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米国下院が可決した「2025年 生体臓器収奪阻止法案」の全文

2025/06/03
更新: 2025/06/03

米国下院は2025年5月7日、「2025年 生体臓器収奪阻止法案(Stop Forced Organ Harvesting Act of 2025)」を可決した。本法は、強制的な臓器摘出や臓器収奪を目的とする国際的な人身取引の撲滅を米国の政策として明確に位置付け、関与者に対する制裁やパスポートの発給拒否、国際的な報告義務の強化など、包括的な対策を定めている。中国共産党員を含む関係者への責任追及も規定されており、国際社会における人権擁護と臓器移植の倫理的枠組みの確立を目指す内容となっている。

以下に法の全文を紹介する。

『2025年 生体臓器収奪阻止法案』全文

第119回米国連邦議会
第1会期

 

H. R. 1540

 

法案

臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引を撲滅し、その他の目的を達成するために。

アメリカ合衆国議会(上院及び下院)により、以下のとおり制定する。

第1条 法令の略称

 本法は、「2025年 生体臓器収奪阻止法(Stop Forced Organ Harvesting Act of 2025)」と称する。

第2条 政策に関する声明

 アメリカ合衆国の政策は、以下のとおりとする。

(1)臓器の摘出を目的とする国際的な人身取引を撲滅すること。

(2)二国間の外交会合および国際的な保健フォーラムにおいて、実効的な執行機構を備えた自発的な臓器提供制度の確立を促進すること。

(3)1948年12月10日に採択された「世界人権宣言」に則り、人命の尊厳および安全の確保を推進すること。

(4)臓器の強制的摘出および臓器摘出を目的とする人身取引に関与した者に責任を問うこと。これには、中国共産党の党員を含む。

第3条 定義

 本法において使用する用語の定義は、以下のとおりとする。

(1)「連邦議会の所管委員会」
 (A)上院の外交委員会および司法委員会
 (B)下院の外交委員会および司法委員会

(2)臓器収奪(forced organ harvesting)

 強制、拉致、欺瞞、詐欺、権力の濫用または脆弱な立場の悪用を手段として、1人の者から1個以上の臓器を摘出する行為をいう。

(3)臓器(organ)
「国家臓器移植法」(National Organ Transplant Act)(42 U.S.C. 274e(c)(1))第301条(c)(1)項に定める「ヒトの臓器(human organ)」の定義に従うものとする。

(4)臓器摘出を目的とする人身取引
(trafficking in persons for purposes of the removal of organs)

 以下のいずれかの手段により、1人または複数の臓器の摘出を目的として行われる、人物の勧誘、輸送、移送、収容または受入れをいう。

 (A)強制

 (B)拉致

 (C)欺瞞

 (D)詐欺

 (E)権力の濫用または脆弱な立場の悪用

 (F)当該人物を支配する者の同意を得るための金銭その他の利益の供与

 

第4条 パスポートの発給拒否および取消に関する権限

(a) 一般規定
国家臓器移植法(42 U.S.C. 274e)第301条に違反して有罪判決を受け、当該判決により禁錮刑、仮釈放、またはその他の監督下の釈放を受けている者が、当該犯罪の実行に際してパスポートを使用した、または国境を越えた場合、国務長官はその者に対しパスポートの発給を拒否することができる。

(b) パスポートの取消
国務長官は、前項に該当する者に対し、既に発給されたパスポートを取消すことができる。

 

第5条 国外における臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引に関する報告書

1961年対外援助法(22 U.S.C. 2151等)は、以下のとおり改正される。

   (1) 第116条(22 U.S.C. 2151n)に、次の新たな項(h)を追加する。

(h) 臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引に関して

(1)一般規定
前項(d)に基づき提出が義務付けられる報告書には、各外国における臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引の実態に関する評価を含めなければならない。

(2)定義
 本項において使用される用語の定義は、次のとおりとする。

 (A)臓器収奪(forced organ harvesting)とは、強制、拉致、欺瞞、詐欺、または権力の濫用もしくは脆弱な立場の悪用により、1人の者から1個以上の臓器を摘出する行為をいう。

 (B)臓器(organ)とは、「国家臓器移植法」(42 U.S.C. 274e(c)(1))第301条(c)(1)項に定める「ヒトの臓器(human organ)」をいう。

 (C)臓器摘出を目的とする人身取引(trafficking in persons for purposes of the removal of organs)とは、以下のいずれかの手段により、1人または複数の臓器の摘出を目的として行われる人物の勧誘、輸送、移送、収容または受入れをいう。

 (i)強制

 (ii)拉致

 (iii)欺瞞

 (iv)詐欺

 (v)権力の濫用または脆弱な立場の悪用

 (vi)前記(i)項に先立って述べられた人物(すなわち、臓器を摘出される対象者)を支配する者の同意を得るための、金銭または利益の供与

(2) 第502B条(22 U.S.C. 2304)において、以下の修正を加える。

 (A)2つ目に現れる「(i)」項(児童婚の状況に関する記述)を「(j)」項に改める。

 (B)文末に次の新たな項(k)を追加する。

 ”(k) 臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引に関して

(1)一般規定
 前項(b)に基づき提出が義務付けられる報告書には、各外国における臓器収奪および臓器摘出を目的とする人身取引の実態に関する評価を含めなければならない。

(2)定義
 本項において使用される「臓器収奪」「臓器」および「臓器摘出を目的とする人身取引」の各用語は、第116条(h)(2)に定める定義によるものとする。”

