6月11日──中国当局が「全国臓器提供の日」と定めたこの日、中国版SNSウェイボー(微博)や知乎では、ある若き医師の死が再び注目を集めていた。
話題の中心は、1年前に不審な死を遂げた実習医・羅帥宇(ら・すいう)さん。彼が遺したA4用紙1119枚、約8キロに及ぶ“告発の記録”は遺族によって公開された。
2024年5月、湖南省の中南大学湘雅二医院の実習医・羅帥宇さんが病院近くの住宅から転落死した。警察は「自殺」と発表したが、遺族は事件性を強く疑った。その根拠は、羅さんが生前3年かけて収集していた膨大な内部資料にあった。
一度は削除されたが、遺族が依頼した業者によって復元された彼のパソコンやスマートフォンの中から見つかったのは、ICUに搬送された患者を意図的に“脳死”と見なし、積極的な治療を行わずに臓器を摘出するという病院での臓器移植の「闇」に関する記録だった。中には「ドナー」とされた児童の住所が派出所となっているなど、不審な点も多数見つかっており、違法性が強く疑われている。
なかでも衝撃を呼んだのは、摘出対象に、健康な子どもが多数含まれていたことで、音声データには「健康な児童を選別し、その臓器を高齢の元幹部に販売していた」との証言も記録されていた。
このほか、学校の健康診断を通じて生徒の血液型や身体情報を取得し、将来的な供給元として「データベース化」されていた疑惑もあった。

6月11日の「臓器提供の日」には、この事件に関する投稿が中国SNSを中心に爆発的に拡散され、多くのネットユーザーが「真相解明を」と声を上げた。
遺族によると、現地当局と病院側は、合計1500万元(約3億円)を提示して羅さんの残した記録を買おうとしたが遺族はこれを拒否。公安部門からはSNS投稿削除要請や圧力が続いた。
命を救うはずの病院が、利益のための屠殺場だった──。羅さんが遺した8キロの記録は、一病院ではなく「国家ぐるみの臓器収奪」という、重く背筋の凍る問いを、今も突きつけ続けるのだ。

(羅帥宇さんの父親による告発動画、「口封じ費用を提示された」ことと告発資料)
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