アメリカ社会 共産主義の独裁者に牛耳られたメーカーに言論の自由は不要でしょう。

言論の自由と異なる問題点、TikTokの運命に影響を与える決定的な理由

2024/04/30
更新: 2024/04/30

アメリカは、中国の短編動画プラットフォームであるTikTokに対し、売却しなければ国内での使用を禁止するという歴史的な法案を成立させた。この動きは、国家安全保障と言論の自由という二つの重要な価値が衝突する象徴的な瞬間である。

「100年以上前から、外国資本の制限は米国の連邦通信政策の中核となっている」と、米国の法律専門家が述べている。

民主党と共和党の両党の支持を受けた法案、短編動画共有プラットフォームTikTokに関する「売却しなければ禁止」というこの法案が、バイデン大統領の署名を経て法律となった。これに対し、TikTokは法的な闘争を継続する方針を示し、アメリカ合衆国憲法修正第1条に基づく言論の自由を盾に、戦う姿勢を明らかにしている。

しかし、今年4月の議論の結果、アメリカの民主党と共和党、議会、そして連邦政府が迅速に合意に至り、TikTokに対し、その中国の親会社であるバイトダンスからの切り離しを強制し、中国共産党の影響を排除するか、さもなければアメリカ国内での禁止を受け入れるよう要求した。この決定は、TikTokがアメリカにおいて言論の自由を主張する防衛策が通用しないことを示唆し、アメリカで、TikTokの未来が、不透明で暗いものであることを暗示している。

アメリカにおいて主要な情報源となるものの、所有権は競争相手の手中に

アメリカにおけるTikTokを巡る議論は少なくとも4年間続いており、2020年にはトランプ前大統領による禁止の試みが民主党主導の裁判所によって覆された。そして今年3月まで、アメリカ政府は中国のバイトダンス社に対してTikTokのアメリカ企業への売却を強制することは現実的ではなかったとされており、アメリカ議会も特定の企業に対する法律をほとんど制定していなかった。

アメリカにおけるTikTokの人気は非常に高く、現在約1億7千万人が利用している。今年は大統領選挙が行われる年で、民主党と共和党はTikTokに対する規制が有権者の反応に与える影響を注意深く検討してきた。

しかし、4月に入り、民主党と共和党の両方の支持を受けたTikTokの分社化を目指す法案が、急ピッチで立法化された。4月20日には下院で360対58という圧倒的な賛成多数で通過し、23日には上院でも79対18で承認され、24日にはバイデン大統領が迅速に署名した。TikTokが、12か月以内に親会社のバイトダンスから独立しなければ、アメリカ国内での使用禁止が確定したのだ。

政策立案者たちは、この迅速な法改正の背後にある理由を説明する際に、TikTokに関する議論が複雑であること、国際企業の強制的な分離が、必ずしも合理的ではないという意見もあることを認めつつ、TikTokには他の企業にはない、特別な問題が少なくとも一つはあると述べている。

TikTokはアメリカにおいて重要な情報源としての地位を築いている。30歳未満のアメリカ人の約3分の1がTikTokをニュースソースとして利用しているとのことである。しかし、TikTokはアメリカの競争相手である中国共産党によって所有されており、同党は民間企業を国家の支配や管理の手段として使用する歴史的事実があった。

「結局のところ、これは中国共産党の支配下にあるツールである」と、FBIディレクターのクリストファー・レイ氏は議会の証言でTikTokに関して言及している。

TikTokをこの視点で見ると、どの国も自国のニュース、出版、情報分野を外国の手に委ねることを、避けているという現実が浮き彫りになった。

敵対国による主要通信プラットフォームの支配を禁止する歴史的慣習

アメリカでは長い間、外国人投資家によるテレビやラジオ局の所有には制限が設けられていた。これは友好国の企業であっても例外ではない。

フォーダム大学の法学教授ゼファー・ティーチャウト氏は「アトランティック」誌3月号で、次のように指摘している。

「100年以上にわたって、外国の所有制限はアメリカの連邦通信政策の核心的な要素であった。グローバル化と自由貿易の進展にもかかわらず、外国資本によるテクノロジープラットフォームの所有を阻むアメリカ政府の態度は、極端で陰謀があるように感じられるかもしれない。しかし、外国政府の監視や政治的干渉から身を守るための考え方は、実際にはアメリカの歴史と民主主義の理念に、深く根付いた、とても古いものである。敵対的な外国勢力による主要な通信プラットフォームの掌握を禁止することは、アメリカの自治を守る長い伝統に則った行動である」

ティーチャウト氏によると、アメリカの建国初期、1787年の憲法制定会議において、憲法の制定者たちは外国勢力がアメリカの開かれた社会や政府を利用して自己の利益を追求するリスクを深刻に懸念していた。憲法が批准された後、アメリカ議会は外国の所有権や影響力を制限し、アメリカの主権、民主主義、国家安全を守るための措置を度々採用してきた。これらの制限は、政治、選挙、通信の分野において特に強く表れている。

