上海自由貿易試験区、「企業の撤退で抜け殻に」=ロイター通信

2019/09/05
更新: 2019/09/05

2013年9月末、中国初の自由貿易試験区は上海で設立された。6年経った今、米中貿易戦の激化と中国経済失速で、企業が相次いで撤退し、試験区が抜け殻になっている。ロイター通信が2日報道した。

報道によると、上海自由貿易試験区の中にある「上海外高橋保税区」では、「オフィスの中に人影は全くなく、ガラスの扉は南京錠で施錠されている。中にある椅子などは雑乱に置かれている。かつて、人で混みあっていた食堂も今や、次々と店じまいした。使用された割り箸やプラスチック製の容器が地面に散乱している」という。

ロイター通信は、上海自由貿易実験区の現状をもたらした主因は、貿易戦や中国経済情勢の悪化ではなく、中国当局による資本規制の強化にあるとの見方を示した。中国当局は、試験区を設置した当時、外資誘致のために、「区内と海外のモノやカネの流れを自由化する」と金融分野の開放、投資規制の緩和などを約束した。実際には、当局は逆のことを実施している。

報道は、試験区にある銀行で働く銀行員の話を引用した。これによると、当局の資本規制および管理措置の下で、「カネは全く自由に流れていない」という。「試験区内にある数百の銀行口座は、ゾンビ口座になっている」と話す銀行員がいた。

「試験区内にある上海華瑞銀行の業務は低迷している。招商銀行の支店は区内業務を担当するチームを解散した。区内に4つの支店を持つ寧波銀行は一般的な業務しか行っていない」

一方、中国当局は8月26日、山東省、江蘇省、河北省、黒龍江省など6の省で新たに自由貿易試験区を設けると発表した。米・サウスカロライナ大学の謝田教授は、景気テコ入れ政策の一環だと指摘した。「当局は内陸と東北部に企業を呼び込もうとしている。試験区の設置を通して、停滞した各地域の景気を刺激し、米中貿易戦による経済的な苦境から脱出させたい」

ただ、時事評論家の唐靖遠氏は「国際社会は、中国当局が市場開放や金融開放を再開したと勘違いするだろう。これが当局の狙いだ」と懸念を示した。

(翻訳編集・張哲)

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