大紀元時報

アングル:中南米で米国ワクチンツアーが人気、航空運賃も急騰

2021年5月17日 13時18分
メキシコからアルゼンチンに至るまで、ラテンアメリカ諸国からは何千人もの人々が米国行きの航空券を予約している。自国におけるワクチン接種計画が難航しているため、米国のワクチン接種体制を利用しようという考えだ。写真はテキサス州エルパソのワクチン接種会場で7日撮影(2021年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
メキシコからアルゼンチンに至るまで、ラテンアメリカ諸国からは何千人もの人々が米国行きの航空券を予約している。自国におけるワクチン接種計画が難航しているため、米国のワクチン接種体制を利用しようという考えだ。写真はテキサス州エルパソのワクチン接種会場で7日撮影(2021年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

[メキシコ市/リマ 11日 ロイター] - 「新型コロナウイルスのワクチンを打ちたいですか?米国のビザをお持ちなら、お任せください」──旅行代理店の広告には、そう書かれていた。ワクチン接種を受けるために米国に渡航するというメキシコ国民向けのツアー商品である。

近くはメキシコ、遠くはアルゼンチンに至るまで、ラテンアメリカ諸国からは何千人もの人々が米国行きの航空券を予約している。自国におけるワクチン接種計画が難航しているため、世界で最も成功した部類に入る米国のワクチン接種体制を利用しようという考えだ。

ラテンアメリカは、今回のパンデミック(世界的大流行)による最悪の影響を受けた地域の1つである。死者数は今月にも100万人を超える勢いであり、ワクチン接種の順番をこれ以上待たされるのはごめんだという人は多い。

独力で米国に向かう人もいるが、それ以外は旅行代理店によるツアーを利用する。旅行代理店側では、ワクチン接種の予約、フライト、ホテル宿泊の手配、さらには市内観光やショッピングの手配といったオプションまで組み合わせたツアーパッケージを提供している。

グロリア・サンチェスさん(66)と夫のアンヘル・メネンデスさん(69)は4月下旬にラスベガスを訪れ、1回接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンを打ってもらった。

メキシコに戻ったサンチェスさんは、「この国の公衆衛生サービスは信用できない」と語る。「米国に行っていなければ、まだワクチン接種は受けていなかっただろう」

サンチェスさんによれば、夫妻が参加したのはメキシコ市の旅行代理店が企画したツアーで、米国側では現地ラスベガスの提携業者が対応してくれた。

米国側の提携業者はワクチン接種の予約を手配し、彼らをラスベガスのコンベンションセンターまで送り届けた。2人はそこでメキシコのパスポートを提示し、接種を受けた。

「バカンスにしてしまうつもりで、丸1週間滞在し、死ぬほど歩き回り、本当に贅沢だけど美味しい料理を頂き、ショッピングも少し楽しんだ」とサンチェスさんは言う。

旅行代理店RSCトラベルワールドを経営するレイ・サンチェス氏によれば、ワクチン接種ツアーの需要が盛り上がるなかで、メキシコから米国への航空運賃は3月中旬以来30ー40%上昇した。

同氏は「メキシコからは数千人、他のラテンアメリカ諸国からも数千人が、ワクチン接種のために米国を訪れている」と語る。人気の目的地は、ヒューストン、ダラス、マイアミ、ラスベガスだという。

ワクチン接種のために米国を訪れたラテンアメリカ諸国民の数に関する公式なデータは見当たらなかった。旅行者が渡航理由としてワクチン接種を挙げることは一般的ではない。

だが米国の都市は、資金繰りに苦しむホテル、レストランやその他のサービス産業が切望していたビジネスをもたらすワクチン接種ツアーのブームに飛びついた。

ニューヨーク市政府は5月6日、ツイッターに「ニューヨークへようこそ。ワクチンがあなたを待っています。当市を象徴する名所で、J&J製ワクチンを接種いたします」と投稿した。

