アングル:メイ首相後継は誰か、保守党首選で予想される顔ぶれ

2019/05/17
更新: 2019/05/17

[ロンドン 14日 ロイター] – メイ英首相は、英国の欧州連合(EU)離脱交渉について次の局面を迎える前に退任すると表明している。具体的な退任時期にはまだ言及していないものの、与党・保守党の有力メンバーは後釜に座ろうと活発な駆け引きを始めつつある。

次期保守党党首(すなわち次期首相)選挙に出馬する意向を示したり、有力候補とみなされている人物は以下の通り。

◎エスター・マクベイ氏(51歳)

テレビ司会者出身のブレグジット(英のEU離脱)推進派で、昨年11月にメイ氏とEUの離脱合意案に抗議して雇用・年金相を辞任した。同氏はラジオのインタビューで「私は常に仲間から十分な支持があれば(党首選に)出るとかなりはっきり言ってきた。今そうした支持を得ており、打って出るつもりだ」と語った。

◎アンドレア・レッドサム氏(56歳)

ブレグジット推進派。2016年の党首選ではメイ氏とともに決選投票に残ったが、問題発言が響いて結局出馬を取りやめた。ただ今回は次期党首への「立候補を真剣に検討中」だとITVで表明した。

◎ローリー・スチュワート氏(46歳)

元外交官。いくつかの閣外相を経て今月、国際開発相に抜てきされた。16年の国民投票時にはEU残留に賛成したが、「合意なき離脱」にも反対で、今はメイ氏の離脱案を支持している。BBCに対して「私はこの国を団結させたい。私はブレグジットを受け入れたとはいえ、EU残留に投票した人たちにも手を差し伸べたい」と述べた。

そのほかに出馬が予想されるのは次の人々だ。

◎ボリス・ジョンソン氏(54歳)

前外相でメイ氏批判派の急先鋒。昨年7月に外相を辞めたのは、メイ氏の離脱交渉の進め方に不満があったためだ。

16年の国民投票においてジョンソン氏は、多くの欧州懐疑派から旗頭的な存在とみなされ、一時は党大会の演説を聞こうとする党員が座席確保のために行列をつくるほどの人気を集めた。

同氏は保守党が低い税率や強力な治安維持態勢などの伝統的価値に戻るべきだと主張している。まだ出馬は表明していないが、ブックメーカーの予想ではメイ氏の後継者として有力視されている。

◎マイケル・ゴーブ氏(51歳)

16年の国民投票の選挙期間中は最も知名度が高かった人物の1人だったが、キャメロン前首相の後継を決める党首選でメイ氏に敗北し、メイ内閣に加わった。精力的で、新たな政策を進める上で閣内で最も実行力があると目されている。予想に反してメイ首相の味方になり、これまでのところ首相の離脱方針を支持している。16年の離脱キャンペーンではボリス・ジョンソン氏と手を組んだが、党首選では土壇場でジョンソン氏への支持を引っ込め、自身が出馬した。

今回はまだ出馬するかどうか明かしていない。

◎ジェレミー・ハント氏(52歳)

ジョンソン氏に代わり、外相に就いた。保守党員はEU離脱を巡る見解の相違をいったん棚上げし、共通の敵であるEUとの戦いで団結すべきだ訴えている。16年の国民投票ではEU残留を支持。6年間保健相を務めたことで、公的医療制度NHSで働いていたり、NHSを利用する有権者には人気がない。

記者から党首選に出馬するか聞かれると「(どうなるか)見守ってくれ」と態度を留保した。

◎ドミニク・ラーブ氏(45歳)

ブレグジット推進派。昨年、メイ氏の離脱案が17年の総選挙で保守党が掲げた公約に違反していると主張し、わずか5カ月務めただけのEU離脱担当相を辞任した。出馬宣言はしていないが、首相になる意欲を問われると「決してないとは言わない」と述べた。

◎サジード・ジャビド氏(49歳)

元バンカーで自由市場主義者。閣僚を歴任し、党内で支持を固めてきた。パキスタン系移民の第二世代。反EU派とみられていたが、16年の国民投票では残留支持に投票した。今後の演説やメディアのインタビューで党首選への態度を明らかにしそうだ。

◎デービッド・デービス氏(70歳)

欧州懐疑派の有力者の1人で、16年7月にEU離脱担当相に起用されたが、2年後にメイ氏の方針に抗議して辞任。05年の党首選に出てキャメロン氏に敗れた。

デービス氏はある雑誌に対して、最高経営責任者(CEO)に志願するような調子で保守党党首を引き受けるのなら、自身が党首になるだろうとした上で「党首はそんなものではない。そんな風に決まるものではない」と述べている。

◎ペニー・モーダント氏(46歳)

メイ内閣で数少なくなったブレグジット推進派。今月、英国史上初の女性国防相に就任した。前職は国際開発相。メイ氏の離脱案公表に際しては、大方の予想に反して辞任しなかった。

◎アンバー・ラッド氏(55歳)

内相を務めていたが、間違って違法移民と決め付けられたカリブ系住民の扱いを巡って内務省が批判にさらされ、昨年辞任した。16年の国民投票ではEU残留を支持し、合意なき離脱には反対している。党内の親EUの支持は得られそうだが、17年の総選挙では自身の議席確保で苦戦を強いられた。

◎マット・ハンコック氏(40歳)

現在保健相で、元イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のエコノミスト。16年はEU残留を支持した。いくつかの閣外相も経験している。

◎ジャスティン・グリーニング氏(50歳)

教育相を務めた人物で、ITVで党首選への出馬検討を明らかにした。2回目の国民投票実施に賛成しており、今年に入って親EU派の新党を結成するために保守党を離脱するのではないかとの見方も多かった。

◎リズ・トラス氏(43歳)

財務省の首席副大臣。16年にはEU残留を支持したが、それ以降ブレグジット推進派に転向した。

Reuters
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