アングル:EU、「重要原材料法」発効へ 重要鉱物の目標設定も課題山積

2023/12/26
更新: 2023/12/26

Philip Blenkinsop

[ブリュッセル 18日 ロイター] – 欧州連合(EU)で来年初めに「重要原材料法(CRMA)」が発効する。同法ではリチウム、コバルトなどグリーン移行に必要な重要鉱物の採掘・リサイクル・加工に目標を設定したが、新規資金の不足、エネルギーコスト高騰、地元の反対などで目標を達成できない恐れもある。

今後、重要鉱物の需要削減、代替品の開発、中国依存を減らすパートナーシップの構築で対策を迫られそうだ。

CRMAでは17の重要原材料について、2030年までに年間必要量の10%を域内で採掘、25%を再利用、40%を加工する目標を設定。中国依存軽減を目指している。

ただ、複数の調査によると、重要鉱物がスクラップとして市場に再流入するのは2035─40年になり、それまでは再利用が制限される見通し。

ベルギーのルーベン・カトリック大学の研究者は22年の報告書で、金属の供給は30年までの期間が最も厳しい時期になると指摘。銅、リチウム、ニッケル、コバルト、レアアース(希土類)にリスクがあると強調している。

CRMAでは、現在10─15年かかる可能性がある採掘事業の許認可手続きを27カ月以内に短縮する目標も掲げているが、課題は残っている。

欧州非鉄金属協会は、欧州には潜在的な可能性が秘められているが、安価なエネルギーとEUによる資金援助が必要だと主張。

EUは国家補助金の規制を緩和。バッテリー生産を拡大するため、30億ユーロ(33億ドル)を支出する計画だが、米インフレ抑制法に盛り込まれたグリーン補助金3690億ドルに見劣りする。

EUではエネルギーコストの高騰で、電力集約型の金属製錬所の稼働停止が広がっており、EUのアルミニウム生産量は昨年35%減少。今年もさらに減少している。

EUは電力市場の改革を計画しているが、安価な再生可能エネルギーの確保には時間がかかる見通しだ。

資源大手リオ・ティントの幹部によると、既存鉱山の転用で重要鉱物を採掘できる可能性があるが、リチウムについては欧州で緊急に新たな鉱山が必要という。

欧州運輸環境連盟の幹部は、効果的な手段の一つが小型バッテリーを搭載した小型電気自動車へのシフトだと指摘する。これにより、リチウムとニッケルの需要を25%削減できる可能性がある。

ブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルの幹部は、鉱物生産の「オンショアリング」(域内回帰)よりも、信頼できる同盟国から鉱物を調達し、バッテリーなど高付加価値製品の生産に集中した方がよいのではないかと指摘している。

CRMAでも輸入先を多様化する必要性を強調。EUはアルゼンチン、ザンビアなどと多数のパートナーシップを締結しており、3000億ユーロ規模のインフラ投資支援計画「グローバル・ゲートウェイ」を通じて経済を多様化したい資源国を取り込み、中国への依存を減らしたい考えだ。

Reuters
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