全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長は、米自動車産業が危機に直面しているとし、トランプ大統領の対メキシコ・カナダ関税を支持する考えを示した。
トランプ政権は3月4日、メキシコとカナダからのフェンタニル密輸を理由に、両国に対し25%の関税を課すと発表した。ただし、自動車メーカーには1か月間の猶予を設けた。
メキシコとカナダは米国の主要な自動車部品供給国であり、フェイン会長は3月9日のABCのインタビューで、関税支持の理由について、「簡単な話だ。我々の国は今、危機的状況にある」と答えた。
「米国経済や労働者の雇用にNAFTA(北米自由貿易協定)やUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)、そして問題のある貿易制度ほど大きな影響を与えたものはない」。
同氏は、「関税は、過去33年間続いてきた米国の雇用流出を食い止めるための手段だ。関税が最終的な解決策ではないが、問題を改善するうえで重要な役割を果たす」と語った。
自動車メーカーへの猶予措置と影響
トランプ政権は、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスの最高経営責任者(CEO)からの要請を受け、自動車メーカーに対し1か月間の関税猶予を設けた。
多くのアメリカ自動車メーカーは、海外からの部品供給に依存しており、新たな関税に対応する時間が必要とされている。 猶予期間中に、企業は生産体制を米国内へ移行する準備を進めることが期待されている。
フェイン氏は、北米自由貿易協定が発効して以来、「アメリカでは9万の製造拠点が消えた」、これは「1州あたり1800の工場が閉鎖された計算になる」と述べた。
「どの国でも、これほど多くの工場が失われれば、経済は壊滅的な打撃を受けるだろう」と述べた。
北米自由貿易協定は1994年1月に発効し、2020年7月に米国・メキシコ・カナダ協定に置き換えられた。
フェイン氏は、政権と協力しながら、「この壊れた貿易システムを改革するための解決策を模索している」と述べた。
「米国は世界の主要な市場であり、多くの国が米国での販売を望んでいる。我々は相互的な貿易ルールを持つべきだ」。
なお、UAWは2024年大統領選でバイデン氏とハリス氏を支持しているが、今回フェイン会長がトランプ氏の関税を支持したことは意外な展開と見られている。
対メキシコ・カナダ関税の影響
自動車産業のリサーチ会社のJATOによると、対カナダ・メキシコ関税はアメリカの自動車販売に大きな影響を及ぼす可能性がある。
25%の関税が課されると、カナダまたはメキシコから輸入される2万5千ドルの車両には、6250ドルの追加コストが発生する。 このコストの一部または全額が、米国の消費者へ転嫁される可能性が高い。
昨年、米国で販売された新車(計1610万台)のうち、13.6%がメキシコ、4.5%がカナダからの輸入だった。
JATOによると、メキシコはフォルクスワーゲン(VW)の米国販売における最大の供給国であり、また、ステランティス、日産、マツダ、ホンダ、フォードの米国向け輸出でも重要な拠点となっている。
今後の見通し
一方、米国自動車関連サービス企業のコックス・オートモーティブは、関税は短期間で撤廃される可能性が高く、交渉が進展すると予測している。
S&Pグローバルの最新報告書では、「25%関税は早期に解決される可能性が70%であり、関税が続く場合でも最大2週間で撤廃される可能性が高い」と分析している。
同報告書によると、北米全域で1日あたり約6万3900台の乗用車が生産されており、米国4万1700台、メキシコ1万7600台、カナダ4600台となっている。
報告書は「関税が長引けば北米全体の生産に大きな影響を与え、1日あたり2万台以上の生産が停止する可能性がある」とも指摘している。
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