あれは、まるで空から「砲弾」が降ってくるかのような光景だった。(2025年5月13日、中国・北京)
5月13日、北京を直撃した巨大な雹(ひょう)は、車の窓ガラスを次々と砕き、車体に無数の凹みを残した。
翌14日には修理店に長蛇の列、受付打ち切りが相次いだ。市内の自動車保険の申請件数は4万5千件を超え、推定損害額は3億元超(約60億円)に上った。
「悪夢の夜(13日)」からわずか3日後、まるで流れ弾の展示会でも見ているかのような、見るも無残な車の残骸が並ぶ街に、再び「氷の弾丸」が襲来するという予報が走った。
すると、北京市内では「前代未聞の車両防衛戦」が始まった。怯えた車の所有者たちは、相次いで、武器ならぬ毛布と段ボールを手に取った。
「車に棉布(綿織物)をかけて備え、もちろん飛ばされないようしっかり縄で固定」。ある自動車販売店は「いまなら車を買えば、もれなく掛け布団もついてくるぞ」「季節外れなのに布団が爆売れという事態に、布団屋さんもさぞ意外なことだろう」などと自虐混じりに売り文句を添えた。
(北京の“DIY防災” )
ある車のオーナーは「ほうらみろ、うちの段ボール装甲車だ」と自信作を披露。
幸いなことに、結局16日に降ってきたのは恐ろしい「氷の弾丸」ではなく、小さな豆粒程度のひょうだった。
今回は運よく「氷弾」の直撃を免れたが、次がいつ降ってくるかわからない。
見た目は「アレ」でも、いざという時の安心感は高級セキュリティ並みの「装備」たち。目障りだし、物理的にも相当邪魔でも、誰も処分できない。そう、捨てる勇気より、備える臆病さのほうが今は賢明とされている。
(2025年5月16日に降った雹)
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