大紀元時報

中国の「海南和牛」、日本人専門家が品種改良に技術支援か 20年前から

2021年02月06日 20時00分
飛騨高山で和牛を飼育している牧場。イメージ写真。2018年10月撮影(MARTIN BUREAU/AFP via Getty Images)
飛騨高山で和牛を飼育している牧場。イメージ写真。2018年10月撮影(MARTIN BUREAU/AFP via Getty Images)

2019年3月、和牛の受精卵と精液を無断で中国に持ち出そうとして、大阪府内に住む2人の男が、大阪府警生活環境課などに家畜伝染病予防法違反容疑などで逮捕された。この2人の男は中国・海南省の海南島の牧場関係者から依頼を受け、受精卵などを流出させたことが分かっているが、この流出事件の背後には、1990年代以降、長年にわたる中国政府の「良質な海南和牛」を作り出す計画があり、大阪の事件もその一環であった可能性が高いことが、大紀元の調べで浮き彫りになってきた。

大阪の事件は、飲食店経営、前田裕介容疑者(51)=大阪府藤井寺市林=と、無職、小倉利紀容疑者(64)=大阪市住吉区長居=が共謀し、2018年6月29日、検疫が義務付けられているにもかかわらず、検疫を受けずに、小倉容疑者が大阪発中国・上海行きフェリー内に、凍結した和牛の受精卵や精液を注入したストローをバッグに隠し入れて積み込み、輸出したというもの。

万全と思われた「密輸出」は思わぬところから発覚してしまう。18年7月1日、小倉容疑者が入国しようとした際、中国当局から受精卵の持ち込みをなぜか拒否されてしまったのだ。

小倉容疑者が持っていた保冷容器の中には、478本ものストローがあり、その中には和牛の精液や受精卵が入っていたことが分かっている。

迂闊にも小倉容疑者は帰国した後、農水省動物検疫所に自ら申告している。

かなり奇跡的な顛末で、日本の「和牛密輸出」ビジネスが発覚した形だが、大阪府警は、発覚までに前田容疑者と林容疑者が少なくとも4回、密輸出を成功させ、依頼をした中国・海南島の牧場関係者ら中国側に渡っていたことを突き止めている。

運び役の小倉容疑者は農水省や大阪府警の調べに「前田に頼まれた。持ち出しが違法だとは知らなかった」と話し、前田容疑者は「中国人に頼まれた」と供述している。受精卵はもともとは、徳島県の畜産農家が数百万円で売ったものとみられており、日本が誇る「和牛」ブランドが、知らぬ間に中国側の依頼を受けた日本人ブローカーの手で海外に持ち出され、「海南和牛」ブランドに成り代わっていた可能性が極めて高いことを示す事件だといえるだろう。

中国最南端の亜熱帯に位置する海南島の政府は、1990年代から、良質な「中国牛」ブランドを生み出す計画を開始し、その多くに日本人の専門家が関与していることが、中国で発行されている新聞などを分析した大紀元の調査で分かった。

中国政府が日本の和牛品種に注目していたのは遅くとも2001年ごろとみられる。

中国・海南省で発行され、中国共産党海南省委員会の機関紙にその起源をもつ「海南日報」は、2013年12月17日付で以下のような報道をしている。

「海南茂源農牧業有限会社(現・海島和牛生物科学技術有限会社)は、2001年に日本から純黒毛和牛の胚胎を導入し、10年来、省の外事部門が各部門の調整役として同社の人材誘致をバックアップしてきた。同社は、これまで日本から延べ60人の専門家を招き、現場で技術指導を行い、和牛の品種改良の技術的な問題を解決した」

海南省の外事部門が音頭を取って、それに多くの日本人技術者が「貢献」していることを堂々と報じているのも驚きだが、いわば技術の「剽窃」に多くの日本人が関与している事実を示しているのも注目に値する。

「日本人技術者」がどのような企業に所属し、どのような人物なのか、言及はないが、海南日報は「同社はその後も改良を重ね、『神坂牛』や『海島和牛』などの肉用牛を誕生させた」と続けている。海南省澄邁県にある海島和牛生物科学技術有限会社傘下の和牛繁殖基地では5000頭を超す「和牛」が飼育され、今や中国最大の和牛の種牛生産企業となり、中国の様々な場所に優良な精子が供給されているものとみられる。

一方、海島和牛生物科学技術有限会社は自社ホームページ(HP)に日本獣医師会と技術提携している、と明記している。

その日本獣医師会の五十嵐幸夫会長(当時)と金川弘司副会長(当時)は2004年、中国・海南島の海口市で中国海南省政府が主催した中国創立55周年の記念式典に招かれ、記念メダルと感謝盾を贈られている。

日本獣医師会の会報によると、受章理由は、五十嵐会長は前述の「茂源農牧場有限会社」の創設指導を行い、金川副会長は主に胚移植技術の導入に尽力し、家畜の人工授精・胚移植・飼養管理技術などを実現させたこととしている。

社団法人日中農林水産交流協会の会長でも務めていた五十嵐会長は「(茂源農牧場が)今では150頭規模の中国黄牛(肉用種)を主体とした立派な牧場に発展した」功労者であると紹介され、しかも「人工授精・胚移植技術が海南省に導入されたのは、今回が初めて」とまで記されている。

何のことはない。日本の和牛繁殖のための技術が、親中派の獣医師によって中国に移植され、その結果、和牛が中国の海南牛に化けているということではないか。

今や海南省には4つの和牛牧場があり、6000戸もの農家が加入する和牛養殖協同組合がある。朝日新聞2019年5月19日付の記事では、記者が「中国のハワイ」こと海南島で「海南牛」を注文したところ、出てきた肉は和牛と同じく霜降り肉で和牛にも劣らぬ味わいであることをレポートしている。海南省政府は年間5万頭の海南牛を販売する目標を掲げていたというから、これでは日本の和牛市場を崩壊させかねないほどの勢いだ。

「日中友好のため」と日本獣医師会が行った技術協力。和牛と同等の「中国産和牛」として売り出され、日本の和牛市場が崩壊しかねないほどの事態に至ることを当時、五十嵐会長や金川副会長は想像していただろうか。

日本獣医師会は大紀元の取材に対し「中国と技術交流の協定を結んだことはない。専門家を派遣したこともない」と中国側への技術提供を否定する一方、「五十嵐元会長が日中農林水産交流協会の会長を務めていた関係で、交流協会から派遣した可能性はある」と話した。

 日中農林水産交流協会は取材に対し、専門家の派遣を認め「中国側から黒毛和牛の提供を持ち掛けられたが、法律に触れる恐れがあったため、断った。その代わりに法律に違反しない程度の技術支援を続けてきた。和牛の入手ルートについては『聞かない。言わない』という条件付きだった」と話した。

(三枝玄太郎、李沐恩)

 

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