TikTokが中国共産党の重要なプロパガンダツールであることを示す証拠

アメリカの情報機関やテクノロジー企業、独立した研究者たちは、2016年からロシアによるアメリカ選挙への介入が注目されている中、中国共産党による情報操作のリスクが高まっていると警告している。

専門家たちは、中国共産党が最近、ソーシャルメディアを通じて影響力を増しており、その目的は中国共産党の影響力を広げること、党の主張を推し進めること、アメリカのリーダーシップに疑念を持たせること、そしてアメリカ社会を分断させることなど多岐にわたると指摘している。

最近の研究によると、中国共産党がタブー視するテーマ -香港の抗議活動、1989年の民主化運動、天安門事件などのコンテンツは、TikTokではなかなか見つけることができない。

さらに、TikTok上ではロシアとウクライナの紛争、ハマスとイスラエルの対立に関する投稿で、ウクライナやイスラエルを支持するものが少ないことが指摘されている。

《ウォール・ストリート・ジャーナル》の分析では、TikTokがハマスとイスラエルの対立において反イスラエルの情報を広めている可能性があり、これは中国共産党がハマス支持であるという見方を強めている。また、中国共産党はロシアとウクライナの紛争においても、基本的にロシアの側にポジションを取っているとされている。

バイトダンスの創業者である張一鳴は、2018年に企業内での共産党の役割を強化する意向を明らかにし、「技術は社会主義の核心価値観に沿って進められるべきである」と述べている。

2023年5月、カリフォルニア州で行われたTikTokに関する裁判で、バイトダンスの元幹部が証言した内容によると、同社の北京にある本社には中国共産党員から成る特別委員会が存在し、企業が中国共産党の中核的な価値観をどのように推し進めるかを監督しているとのことである。さらに、この委員会は企業のデータ全てに対する最高レベルのアクセス権を有しており、それにはアメリカに保存されているデータも含まれていると言われている。

アメリカの多くの議員や国家安全保障の専門家は、これらの報告に深刻な懸念を示している。「売却を行わなければ禁止する」という法案の推進者の一人である共和党のマイク・ギャラガー元議員は、ニューヨーク・タイムズに対し、中国共産党が支配下に置くTikTokをアメリカで使用することは、情報の支配権、特にアメリカの若者が受け取る情報の支配権をアメリカの最大の敵に渡すことになると述べた。また、ニューヨークの民主党、イヴェット・クラーク下院議員も、中国共産党によるTikTokの所有は、アメリカの安全と民主主義に、前例のない脅威をもたらしていると述べている。

TikTokの「言論の自由」に関する議論は根拠がない

「売却を行わなければ禁止する」という法案が正式に成立したにも関わらず、TikTokは法的闘争を継続する意向を示している。また、中国共産党の官僚たちは、バイトダンスがTikTokを売却することを許可しないとも公言している。アメリカ国内にも彼らの支持者は存在している。

政治的に左派の立場からは、アメリカ自由人権協会(ACLU)をはじめとする団体が、TikTokに関する法案が憲法修正第1条に基づく言論の自由を侵害するものだと批判している。一方、政治的に右派の立場では、TikTokの投資家であり共和党の重要な資金提供者でもあるジェフ・ヤス(Jeff Yass)、そして彼がかつて所属していたカトー研究所(Cato Institute)が、TikTokを積極的に支持している。

これらの反対派は、アメリカの言論の自由とTikTokのアメリカの若者に対する影響力を活用して抗議活動を展開したいと考えているが、数か月前と比較して、彼らの影響力は明らかに低下している。

ニューヨーク・タイムズのワシントンD.C.支局長であるカール・ハルスは、「TikTokが、中国によるアメリカへのアクセスポイントを多数提供しているという問題が、他のどの政治的問題よりも深刻に感じられている」と指摘している。

一方、ティーチャウト教授は「アトランティック」誌への寄稿で、アメリカ憲法修正第1条に基づき、外国政府の利益を代表する通信プラットフォームを支持することは「極めて根拠が薄い」とし、「軽率」と批判している。また、TikTokの禁止が言論の自由を侵害することになる場合、「このような無限の論理は、通信技術に基づくプラットフォームを規制しようとするアメリカの全ての試みを無効にする可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

TikTokに対する制限が、大手テック企業による独占やプライバシー侵害などの全ての問題を解決するとは限らないが、ティーチャウト教授は、TikTokの強制的分離が少なくとも一つの重要な問題、すなわち「敵対的な外国の超大国がアメリカの主要な通信プラットフォームを支配し、その国がアメリカや他の国々の内政に影響を及ぼす意図があるという明確な証拠が存在する」という問題を解決する可能性があると考えている。

程雯
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