カナダのトロント教育委員会(TDSB)の前で、孔子学院の開校を反対する市民の請願活動(周行/大紀元)

孔子学院は「偽りの中国を広めている」=仏報告書

フランス国防省傘下の軍事学校戦略研究所(IRSEM)はこのほど、「中国(共産党)の影響力」と題する報告書を公表した。その一部は、中国政府が孔子学院を通じて海外でプロパガンダを展開し、中国共産党のイデオロギーを広めていると詳述している。

IRSEMが9月20日に公表した646ページの同報告書は、50人以上の専門家が2年間にわたって完成させたもの。近年、中国政府が海外の華人社会、メディア、外交、経済、政治、教育、文化、シンクタンクに浸透し、世界でその影響力を拡大する手法を書きまとめた。

中国教育部が監督・運営

中国当局は2004年から、世界各国の大学やその他の教育機関に孔子学院を設立している。中国側が講師、教材、運営資金を提供。中国教育部傘下の「国家中国語国際推進指導チーム事務局」(以下、漢弁)が指導・管理する。

孔子学院北京本部理事会の会長は、プロパガンダを担う中共中央統戦部の部長、副総理が兼任。 現職者は孫春蘭副総理。所在国の中国大使館は支援や調整を行う。

中国当局が孔子学院を全面的に統制しているのがうかがえる。

孔子学院は「中国の言語と文化を広める」という主旨を掲げているが、中国共産党のイデオロギーを世界に浸透させるのが本当の目的だ。

大学に設立される「孔子学院」と初等・中等教育機関に設けられる「孔子学堂」の2種類がある。

すべての孔子学院には、中国側の責任者1人と所在国の現地責任者が配置され、講師を含むその他スタッフは全員中国人。孔子学院を設置した外国の大学は、中国当局から不定額の設立支援金と、年間10万~15万米ドル(1米ドル=約111円)の助成金が給付される。一部の情報では、助成金が数百万米ドルに達する場合もある。

講師の採用・トレーニング・配属、教材の提供はすべて漢弁が担う。教材は、中国共産党のイデオロギーが反映されている。 漢弁が2016年末から、「政治と業務の両面において良好な資質を備え、かつ、祖国を愛する」などの条件を講師採用要項に追加した。

2005年にオーストラリアに政治亡命した中国元外交官の陳用林(ちん ようりん)氏の解釈によれば、「良い政治的資質」とは、永遠に中国共産党に忠誠的であることを意味する。

孔子学院のほか、中国当局は2009年から外国人留学生を対象に、中国の大学で中国語や中国文化を学ぶ奨学金を設立した。2009~20年、166カ国の5万人に同奨学金を給付した。

海外で急拡大

2020年5月現在、世界162カ国で541の孔子学院と1170の孔子学堂が開校している。

アジアでは、韓国は孔子学院(24校)の数が最も多い。日本では孔子学院14校、孔子学堂9クラスが設置されている。米国は孔子学院75校、孔子学堂500クラスを運営しており、世界最多となっている。

孔子学院の規模拡大により、中国語を習う人口が急増し、世界中で中国共産党の影響力が広まっている。

フランスには18校ある。 パリ大学の学者、パリ孔子学院の元責任者だったギレス・ギョース(Gilles Guiheux)氏は調査に協力する際、「孔子学院は、偽りの中国のイメージを広めている。 我々はみな責任逃れできない。フランスの一部の関係者もそう考えている」と述べた。

豪州の教育システムへの浸透を図る

孔子学院が所在国の教育システムに入り込んでいる。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州は州教育省内で孔子学院を設立。同学院は、中国語と中国文化コースを開講するため、州内の各学校に年間1万米ドル(約111万円)以上の支援金を給付した(教材などは無料配布)。一部の学校は孔子学堂を強制的に開設した。それに保護者が反発し、「中国の狙いは、ニューサウスウェールズ州の公立学校システムに入り込むことだ」と物議を醸した。同州は2019年12月、このプロジェクトを打ち切った。

一部の外国政府当局者は、同学院がプロパカンダを担う中共中央統一戦線部とつながっていると公言した。

全米学者協会(NAS)は2017年、孔子学院を調査した。授業はチベット、台湾、新疆ウイグル自治区、人権など中国共産党にとって敏感なテーマに触れていない。そのほか、言論・表現の自由の制限、教員の信仰に対する抑圧(特に法輪功の学習)、漢弁やその他の中共政府部門との不透明な関係など、NASはいくつかの問題点をあげた。

孔子学院の実態を明かすドキュメンタリー映画『偽りの儒教』を制作した中国系カナダ人のドリス・リュウ(Doris Liu)氏は、 かつて大紀元の取材でこう語った。

「中国当局は孔子学院の運営スタイルを思慮深く練り上げた。欧米の教育機関の慣行を取り入れたのも、欧米の教育機構に入り込み、中国共産党の影響力を行使するためだ」

世界各地で閉鎖が相次ぐ

近年、中国共産党は孔子学院を利用して対外宣伝を強化し、そのイデオロギーを広める真意は、所在国に認識されつつあり、反対の声が強まっている。

2020年7月時点で、米国、カナダ、フランス、オーストラリア、ドイツなど9つの国・地域で50校の閉校が決まった。

報告書は、対外戦略が強硬になる一方の中国政府にとって、一番の敵は中国共産党自身だと指摘し、 最近、その国際的イメージは著しく悪化し、国内外での影響力が低下しているとみている。

(翻訳編集・叶子)