ウクライナ対外情報局のオレフ・イワシチェンコ局長は5月25日、国営通信「ウクルインフォルム」に対して、中国(中国共産党、中共)がロシアの軍需工場20か所に対し、機械や特殊化学品、火薬、部品などの供給を行っているとの情報を明らかにした。
イワシチェンコ氏によると、2024年から2025年にかけて、中露間では航空関連の協力が少なくとも5回確認されており、設備や部品、関連文書のやり取りがあったという。また、ウクライナ情報当局は、6件にわたる大量の特殊化学品の輸送も把握している。
さらに、2025年初頭時点でロシア軍のドローンに使用されている主要な電子部品の80%が中国から供給されたものであることが判明した。中には、誤ったラベルを貼ったり、製品名を偽装したり、ペーパーカンパニーを通じて中国からマイクロエレクトロニクス関連部品を密輸する手法も使われていたという。
ウクライナのゼレンスキー大統領は今年4月、習近平が「ロシアに兵器を供与しない」と約束していたとした上で、実態との乖離に「深く失望している」と表明していた。
一方、中国外務省の林剣報道官は先月の定例記者会見で、「中国は、いかなる紛争当事国にも致死性兵器を供与しておらず、軍民両用物資についても厳格に管理している」と主張。さらに「ウクライナ側もこの点を理解している」と付け加えた。
台湾・淡江大学外交学系の鄭欽模準教授は、米バイデン政権も中共の対露支援を明らかにしており、ウクライナが公表した情報はそれを裏付けるものだと分析した。
昨年5月29日、米カート・キャンベル副国務長官(当時)は、「中国の対ロ支援は一時的なものでも、限られた一部企業によるものでもなく、中共指導層による支援だ」と明言した。
鄭氏は今回の情報公開について、「ゼレンスキー氏が最近EUに提出した、ロシア支援に関わる組織への『二次制裁』を求めるリストと関係している可能性がある」と指摘する。トランプ氏もかつて同様の制裁案に言及したが、十分には実行されなかったと述べた。
EUはすでに第17次の対ロ制裁を発動しており、現在は第18次の検討が進んでいる。ウクライナがこのタイミングで情報を公表した背景には、「この戦争はロシア単独ではなく、中共の関与によって続いている」と西側諸国に訴えかける意図があるとみられる。
鄭氏は「今回の発表には二つの効果がある」とした。
第一に、中共がアメリカとの貿易摩擦の中でヨーロッパとの関係改善を模索する動きに冷や水を浴びせることになる。というのも、ロシアによるウクライナ侵略は欧州全体にとって最大級の地政学的リスクであり、中共がその侵略を積極的に支援していると見なされれば、欧中関係はさらに悪化する。そうなれば、ヨーロッパが中共と協力して米国に対抗するという構図は現実味を失うだろう。
第二に、ロシアとの戦争の長期化は、中共の支援が主因であるという認識を、欧米を含む国際社会に共有させること」を挙げた。
また、台湾の国家安全研究機関「国防安全研究院」の鍾志東博士は、「中共の対ロ支援は、規模・範囲ともに拡大し、明らかに露骨になっている」と述べた。これにより中共は軍需産業で大きな利益を得ると同時に、ロシアの高度な技術も取り込んでいるという。
鍾氏は、「ウクライナがこの時期に情報を公開したことで欧中関係に影響が出る可能性はあるが、中国がロシア支援を止めることはないだろう」と見通している。
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