 

第6条 臓器収奪または臓器摘出を目的とする人身取引に関与した者に対する制裁の発動

(a) リストの提出
本法の制定日から180日以内に、大統領は、臓器収奪または臓器の摘出を目的とする人身取引を資金援助し、支援し、またはその他の方法で促進していると大統領が判断した者の一覧を作成し、連邦議会の所管委員会に提出しなければならない。

(b) 制裁の発動
大統領は、前項に基づき作成されたリストに記載された者に対し、以下の制裁を科さなければならない。

(1)財産の凍結

 大統領は、国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)(50 U.S.C. 1701 以降)に基づき付与されたすべての権限を(ただし、同法第202条(50 U.S.C. 1701)の要件は適用しない)、必要な限度において行使し、当該者の財産および財産に対する権益について、以下のいずれかに該当する場合には、すべての取引を凍結し、禁止しなければならない:

 ・当該財産および権益がアメリカ合衆国に所在する場合

 ・アメリカ合衆国内に持ち込まれる場合

 ・アメリカ合衆国の個人の占有または管理下にある場合、あるいはそのような状況になる場合

(2)ビザの発給拒否、入国不可、仮放免入国(parole)の不許可(外国人に対する措置)
 (A)ビザ、入国、または仮放免入国の不許可:個人については、以下の措置を適用する。
 (i)アメリカ合衆国への入国を認めない。
 (ii)アメリカ合衆国への入国を目的とするビザまたはその他の渡航文書を受給する資格がない。
 (iii)「移民および国籍法」(8 U.S.C. 1101 以降)に基づき、アメリカ合衆国への入国、仮放免、またはその他一切の恩典を受ける資格がない。

 (B) 現在のビザの取消し
 (i)一般規定 — 当該個人のビザその他の入国文書は、それがいつ発給されたかにかかわらず、取り消されるものとする。
 (ii)即時の効力 — 前号(i)による取消しは、以下の効力を有する。
 (I)直ちに発効すること。
 (II)当該個人が保有する他の有効なビザまたは入国文書は、自動的に無効とされること。

(c) 例外

(1)物品の輸入に関する例外
 (A)一般規定 :第(b)(1)項に基づく制裁を科す権限および義務には、物品の輸入に対する制裁を科す権限または義務は含まれないものとする。

 (B)「物品」の定義 — 本号において「物品」とは、あらゆる製品、天然物または人工物、原材料、供給品、製造品(検査および試験装置を含む)を意味し、技術データを除くものとする。

(2)国際義務の履行に必要な場合の例外
  第(b)(2)項は、以下のいずれかの国際的義務を履行するために当該個人の入国が必要である場合には、適用しないものとする。
・1947年6月26日にレイク・サクセスで署名され、同年11月21日に発効した「国際連合本部協定」
・1963年4月24日にウィーンで締結され、1967年3月19日に発効した「領事関係に関するウィーン条約」
・他の適用可能な国際協定または条約

(3)人道的援助の提供に関する例外
     本条に基づく制裁は、以下の取引またはそれらの取引の遂行を円滑にする行為には適用されないものとする。

 (A)農産物、食料品または医薬品の販売に関する取引
 (B)生命に不可欠な人道的援助の提供に関する取引
 (C)生命に不可欠な人道的援助に関連する、または人道的目的のための金融取引
 (D)生命に不可欠な人道的援助に関連する業務の遂行に必要な物品またはサービスの輸送

(4) 制裁の適用免除:  

大統領は、個別の事例ごとに、いずれも180日を超えない期間に限り、本条に基づき当該人物に対して科される制裁または制限の適用を免除することができる。ただし、大統領は、かかる免除の発効日の15日前までに、当該免除が合衆国の国家安全保障上の利益にとって不可欠である旨を議会の所管委員会に対して証明しなければならない。

(d) 実施および罰則

 (1)実施

 本条を実施するにあたり、大統領は、国際緊急経済権限法(50 U.S.C. 1702および1704)第203条および第205条に基づき付与されたすべての権限を行使することができる。

 (2)罰則

 本条または本条の実施のために発出された規則、許可、命令に違反し、違反を試み、違反を共謀し、または違反を引き起こした者は、国際緊急経済権限法(50 U.S.C. 1705)第206条(b)および(c)項に定められた罰則の対象となるものとし、同法第206条(a)項において定義された違法行為を行った者と同程度の処罰を受ける。

 

(e) 定義

本条において、以下の定義を用いる。

(1)「個人」(person)
 (A)自然人または法人を指す。
 (B)連邦法第114–281号に定義される「非国家主体(non-state actor)」を含む。

(2)「アメリカ合衆国の個人」(United States person)

 (A)アメリカ合衆国の市民、またはアメリカ合衆国に合法的に永住を認められた外国人

 (B)アメリカ合衆国またはその構成法域の法令に基づき設立された法人(その外国支店を含む)

 

2025年5月7日、米国下院可決。

署名:ケビン・F・マッカンバー(下院事務総長)

▶EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶番組「日本の思想リーダーズ」ホスト ▶1969年東京生まれ ▶青山学院大学法学部卒 ▶総合商社日商岩井(現双日)にて情報産業等に約10年間従事。独立後紆余曲折を経て3年半ベトナムに渡る。帰国後1年間の無職期間中に日本各地を巡る。その後2015年からメディア業界へ。