「人権国家の標準装備」日本版マグニツキー法成立目指す超党派議連が発足へ

2021/01/30
更新: 2021/01/30

日本の超党派国会議員は1月26日、日本版マグニツキー法となる人権侵害制裁法の成立を目指す議員連盟発足を発表した。同日開かれた準備会合の公開資料によれば、これまで北朝鮮による拉致問題や国連安保理の決定に限り施行してきた制裁の枠組みを広げ、「人権国家」の立ち位置を明確にする。

発起人の一人である長島昭久議員は、「香港ウイグル情勢を念頭に、世界のあらゆる人権侵害に対して、我が国が国際社会と連携して、必要な制裁措置を講じるための法的枠組みの構築を目指す」とSNSに書いた。自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、希望の党からの10議員が発起人となり、さらなる議員の参加を呼びかけた。

日本におけるマグニツキー法制定は、国際的な対中政策列国議会連盟(IPAC)の日本版であるJPACが進めていた。JPAC共同代表の中谷元氏、山尾志桜里氏の2議員もこの発起人に含まれる。JPACが対中問題に注力するのに対し、今回は、中国のみならず他国の人権侵害も制裁対象に含めるとした。

G7加盟国で日本は唯一、人権侵害に対する制裁法に同様の法律がない。公開された資料で、超党派議員は制裁法について「人権国家の標準装備」と表現し、成立に向け意思表明している。2月初旬に第1回総会を開催する予定。

発足に関する声明には次のように書かれている。「我が国の法制度は北朝鮮による拉致問題のように、自国民が被害者である場合や、国連安保理決議がある場合など、極めて限定的な場合でしか制裁に踏み切ることができない。日本も人権侵害に対する制裁の仕組みを整備することで、いかなる国家・地域における人権弾圧も放置しないという人権国家としての立ち位置を明確にする必要がある」

グローバルマグニツキー法は国や地域を問わず、深刻な人権侵害を行った個人や団体に対して、資産凍結や入国制限などを可能にする制裁法。米国をはじめカナダ、英国、バルト3国で成立している。欧州連合(EU)でも採択され、オーストラリアでも制定の動きがある。

国際腐敗防止デーと世界人権デーに合わせて、米国務省は2020年12月10日、腐敗と人権侵害に関わった外国政府の現職と前職の高官17人に制裁を科すと発表した。17人の中に、中国伝統気功グループ、法輪功の学習者に対する中国当局の弾圧政策に関与した福建省厦門市の地方警察幹部が含まれる。

英国では2020年7月、マグニツキー法が47人に対して発動された。北朝鮮の収容所における拷問、殺人に関わる2組織と、サウジアラビアの記者ジャマル・カショギ氏の殺害に関わった容疑者、ミャンマーの少数民族ロヒンギャ弾圧を率いた2将軍など。

米国および世界各国に人権制裁法の推進や成立を呼びかける資産家ビル・ブラウダー氏は、他の国々が米国、英国に追随するよう呼びかけている。マグニツキー法の由来は、同氏の担当弁護士で政治弾圧を受け獄中死したセルゲイ・マグニツキー氏の名前からきている。

(佐渡道世)

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