米連邦準備制度理事会(FRB)は7日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利(フェデラルファンド金利)の誘導目標を4.25~4.50%に据え置くことを全会一致で決定した。これは2024年12月以降続いている水準であり、今回も変更はなかった。
FOMC後に発表された声明では、米経済の先行き不透明感が一段と強まっていることが強調された。FRBは「経済見通しに対する不確実性がさらに高まった」と指摘し、「インフレと失業率が共に上昇するリスクが増している」との認識を示した。これは、中央銀行が本来目指す「物価の安定」と「最大雇用」の両立が、今後はより難しくなる可能性を示唆している。
背景には、トランプ大統領が4月に発動した大規模な関税政策がある。トランプ政権は、ほぼすべての輸入品に最低10%の関税を課し、特定の57カ国からの輸入品にはさらに高い関税を設定した。こうした措置により、企業のコスト増加や消費者物価の上昇、サプライチェーンの混乱が生じている。多くの米企業が業績予想の下方修正や撤回を余儀なくされており、経済成長への逆風となっている。
FRBのパウエル議長は記者会見で、「関税の影響の規模や持続性は極めて不透明だ」と述べ、「現時点でどのような金融政策が適切なのか判断できない」と語った。今後の経済指標を慎重に見極める必要があるとの姿勢を示し、当面は現状維持を続ける方針を明確にした。
声明文によれば、米経済は「堅調なペースで拡大を続けている」としつつも、2025年第1四半期には輸入急増による貿易赤字拡大が成長を押し下げたとの分析が示された。また、労働市場は依然として底堅いものの、インフレ率は目標の2%を上回る「やや高い水準」にとどまっている。
FRBは今後の政策運営について、「リスクのバランスや経済指標の動向を慎重に評価し、必要に応じて柔軟に対応する」としている。市場では、関税による物価上昇圧力が一時的にとどまるのか、あるいは景気減速と失業率上昇が深刻化するのか、FRBの次の一手が注目されている。
なお、トランプ大統領はFRBに対し、景気刺激のための利下げを繰り返し要求しているが、FRBは独立性を維持しつつ、現時点では慎重な対応を続けている。
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