大紀元時報

「国のために仕えてきたのに…」 引退後生活苦にあえぐ中国のアスリートたち

2021年8月10日 13時47分
地下鉄内で乞食する元体操世界チャンピオンの張尚武さん(微博)
地下鉄内で乞食する元体操世界チャンピオンの張尚武さん(微博)

8日閉幕した東京五輪で、金メダル獲得数は38個と米国に次ぐ2位に付けた中国。2016年のリオデジャネイロ五輪の26個より12個増で、中国メディアは復権を強調。一方、祝賀ムードの裏に、中国の元世界チャンピオンが地下鉄で物乞いする写真がSNS上で拡散され、挙国体制によるメダル量産の問題点は再びクローズアップされた。

話題となったのは、元世界チャンピオンの中国体操選手・張尚武さんの写真。中国代表のユニフォームを着て、手に自分の名前が書かれた看板を持ち、地下鉄の車内で物乞いをしている様子が映っている。

同写真には撮られた時期に関する記述はない。車内の乗客がマスクを着用していないことから判断して、パンデミック以来のものではなさそうだ。

張さんは1983年生まれで、身長151cm。わずか5歳で親元から離され、地元河北省の特別な学校で体操のトレーニングを積み、12歳で国家体操チームに選抜された。2001年に北京で開催された学生の国際競技大会、ユニバーシアードで2つの金メダルを獲得した。

しかし、世界チャンピオンに輝いた翌年に腱を痛め、キャリアに終止符が打たれた。2002年、張さんは国家代表チームから引退した。

体操の訓練に明け暮れたために教育を満足に受けられなかった張さんは引退後、けがのせいで思うように仕事ができず、生活に困窮した。

張さんはかつて北京や天津などの路上で道行く人に倒立などの芸を見せて投げ銭を得て、生計を立てていた。金メダルさえも売ってしまったという。ついには窃盗に手を染め、3回も投獄された。

路上で芸を売る張さんは一度はメディアに取り上げられ、社会に衝撃を与えている。

「練習中にけがをしても、完治しないうちにさらに練習させられた結果、悪化し引退せざるを得なくなったことに恨みをもち自暴自棄になった」とメディアに語っていた。

張さんの物乞い写真を見たネットユーザーは、「もしも彼がけがをしていなかったら、もしもコーチ―が彼にトレーニングを強いていなかったら、もしも社会が彼を大切に扱っていたら…彼は窃盗に走り、今日のようには落ちぶれていなかっただろう。しかし、「もしも」なんてことはない。張さんは、数多くいる引退アスリートの一人にすぎない。彼らは国の栄光のために青春を犠牲にした。それなのに、生活があまりにも悲惨だ。国が引退したアスリートたちの将来の発展をもっと重視してくれることを願ってやまない」と書き残した。

著名アスリートたちの引退後の人生

中国の大手ポータルサイト「捜狐網」の公式WeChatアカウントはかつて、張さんと同様の経歴を持つ他の著名アスリートに関する記事を掲載していた。

例えば、国内の複数の大会でチャンピオンに輝いた柔道選手の莊朵朵さんは、2009年に喘息を患ったために引退した。しかし、引退後は仕事にありつけず、治療費すら払えなかった。

彼女はかつてSNSの微博(ウェイボー)に「私たちは、祖国の栄光のために仕えてきた。しかし、病気になっても誰も見舞いに来てくれない」と投稿していた。

莊さんはまた「競技年齢に達していない時には姉の名前で参加した」ことや、「コーチから怪しい白い粉を飲ませられた」こと、さらには「補助金が取り上げられたり、賞金が差し押さえられたりしたこともあった」などと、業界の暗黒の面を暴いていた。

他にも、中国の元重量挙げ女子の全国チャンピオンの鄒春蘭さんは引退後、生活に困窮し、サウナでアカスリの仕事をしていた。彼女は選手時代に服用させられた男性ホルモンが原因で妊娠できない体になった上、喉仏やヒゲも生えていたという。

1990年アジア競技大会の重量挙げチャンピオンである才力さんは、アジア記録を更新し、40以上の国内タイトルと20以上のアジアタイトルを獲得していた。

しかし、引退後の彼の生活は困窮し、睡眠時無呼吸症候群を患っていた。2003年、才さんは生活のストレスと病の苦痛の中で息を引き取った。彼が亡くなった当時、家には300元(約5千円)しかなかったという。

体育総局副局長「中国のアスリートは世界一幸せ」

中国では勝つために選手育成に公的資金が投入されている。義務教育は二の次で、アスリートたちは幼いころから家庭から離されて、集団生活の中で厳しい練習が課せられ、トレーニング漬けの毎日を送っている。代わりはいくらでもいる中、けがや成績不良による脱落で、例え世界チャンピオンになっても、引退後は社会に適用できない人が少なくない。

何のスキルも持っていない元選手たちは、仕事を見つけられず困窮生活に追い込まれる人は多い。

張尚武さんや鄒春蘭さんの窮状がメディアに取り上げられた後、社会から関心が寄せられ、元アスリートに対する政府の責任を問う声が広がり始めた。

北京の日刊紙・京華時報によれば、中国の国政助言機関である全国政治協商会議(政協)の体育界分科会で、数人の議員から「けがによって引退を余儀なくされた元スポーツ選手に対する社会保障の強化」を望む意見が出された。

しかし、国家体育総局の楊樹安・副局長は、「鄒春蘭さんや張尚武さんは、あくまでも『個別事例』にすぎず、中国のアスリートは、『世界一幸せなアスリート』だ。多くの欧米人アスリートは、中国のアスリートをうらやましがっている」と回答したという。

(翻訳編集・李凌)

 

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