大紀元時報

「ハイブリッド米の父」袁隆平氏が死去で再び注目された「大飢饉」の歴史 

2021年5月29日 19時00分
22日に死去した中国の水稲研究者、袁隆平氏(Guang Niu/Getty Images)
22日に死去した中国の水稲研究者、袁隆平氏(Guang Niu/Getty Images)

中国の水稲研究の第一人者で「ハイブリッド米の父」と称される袁隆平(ユエン・ロンピン)氏が22日、湖南省長沙の病院で死去した。90歳だった。中国の各メディアは同氏の死去を一斉に取り上げ、「中国人を満腹にさせた英雄」「飢饉問題を解決した世界の英雄」と最大級の賛辞を送った。

一方、同氏の水稲研究を始めたきっかけは、中国当局がタブー視する大飢饉だった。毛沢東の失政により1959~61年にかけて数千万人が餓死したこの大飢饉は、袁氏の死去で再び注目されるようになった。この歴史に言及したり、同氏を「神格化」したりした共産党の宣伝に反発した64のSNS微博アカウントが当局によって閉鎖された。

50年代「大躍進運動」、餓死者5千万人=中国食糧専門第一人者

袁氏は1930年に北京で生まれ、重慶市にある西南農学院を卒業後、湖南省の農学校で教師を務めた。毛沢東が主導した「大躍進」運動(58~60年)の失敗で、中国有数の米どころである湖南省でも多くの餓死者が出たのを目の当たりにし、水稲の研究開発を決意した。9年間の試行錯誤を経て、73年に従来の水稲品種より20%収穫量が多いハイブリッド米の品種開発に成功し、東南アジアなどで作付けした。

袁氏は生前、複数回にわたり大飢饉の惨状に言及した。2009年、地方紙「広州日報」のインタビューで、「大躍進政策で生態が破壊され、1959年に大干ばつに見舞われ、農作物はほぼ全滅した。4、5千万人が餓死した。道端に倒れた5人の遺体を目撃した」と述懐した。「草や木の根っこ、生きるために人々は手当たり次第に何でも口に入れた。もう二度と餓死者を出したくない」と飢饉問題の解決に身を投じる決意をしたという。

さらに大飢饉は、幹部らが農産物の収穫量を過大に報告したことが原因だとインタビューで言及した。

当時、幹部らは大躍進運動中に横行する「浮誇風」(業績の粉飾)の煽りを受け、競ってコメの産量をオーバーに報告していた。畝(6.667アール)あたり数百斤(1斤は0.6キロ)の収穫を1万斤へ、場合によって20数万斤へとエスカレートしていた。

この体験談は同氏の死去によって再び話題となった。しかしこの歴史は、今年10月に結党100周年を控える共産党のメンツを潰す歴史でもある。共産党は「大飢饉」が政策の誤りによる人災ではなく、「自然災害」によるものだと宣伝してきた。習近平主席も2013年、(1980年代から始まった)改革開放後の歴史をもって改革開放前の歴史を否定すべきではないと発言し、歴史を再評価する動きを牽制した。

一部のネットユーザーは「大飢饉が自然災害によるものだという主張をいまだに押し通そうとするやり方は受け入れられない」と同氏を追悼する記事のコメント欄に書き込んだ。

あるネットユーザーは「コメの畝あたりの収穫量が3万6900斤に達した」という1959年の人民日報の報道を引用し、袁氏の最大の功績はコメの産量が3万斤ではなく、2千斤だと真実を告げたこと、そして、大飢饉中に数千万人が死亡したと発言したことだ」と書き込んだ。

「コメの畝あたりの収穫量が3万6900斤に達した」と人民日報が1959年に報道(パプリックドメイン)

同氏の死去を報じた中国官製メディア「環球時報」の記事は、同氏が道端の餓死者を目撃した日時を共産党が政権を取った1949年以前に改ざんした。

一方、国営新華社通信は袁氏の「全人類への貢献」を讃えるため、半旗を掲げるべきだと提案した。

習近平国家主席も同氏を追悼するコメントで、共産党員だけに使う「同志」という呼称で同氏に言及した。しかし、袁氏は共産党員ではない。

こうした事実の歪曲報道と過分な評価に一部のネットユーザーは嫌気がさした。「欧米に袁氏がいなくても、ちゃんとご飯を食べることができている」「袁氏の研究を否定するつもりはないが、中国人がお腹を満たすことができたのは全部袁氏のおかげだという宣伝に、もううんざりだ」

中国のSNS微博は24日、英雄人物を侮辱したとして64のアカウントを閉鎖したと発表した。北京、広州などの警察当局は同日までに少なとくとも7人のネットユーザーを拘束した。

米拠点の雑誌「北京の春」の胡春編集長は米VOAに対して、官製メディアの度を過ぎた報道は共産党体制の弊害を隠す意図があると指摘した。北京在住の独立派評論家・呉強氏も、メデイアや共産党員らは飢饉問題を解決できたのは共産党のおかげだと、同氏の死を利用して党への忠心を示したと分析した。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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