大紀元時報

米中の第1段階合意、トランプ氏の策略と中国の負け(上)=程暁農氏

2020年01月12日 18時39分
2019年10月2日、ホワイトハウスで記者会見に出席したトランプ米大統領(亦平/大紀元)
2019年10月2日、ホワイトハウスで記者会見に出席したトランプ米大統領(亦平/大紀元)

米中双方はこのほど、通商交渉が第1段階の原則合意に達したと発表した。多くのメディアは、合意文書の詳細内容や、追加関税の引き下げ、中国側の米農産物購入拡大などという表面的な事象で、両国の勝ち負けを判断している。実に、今回の交渉過程は波乱万丈といっても過言ではない。交渉の結果は「何%の関税」に現れるのではない。中国という「世界の工場」がどれほどの打撃を受け入れられるかを見極めなければならない。筆者は、米中貿易交渉について、「トランプ氏にとって、中国を攻撃しないことが攻撃であり、罰を与えないことが実は罰である。中国共産党にとっては勝つことがまさに負けることを意味する」と心得る。

中国側の翻意

米中通商協議の起因は二つある。一つ目は、中国共産党政権が長い間、米企業の知的財産権を広範囲に侵害し、技術情報や経済的利益を盗んできたことだ。二つ目は、中国当局は、長年、輸出企業に対して補助金を提供し、輸入を制限して、莫大な対米貿易黒字を得たこと。2018年3月22日、トランプ米大統領は、中国製品に対して追加関税措置の実施を発表した後、米中貿易戦が始まった。同年5月以降、米中両国は通商交渉を始めた。

ウィキペディアには、米中通商協議に関する情報が詳述されている。実に、今までの交渉が紆余曲折した理由は、米国ではなく、中国側にある。交渉の過程において、米側の立場と要求に大きな変化はなかった。しかし、中国側がコロコロと態度を変えたことで、交渉が中断したり、進捗が遅くなったりした。筆者は、2018年5月~2019年12月までの米中交渉を、中国側の態度の変化で7段階に分けた。

第1段階、中国側が協力を示す。2018年5月から、双方は閣僚級の会議を開始した。中国側は、米企業の知的財産権への侵害と対米貿易黒字を認め、解決に向けて協議をすると示した。約1年の交渉を経て、2019年4月下旬に米中は合意した。米政府関係者などによれば、双方は当時、合意文書の句読点まで決めていたという。

第2段階、中国側が翻意。2019年5月、中国側が突如、1年間の話し合いで約束した内容を覆したが、それでも、交渉を続ける意向を示した。

第3段階、中国側が引き延ばしの戦略を実行。2019年5~9月上旬まで、中国官製メディアは堂々と、当局が米中交渉を遅らせる戦略を採っていると報じた。協議は膠着状態となった。

第4段階、中国当局は交渉の段階化を要求。昨年9月中旬、中国共産党は貿易問題と知的財産権を分けて交渉を進めることを求め始めた。すなわち、第1段階は貿易問題を、第2段階では知的財産権を話し合うということだ。米側はこの要求を認め、この二つの問題をいっぺんに協議するとの方向性を変更した。

第5段階、中国側が再び譲歩を示す。同年10月、米中両国は第1段階の合意に達したと発表した。

第6段階、中国当局がまたも気移りした。同年11月に入ると、中国当局は知的財産権の侵害を否定しただけでなく、米政府に対して、直ちに関税措置を撤廃するよう求めた。米が同意しなければ、交渉を中断すると主張した。中国当局の姿勢はまた1年半前の交渉開始前に戻った。今までの協議は無駄になったといえる。これに対して、トランプ大統領は米中通商協議の合意について、「今年11月の大統領選後まで待っても良い」と発言。

第7段階、中国当局の3回目の妥協。昨年12月上旬、中国当局の態度は同年4月の当時に戻り、米国と第1段階の原則合意に達した。知的財産権問題は第2段階の交渉に持ち越した。中国官製メディアの海外版は12月14日の評論記事で、「適切な譲歩が必要だ」と主張した。

「社交ダンスを踊る」中国

過去1年間、中国当局は交渉のテーブルの前で、前と後ろ、右と左とステップを踏み、フォックス・トロット(社交ダンスの1種)を踊っているようだった。それぞれのステップに、中国当局の狙いと考量があった。筆者は、官製メディアの報道を引用して、米中通商協商において最近の中国当局の立場の変化をまとめた。

