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中国の学校がコロナ感染者急増で生徒を隔離か 「ゼロコロナ」再来の可能性は?

2025/06/03
更新: 2025/06/11

中国全土の医師や住民からは、コロナ感染症の新たな波が続く中、感染者数や死亡者数が増加しているとの報告が相次いでおり、中国共産党政権が公式発表した数字を大きく上回る深刻な実態が浮かび上がっている。

中国語版の『大紀元時報』やSNS上に投稿された情報によると、各地の省で学校が授業を中止し、生徒を隔離する措置が取られているとされており、ロックダウン再来への国民の不安が高まっているとされる。

中国南部天広東省広州市にある小学校が発行した「自宅隔離通知」の内容が、中国版TikTokであるDouyin上で中国のネットユーザーにより拡散された後、5月26日に「X(旧Twitter)」にも投稿され、中共の検閲により削除される前に広く注目を集めた。

通知によれば、ある3年生の生徒が陽性だと診断されたことを受け、その生徒には7日間の自宅隔離が命じられた。隔離期間が終了した後、登校を再開するには、診療所および地域の保健サービス機関が発行する健康診断書の提出が求められたという。

陝西省や江蘇省の学校でも、一部の生徒に発熱症状が見られ、コロナ感染の疑いがあるとして授業が中止された。

中共政権が発表する公式データによると、4月のコロナ感染症の感染率は倍増し、感染者数は16万8507人(重症者340人、死亡者9人)に上った。そのうち重症者は340人、死亡者は9人とされている。また、中国疾病予防管理センター(中国版CDC)は、南部の省での感染率が北部よりも高い傾向にあると報告している。

中共系メディアの新華社は5月28日、保健当局の見解として、新型コロナウイルス感染症の感染者数の増加ペースは鈍化しており、多くの省で流行がピークを迎えるか、すでに減少傾向にあると報じた。

当局と官製メディアはそろって感染状況を控えめに報じているが、中国国内にいる住民は大紀元に対し、実際の状況ははるかに深刻であり、当局の公式データは自身の実体験とかけ離れていると証言している。

中共は、2020年初頭から新型コロナウイルス感染症に関する感染者数や死者数の過少報告を含む情報の隠蔽や、信頼性に乏しいデータの公表を続けてきた経緯がある。このため、地元の医師や住民による報告は、全体主義体制下にある現地の実情を把握するうえで、重要な手がかりとなり得る。

広東省広州市にあるクリニックに勤務する医師カン・ホン氏(安全上の懸念から仮名を使用)は、5月29日に大紀元の取材に応じ、今回の感染の波は新型コロナに感染している人の大半は成人だが、子どもの間にも広がっていると語った。

カン氏は、「彼らの症状は普通の風邪よりもはるかに重篤であり、その中にはCOVID-19患者によく見られる『白い肺』の症状も含まれている」と述べた。

同氏によれば、現在クリニックを訪れている患者の多くは、風邪のような症状や発熱を訴えているという。またカン氏は、「中国の病院は社会的なパニックを引き起こすことを懸念し、長い間、大規模なPCR検査を実施していなかったため、コロナの検査もほとんど行われていない」と語った。

カン氏によれば、多くの患者がコロナの検査を受けたがらないのは、「症状からすでに自分が感染していると認識しており、検査に100元(約13.90ドル)以上支払うことを望んでいないため」だという。

またカン氏は、自身の娘が勤務する広州市の三次医療機関で、医師が数日前に新型コロナウイルス感染症で死亡したことを明らかにした。「その医師は症状が悪化してから検査を受け、結果はCOVID-19陽性だった」と述べた。

カン氏によると、感染者数が増加しているにもかかわらず、地元の保健局は医師に対し、陽性症例の報告義務はないと通達しているという。

また、安全上の懸念から姓のみを明かした広州市在住の李さんは、大紀元に対し、最近では自分の家族全員を含め、周囲に風邪のような症状を訴える人が非常に多くなっていると語った。李さんによれば、そうした人々の多くは、これまでにも何度かコロナに感染していると診断された経験があり、今回の症状も新たにコロナに感染したことによると考えているという。

さらに、広州市に隣接する深セン市の住民である郭さんも大紀元に対し、5月1日から4日までのメーデーの連休中に多くの人々が旅行に出かけ、その後、風邪のような症状が出始めたと語り「それは新型コロナによるものとみられる」と述べた。

一方、中国北部の住民からもコロナ感染の急増に関する報告が相次いでいる。

内モンゴル自治区フフホト市で個人病院を経営する医師、劉坤さん(安全上の懸念から仮名を使用)は、5月30日に大紀元の取材に応じ、コロナの感染拡大が同地域でも続いており「多くの人が咳や痰、嘔吐、下痢といった症状を経験している」と語った。

1月8日、北京の病院呼吸器科でマスクを着けて待つ人々。Jade Gao/AFP via Getty Images

また劉さんは「症状が長引き、場合によっては数ヶ月続く患者も少なくない」と述べ、この感染症の性質を踏まえ「6月から7月にかけて感染が爆発的に増加する可能性がある」との見方を示した。

さらに、安全上の懸念から姓のみを明かした遼寧省本渓市在住の徐さんも、大紀元の取材に対し、周りの友人や親戚の間で最近、風邪のような症状を訴える人が増加していると語った。

「これは変異ウイルスによって引き起こされたCOVID-19である可能性が高いと、すでに認識されている」と劉氏は述べた。「症状は長引いており、改善の兆しがない。薬を使ってもまったく効果がないのだ」

また、徐さんは、突然死が相次いでおり、とくに40代から50代の人々に集中していると指摘した。

山西省でも感染が急速に拡大していると報告されている。長治市在住で、姓のみを明かした羅さんは大紀元に対し「妻、娘、義理の息子、孫娘を含め、家族全員が感染した」と語った。

