大紀元時報
上岡龍次コラム

韓国のGSOMIA破棄はアメリカの戦略を破砕する

2019年08月25日 09時36分
在韓米軍が撤退すれば情報共有は韓国と日本で必要になる。だからアメリカ政府は、韓国と日本で情報を共有するGSOMIAを結ばせた。アメリカ政府の視点では、韓国と日本でアメリカの代わりに戦争させるためだ  ( Photo by Senior Airman Colby L. Hardin/U.S. Air Force via Getty Images)
在韓米軍が撤退すれば情報共有は韓国と日本で必要になる。だからアメリカ政府は、韓国と日本で情報を共有するGSOMIAを結ばせた。アメリカ政府の視点では、韓国と日本でアメリカの代わりに戦争させるためだ  ( Photo by Senior Airman Colby L. Hardin/U.S. Air Force via Getty Images)

日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が8月22日に、韓国政府から破棄すると発表された。韓国政府は日本が韓国をホワイト国から外したことに対して、GSOMIA破棄で対抗したと思われる。これで日本と韓国の対立は政治・経済・軍事に拡大したが、韓国政府はGSOMIA破棄がアメリカを怒らせることに気付いていない。

強国の論理と条約破棄

国際社会は強国の論理で動く。これは国際社会の暗黙の了解。強国が都合の良いルールを作り、保護国・属国は従うのが国際社会の現実。国際社会は強国である覇権国・従う立場の保護国・属国に分けられている。

覇権国:軍事力を背景とした外交を行う・強国

保護国:外交権と軍事権を覇権国に依存している・弱国 [1]

属国 :覇権下の国・弱国 [2]

国際会議では各国の地位は対等でも、裏の世界では明確な立場の違いが存在する。各国政府は暗黙の了解を受け入れ、外交で国際条約を使っている。国際条約の運用は強国、弱国、弱国同士で違いが有る。

強国が決めた条約は自在に破棄できる。問題になるのは弱国同士の国際条約。この場合の条約破棄は国家間の信用を捨てる。条約破棄には法的処罰は存在しないが、国際社会では信用を捨てる行為になっている。

だから強国ではない弱国は、自国から破棄しないで相手国から破棄させる様に仕向けるのが基本。だが韓国は自国からGSOMIAを破棄した。

日本は困らない

日韓関係が悪いのは既定路線。日本は韓国の度重なる無礼に怒り、経済分野のホワイト国から韓国を除外した。韓国は日本のホワイト国除外に怒り報復を宣言。日本を韓国のホワイト国除外に留まらず、軍事分野のGSOMIA破棄に手を出した。

輸出先の待遇を決めるのは各国の自由。だがGSOMIAは国際条約だから、破棄すると韓国の信用を捨てるだけ。だから日本のホワイト国除外への報復には釣り合わない。それどころか日本は困らず韓国だけが困る事になる。

GSOMIAを簡単に言えば情報共有。日本と韓国で北朝鮮に対する軍事行動・位置情報・兵器情報などを共有する。だが韓国軍のレーダーは北朝鮮軍の弾道ミサイルを正確に追跡できない。そのため日本の自衛隊が追跡した弾道情報を韓国に流す事になっている。

端的に言えば、GSOMIAは日本にとって不平等条約。日本が得た情報が韓国に吸い取られるだけで、日本は韓国から必要とする情報は無い。だから韓国政府がGSOMIAを破棄しても日本は困らない。

アメリカ政府の真意を理解しない韓国

韓国はGSOMIAの真の意味を理解していない。これまで情報共有は在韓米軍を中継している。何故なら有事になれば、在韓米軍が司令官になり韓国軍と自衛隊を指揮下に置く。在韓米軍が韓国軍と自衛隊から情報を受け取り、韓国軍と自衛隊に情報と命令を与える。だから本来は、GSOMIAは不要。

情報共有が目的ならば、既存の在韓米軍の中継で良い。アメリカ国防総省としても、韓国と日本を指揮下に置くには都合が良い。だがアメリカ政府はGSOMIAを認め、韓国の条約破棄に失望を明言した。

在韓米軍が撤退すれば情報共有は韓国と日本で必要になる。だからアメリカ政府は、韓国と日本で情報を共有するGSOMIAを結ばせた。アメリカ政府の視点では、韓国と日本でアメリカの代わりに戦争させるためだ。

在韓米軍撤退の布石を潰した

アメリカ政府は在韓米軍撤退の布石を行っている最中。在韓米軍撤退はアメリカの国防線が朝鮮半島の38度線から台湾・日本に移動する。これはアメリカが想定する戦場が朝鮮半島から台湾・日本に移動する。

冷戦期のアメリカは作戦計画の基本方針を定めた。冷戦期の作戦計画だとしても、基本方針は大きく変わらないから参考になる。これを在韓米軍撤退と組み合わせれば、アメリカ政府の基本方針が前方戦域の通常戦争から覇権戦域の局地戦争に変化したことを推測できる。

国土戦域の戦争    =戦略核戦争(米ソ全面戦争)であり米国が戦う。

前方戦域の核戦争  =戦域核戦で核保有国(米英仏)が連合して対処。

前方戦域の通常戦争=通常戦で連合対処。

覇権戦域[3]の局地戦争 =同盟国が第一次責任、米国は軍事援助

だからアメリカ政府は台湾にF-16V戦闘機66機を供与。そして韓国と日本にGSOMIAを結ばせた。これらは対北朝鮮対策だけではない。アメリカ政府は韓国・台湾・日本を使い、中国・ロシア・北朝鮮に対処させることが目的。

アメリカの失望

GSOMIAが在韓米軍撤退の布石ならば、韓国政府はアメリカの戦略を破砕。だからアメリカは失望を明言する。韓国政府は日本に対して報復になると思い込んだ様だが、日本は何も困らない。それどころか韓国政府はアメリカ政府の戦略を破砕。行き着く先はアメリカ政府の怒りと報復だ。

 

 

[1] 戦後の1951年までの日本・現在では韓国(指揮権をアメリカ軍が持つ)・パラオ

[2] 日本・イタリア・オランダなど大半の国

[3] 同盟国が覇権国に巻き込まれた戦場

 


執筆者:上岡 龍次(Ryuji Ueoka)

プロフィール:戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。

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