中国官製メディア「多維新聞網」は昨年12月3日の記事で、最近の米中貿易交渉における両国の対立は主に二つあるとの見方を示した。一つ目は、関税をめぐる対立で、もう一つ目は米農産物購入金額をめぐる対立だという。同メディアは、習近平国家主席が同年11月22日、北京で「ブルームバーグ新経済フォーラム」に出席した米国関係者らと会談した際の発言を強調した。習氏は「中国は、相互尊重と平等という基本の上に立って、米国とともに第1段階の貿易合意に向けて取り組んでいく」と述べた。

「多維新聞網」はまた、トランプ大統領が同日の11月22日、米メディアに対して、習近平氏の発言に対するコメントを引用した。大統領は、習近平氏の言った「平等」という言葉が気に入らないとし、「習近平主席に、平等な条件での取引はあり得ないと言った」と明らかにした。理由は「交渉が始まった時点では、米国は床に、中国は天井にいたのだから」という。

この「天地の差」について説明しよう。いわゆる「床」というのは、米企業が受けてきた知的財産権侵害と米の莫大な対中貿易赤字などを指す。「天井」とは、中国当局が「国家主権の平等」と言いながら、米国の言い分を聞こうとせず、事実を話そうとしない振る舞いを比喩する。つまり、北京は、巨額な対中貿易赤字と知的財産権侵害という問題を解決するつもりが全くなく(すなわちトランプ氏が言った「天井」)、それでも米側と「平等」に交渉するという狙いだった。

これに対して、トランプ氏は、中国当局がその体制と政策を利用して、長い間、米国に損失を与え、米国と米企業を「不平等に」扱ってきたと認識する。したがって、トランプ政権は貿易交渉を通じて、知的財産権侵害と対中貿易赤字という最大の課題を解決し、「平等」な立場を取り戻そうとした。中国当局に「不平等」に扱われることが、トランプ氏が言う「床」であろう。

「多維新聞網」のこの記事は巧みにトランプ氏の発言を引用したことで、中国当局の強気な態度を突出させた。中国当局は根本的に、知的財産権侵害と対中貿易赤字に「問題はない」と考えている。当局は、「国家主権の平等」という抽象的な概念を持ち出して、現実に起きている知的財産権侵害と対中貿易赤字問題をすり替えようとする狙いで、米中通商協議で言及した経済的・司法的な内容を完全に否定した。

北京は突然「天井」から「床」に

「多維新聞網」の記事掲載から10日後、フォックス・トロットを踊り続けた北京は突然、「天井」から「床」に下りてきた。

昨年12月3~9日までの7日間に、米中双方の直接的な話し合いはなかった。その後の3日間に、米国国内で政治的な動きがあった。12月10日、民主党議員が多数占める下院は、トランプ大統領に対して、「職権乱用と議会妨害」との弾劾条項を発表し、近く下院の司法委員会で審議するとした。

大統領への弾劾手続きが失敗に終わると中国側は予測したのか、12月11日、中国当局は突如、抵抗をやめ、交渉を先延ばしにしないと方向転換した。3日後、双方は原則合意で一致した。

中国当局には、知的財産権侵害と経済・貿易問題において弁解の余地はない。知的財産権侵害は民事訴訟に関わる事案で、技術窃盗は、刑事犯罪だ。米連邦捜査局(FBI)は今、このような中国が関与した技術窃盗事件を1000件以上捜査している。いっぽう、対中貿易赤字は20年以上続いている。(米の)税務当局と各企業の関係者なら、誰でも中国の輸出補助金政策を知っている。メディアも報道している。したがって、事実の前に中国は言い訳することができない。にもかかわらず、中国当局は一貫して、交渉中にこれらの問題を避け、理不尽な要求を繰り返した。引き延ばしの戦略では、政治カードでトランプ氏を政治上で打倒しようと狙っていた。

政治カードの具体的なやり方は、昨年上半期に米農産物の対中輸出を禁止し、米国中西部の農家に打撃を与えることだった。農家の多くはトランプ氏の支持者である。中国側は、この手で米国大統領選挙に介入しようとした。しかし、この政治カードが徒労に終わった後、米の民主党候補者に希望を託した。ただ、中国当局は、民主党候補者の左傾化に不満を強め、民主党の敗北を予見した。したがって、米下院のトランプ氏への弾劾調査に期待感を抱き始めた。

つまり、中国当局は米中通商協議において、常にその場しのぎの対応を取りながら、政治的な打算をしていたということだ。その中で、民主党による弾劾調査では、トランプ氏の勢いが弱まることがないのを見て、中国当局は「天井」から「床」に降りると決めたのだろう。

つづく

(文・程暁農/翻訳・張哲)

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