ミャンマーに対する国際社会の取り組み、ロシアと中国が阻害=EU上級代表

2021/04/23
更新: 2021/04/23

2021年4月中旬、欧州連合のジョセップ・ボレル(Josep Borrell)外務・安全保障政策上級代表(外相に相当)は、中国とロシアがミャンマーの軍事クーデターに対する国際社会の統合的な取り組みを阻害していると批判し、ミャンマーの民主主義が復活すれば欧州連合はより多くの経済的インセンティブを提供できると述べた。
ボレル外務・安全保障政策上級代表が投稿したブログ記事には、「国連安全保障理事会(UNSC)によるミャンマーへの武器禁輸措置に反対するなどロシアと中国が国際的な取り組みを阻害しているのは明白である」と記されている。
同外務・安全保障政策上級代表は27か国の加盟国から成る欧州連合を代表して、「ミャンマーに対する地政学的な競合により同国への対応で共通の立場を形成することが困難になっているが、諸国はこれに取り組む責務がある」と訴えている。
政治囚支援協会(AAPP)の報告によると、2021年2月1日、民主的な選挙により正式に発足したアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)政権がミャンマー軍のクーデターにより転覆されて以来、ミャンマー治安部隊により児童46人を含む700人超の非武装の民間人抗議者等が殺害された。4月9日にヤンゴン近郊のバゴー地域では国軍の銃撃により計82人が死亡した。活動家団体はここを「殺戮の場」と表現している。同外務・安全保障政策上級代表は、「軍隊が自国民を虐殺する状況に国際社会は恐怖心を募らせている」と述べている。
中国とロシアはそれぞれ第1位と第2位の対ミャンマー武器輸出国であり、ミャンマー国軍と深い関係がある。
4月上旬に国連安全保障理事会は国軍に拘束されているアウンサンスーチー元国家顧問等の釈放を要請したものの、声明にはクーデターを非難する文言は含まれなかった。
欧州連合はミャンマー国軍に関連する個人と同国軍が所有する企業に対する新たな制裁措置を検討している。この3月に欧州連合はすでに国軍総司令官を含むクーデター関連人物11人に対する一連の制裁措置を課すことで合意していた。
同外務・安全保障政策上級代表の発言によれば、国の経済的影響力は比較的小さいもののミャンマーに民主主義が回復すれば、欧州連合は持続可能な開発に向けた貿易や投資の増加などミャンマーとの経済的関係を強化する取り組みを提案する構えである。 2019年の欧州連合の対ミャンマー直接投資が計700億円相当(7億米ドル)であるのに対し、中国はミャンマーに1兆9000億円相当(190億米ドル)を投資している。
国民民主連盟(NLD)のアウンサンスーチー国家顧問が圧勝した2020年11月の連邦議会総選挙が不正であると主張した国軍はこれをクーデターの理由に挙げているが、当時の選挙管理委員会はこの国軍の主張を却下している。
犠牲者の遺族を思いやるため、ミャンマーの抗議団体は4月中旬に水掛け祭などが行われる重要な祭日の「ティンジャン(正月)」祝賀行事のボイコットを呼びかけた。
ティンジャンに先立ち、ヤンゴンに所在する在ミャンマー米国大使館は、「軍事政権が民間人に対して致命的な武器を使用したと伝えられているバゴーやミャンマー各地で理不尽に亡くなられた方々を悼む」とツイートしている。 同大使館はまた、「軍事政権には危機を解決する術がある。まず暴力と攻撃を停止することから始める必要がある」と続けている。
(Indo-Pacific Defence Forum)

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