中国人民解放軍、GPS妨害で旅客機を狙った疑い

2023/04/22
更新: 2023/04/22

中国の軍艦が南シナ海やその他の国際海域で航行システムを妨害し、旅客機の無線通信を妨害している疑惑があり、インド太平洋全域の空と海における人民解放軍の横暴で無謀な行動の数々が明らかになっている。

オーストラリア最大の航空会社カンタスグループは、2023年3月中旬、西太平洋と南シナ海で中国軍を名乗る超短波(VHF)通信局からの干渉を自社機が受けたと警告した。

「さらに、カンタスグループの航空機は、オーストラリアの北西の陸棚上空を航行する軍艦から発信されたと見られるGPS妨害も経験している」と同社は乗務員に伝えている。

その2週間前、国際定期航空操縦士連合会(IFALPA)は、インド洋の東、南シナ海とフィリピン海を含む太平洋地域の軍艦から無線で民間機と軍用機が接触を受けたと発表した。 なかには、軍艦の上空を回避するための航路を提供されるケースもあったという。

3月上旬に発行された国際定期航空操縦士協会連合会の安全情報によると、関係するVHF周波数は主に救難信号とパイロット間の通信用であるという。

カナダを拠点とし、10万人以上のパイロットを代表する同機関はまた、安全に不可欠なグローバルナビゲーション衛星システムや無線高度計への干渉の可能性も考えられる理由があると述べた。 米国連邦航空局によると、高度計は「航空機の地上からの高さに関する非常に正確な情報」を提供し、航空機に搭載されている衝突回避システムをサポートするものだ。

電磁波の研究者によれば、VHF帯の不当な通信は問題だという。

オーストラリアのフリンダーズ大学で教授を務めるサミュエル・ドレイク(Samuel Drake)博士は、3月下旬、ウェブサイト「オーストラリアン・アビエーション(Australian Aviation)」に対し、「第一に、パイロットはおそらく緊急通信のためにその通信経路を開いておくことを望むだろう」とした上で、 「第二に、外国の軍隊が、民間航空機の通信システムや電子システムを妨害したり損傷させたりする恐れのある『電子戦』演習を行っている可能性がある」と述べた。

「民間航空機のGPS受信機の妨害には、より高性能な装置が関与している」とドレイク博士は述べ、さらに、 「それは比較的容易だ。すべての国家がこの能力を保有している」と語った。

カンタス航空は、通信妨害を受けた乗務員に対し、割り当てられた飛行経路を維持し、航空管制官に報告するよう指示した。 国際定期航空操縦士協会連合会は、会員に対し、軍艦からの呼びかけに応じず、直ちに干渉を報告し、安全報告書を提出するよう勧告した。

インド太平洋の同盟国やパートナーは、飛行士や船員を危険にさらす中国人民解放軍の無責任な行動パターンに対する懸念を募らせている。 2022年12月、中国人民解放軍の戦闘機(写真)が、南シナ海上空の国際空域で通常作戦を行う米国空軍のRC-135偵察機から3メートル以内に接近したとロイターが報じた。 約30人の乗員を乗せたRC-135は、衝突を避けるために旋回した。

アメリカインド太平洋軍は「インド太平洋地域のすべての国が国際法に従い、安全に国際空域を使用することを望む」と表明している。

その数か月前、中国人民解放軍の戦闘機が、南シナ海上空を定期的にパトロールしていたオーストラリア国防軍(ADF)の偵察機を妨害してアルミニウム片を含む レーダー妨害片を放出し、それがオーストラリア軍機のエンジンの1つに取り込まれたとCNNが報じている。 負傷者は出ていない。

アンソニー・アルバニージ(Anthony Albanese)オーストラリア首相は、「これは安全ではない…我々は中国政府に対し、懸念を表明する適切な申し入れを行った」と述べ、オーストラリア国防軍は「国際法に従い、国際水域と領空における航行と飛行の自由の権利を行使していた」と言及した。

同じ頃、中国人民解放軍海軍は、国連の対北朝鮮制裁の違反を監視するカナダ空軍の航空機に嫌がらせをし、カナダ空軍の航空機を飛行経路から強制的に退去させた。

「こうした行為において、中国人民解放軍海軍は国際的な航空安全規範を遵守していない。 このような行為は職業道徳に反するものであり、かつカナダ空軍の隊員の安全を危険にさらすものである」とカナダ軍は2022年6月に発表している。 さらに、「国連公認の任務中に国際空域で発生するこのような接触は憂慮すべきものであり、頻度も増加している。 こうした事態は、外交ルートを通じた言及もされている」と述べている。

一方、中国共産党の海軍は、2016年に国際法廷が却下した南シナ海での中国の恣意的で拡張的な領有権主張を押し進めるために好戦的な戦術を採用している。

2023年2月、中国の沿岸警備隊船は、係争中の礁の付近でフィリピンの巡視船に軍用レーザーを向け、フィリピン人乗組員を一時的に失明させた。 フィリピン政府は外交的抗議を行い、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は中国大使を呼び出し、懸念を表明したとAP通信は報じた。

フィリピン軍報道官のメデル・アギラール(Medel Aguilar)大佐は記者団に対し、「中国政府は、人々の命を危険にさらすような挑発行為をしないよう、自軍を抑制する時期に来ていると思う」と述べた。