「ゼロコロナ」再来の恐怖

各地の学校が休校となり、隔離措置が取られる中で、2020~2022年末まで中共当局が実施していた「ゼロコロナ」政策。コミュニティの封鎖、大規模な検査の義務化、移動の制限、さらには住民を強制的に隔離センターへ送るといった厳格な措置が再び導入されるのではないかという国民の不安が高まっている。

こうした懸念について、カナダの公立大学で教鞭を執り、医療センターの所長を務めるジョナサン博士は、5月30日に大紀元の取材に対し、「中国本土は現在、新型コロナ感染の新たな波に直面しているものの、現時点で公表されている公式データからは、都市封鎖を必要とするほどの深刻な感染拡大は読み取れない」との見解を示した。

「中共は依然として情報を隠蔽する戦略を続けており、現時点では都市封鎖やゼロコロナ政策の再実施は望んでいないようだ。なぜなら、これらの措置は経済発展に深刻な打撃を与えるからだ。現在、経済成長の促進が政権の最優先課題となっている」と劉氏は述べた。

飛天大学生物医学科学科の助教授であり、元米陸軍の微生物学者でもあるショーン・リン氏も、同様の見解を示している。

リン氏は5月30日、大紀元の取材に対し「当局は、厳格なゼロコロナ政策を再び実施すれば、国民の間で強い反発を招くことを理解しているため、当面はロックダウン措置を取ることはないだろう」と語った。

さらに「その代わりに、政府は現在、人々を目立たない形で隔離・移動させるための移動式キャビン病院や臨時の隔離施設を各地で建設している」と述べたうえで「表向きには大きな政策変更が発表されることはないかもしれない」と付け加えた。

中国語版の『大紀元時報』は今年初め、関係者の話として、新疆ウイグル自治区ウルムチ市や複数の省において、地方政府が新型コロナウイルスを含む呼吸器感染症の患者を隔離するため、大規模な移動式病院棟の建設を進めていると報じた。

ショーン・リン氏は、一部地域では感染者に自宅隔離を認める措置が取られている可能性があるとしつつも「政権が不安定化し、当局がそうした措置を取らざるを得ない事態に追い込まれない限り、こうした対応が大規模な政策として正式に導入されることはないだろう」との見方を示した。

2022年4月11日、中国東部広東省広州市で、新型コロナウイルス感染症患者用の仮設病院で働く従業員たち。AFP via Getty Images

一方、中国疾病管理局は先月分のCOVID-19に関する統計データをいまだ公表していないが、インフルエンザの週間報告は引き続き更新されている。

5月29日に発表された疫学第21週(5月19日〜25日)の報告によると、全国でインフルエンザ様疾患の発生が8件報告された。これは、第20週の1件、第19週の0件と比較して、明らかな増加である。

リン氏は、中国当局がCOVID-19の実際のデータを引き続き隠蔽していると指摘した。

「人々は感染拡大の実態や深刻さ、特に重症化率や致死率について何も知らされていない。当局はそうした重要な情報を一切伝えていないのだ」と同氏は述べた。

また、中国国内の状況は非常に複雑かつ深刻であり「NB.1.8.1株に限らず、複数の呼吸器系病原体が同時に存在し、3種類あるいは4種類の病原体による共感染が確認されている」と説明した。

そのうえで「しかしながら、当局が実態を公にしていないため、国際社会が現在の状況を正確に把握するのは非常に難しい」と警鐘を鳴らした。

変異株「NB.1.8.1」

中国の保健当局は5月23日、国際的に変異株の検出が増加している状況を受け、オミクロン株の一種であるNB.1.8.1が、現在中国全土で主流となっている変異株であると発表した。NB.1.8.1は、XDV系統の第6世代にあたるサブブランチである。

元米陸軍の微生物学者ショーン・リン氏は大紀元の取材に対し「現時点でNB.1.8.1変異株の病原性が著しく高まったという証拠は確認されていないが、免疫回避能力は従来株より約1.8倍に向上している。仮にこの株が、従来の優勢株に代わって主流になったとすれば、それは感染力が強まったことを意味する」と語った。

また、同氏は過去3年間にわたって新たなCOVID-19変異株が頻繁に登場していると指摘し「新しい株が旧株を置き換えて主流になる現象は、もはや日常的に見られるようになっている」と述べた。

世界保健機関(WHO)は、NB.1.8.1を「監視中の変異株(variant under monitoring)」に分類しており、これは監視リストに掲載されていることを意味すると、リン氏は説明した。

「現時点では、国際社会はこの変異株を特段注視すべき対象とは見なしていない」と同氏は述べている。

中国国内で感染の波が続く中、近隣のアジア諸国や米国においても、国際空港を経由した旅行者を含むNB.1.8.1の感染例が報告されている。

ただしリン氏は「WHOは中国からの正確なデータを得ていないため、中国発の渡航や航空便を制限する動きは現在のところ見られない」と述べた。

「世界各国の現在の監視体制では、2020年のような急激かつ大規模な感染拡大は観測されていない」とも語った。

さらにリン氏は「中国政府が正確な感染データを公開していないため、ウイルスの拡散経路の追跡は極めて困難だ」と指摘する。

「これは非常に大きなリスク要因となる。中国は、もはや隠しきれなくなるまで、多くの事実を意図的に隠蔽する傾向がある。その実態が明るみに出る頃には、すでに状況が深刻化し、手遅れとなっている可能性があるのだ。これこそが最大の懸念材料だ」と強調した。

Alex Wu
エポックタイムズの在米ライター。専門は中国社会、中国文化、人権、国際関係。