで「どこかの時点で、現地生産拡大と輸出削減を巡って、米国から押し込まれるリスクを抱えることになった」と予想する。

実際、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は26日の首脳会談後、記者団に対し、日米交渉のキーエリアは自動車であると認めた。

また、安倍首相や茂木敏充経済再生担当相は、交渉開始で合意した2国間の物品貿易協定(TAG)は、自由貿易協定(FTA)ではないと強調している。

しかし、共同声明では「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」、「日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする」と盛り込まれた。

その点に関連し、ライトハイザーUSTR代表は、日米通商協議について2部構成とし、第1段階で早期の成果を得る展開に期待を示し、早期の意味について、向こう数カ月中との見解を示した。さらに完全なFTA締結を目指すとしている。

先の政府・与党関係者は、日本は実質的に先送りの「果実」を得たとの見方を示したが、その根拠の1つが大統領貿易促進権限(TPA)を適用した米側の交渉方針だ。

この権限を行使した交渉を実行するには、協定署名の90日以上前に、議会に対しその協定の趣旨、内容を通告する必要があり、その上で議会での採決が必要になる。日本側には、最低でも90日間(約3カ月)の時間的余裕が生まれる。

この間に安倍政権は、国内調整を進めるということになりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

Reuters
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