在ペルー米国大使館は最近のツイッターへの投稿で、ペルー住民に対し、ワクチン接種を含め医学的処置のために米国を訪問することは可能だとアドバイスしている。

米国への観光ビザで渡航したラテンアメリカ諸国の住民にロイターが取材したところ、自国の身分証明書があれば接種を受けることができたと話した。

はるか南のアルゼンチンでも、旅行代理店がワクチン接種ツアーを販売している。

ブエノスアイレスで見られる広告では、マイアミでワクチン接種を受けるための推定費用が詳しく示されている。航空運賃が2000ドル(約22万円)、1週間のホテル滞在費が550ドル、食費350ドル、レンタカー500ドル、ワクチン接種は無料。合計で3400ドルだ。

<自国では早期接種の見込みなし>

当初、ワクチン接種ツアーを希望するのはラテンアメリカ諸国の富裕層が中心だったが、現在では、それほど裕福ではない人々の予約も増えつつある。多くの人にとっては、長時間に及ぶフライトの費用だけでも一大事である。

リマの自動車用品店の従業員は「6月にカリフォルニアに行くためにお金を集めている」と話す。「国内の状況を考えると、近いうちにワクチン接種を受けられる見込みはまったくない」

前出のサンチェス氏によれば、米国へのワクチン接種ツアーの参加理由として一般的に挙げられるのは、大半のラテンアメリカ諸国でワクチン接種が遅れていることだという。

国内にワクチン製造のためのインフラがほとんどまったく無いため、ラテンアメリカでのワクチン接種計画においては、ワクチン供給の遅れや不足が壁となっている。米疾病対策センター(CDC)と「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国はすでに2億6200万回近いワクチン接種を行った。これは、合計人口では米国の約2倍に当たるラテンアメリカ全体の接種回数の約2.3倍となっている。

ラテンアメリカ諸国におけるワクチン接種計画への不信感も1つの要因だ、とサンチェス氏は指摘する。

当局により大量の偽ワクチンが押収されたとの報道や、2回目の接種の時期が来たときにワクチンが不足しているといった点も、ラテンアメリカ諸国の人々が挙げる不信感の理由だ。

ワクチン接種ツアーは米国向け航空旅客が急増する契機となった。ロンドンに拠点を置く航空コンサルタント会社MIDASアビエーションのレネ・アーマス・マエズ民間航空担当副社長は、航空各社が増便を進めているものの、出発日時の迫った便の料金は1月に比べ2倍、あるいは3倍にも上昇していると述べた。

ラテンアメリカ地域最大の航空会社であるLATAM(ラタム)航空グループは6日、新型コロナウイルスに対するワクチン接種のため米国に向かおうとするラテンアメリカ諸国の人々による需要が増大しているとした。

メキシコ航空大手アエロメヒコによると、メキシコ・米国間の航空旅客数は、3月から4月にかけて35%増加した。

またアメリカン航空は、ここ数カ月、ラテンアメリカ各地からの需要が急増しており、特にコロンビア、エクアドル、メキシコ方面を増便していると明らかにした。

「これらの市場の多くにおける需要増大に対し、運航頻度の増加、新ルートの追加、ワイドボディ機の利用などで対応し、結果として輸送能力が増大している」と説明した。

ジュリアナ・コラメオさん(29)にとって、ワクチン接種を受けるチャンスが得られたことは救いになった。メキシコ市に住むコラメオさんとボーイフレンドは、2人とも2020年に新型コロナに感染した。

2人は4月にニューヨーク市を訪れ、薬局でワクチン接種を受けた。

「ワクチン接種を受けて、泣きたい気分だった。ホッとして、希望が生まれた」とコラメオさんは言う。「米国で接種を受けられてとても嬉しい。もっと多くの人が(こういう形で)接種できればいいのに」

(Anthony Esposito記者、Cassandra Garrison記者、Marco Aquino記者)

(翻訳:エァクレーレン)

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