【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

米最高裁 トランプ政権の第三国送還を容認 下級審の差し止めを一時停止

2025/06/24
更新: 2025/06/24

6月23日、米最高裁は、トランプ政権が不法移民を出身国以外の「第三国」に送還することを妨げていた下級裁判所の命令を一時的に解除する決定を下した。この無署名の命令は、国土安全保障省対D.V.D.事件(Department of Homeland Security v. D.V.D.)に関するもので、ソニア・ソトマヨール氏、エレナ・ケイガン氏、ケタンジ・ブラウン・ジャクソン氏3人のリベラル派判事が反対意見を表明した。

トランプ政権は5月27日、最高裁に緊急申し立てを提出し、「不法移民の危機があり、送還の必要な外国人の中でも特に重罪を犯した者ほど送還が困難である」と主張した。政府は、第三国への迅速な送還を通じて、不法移民の迅速な国外退去を進めようとしている。「特に犯罪歴のある不法移民を受け入れる第三国との交渉には、繊細な外交と他の外交政策上の利益の調整が必要だ」と政府は述べている。

4月18日、ボストンの連邦地裁は、国土安全保障省(DHS)による移民の第三国(除外対象でない他国)への送還を一時的に禁止する仮差し止め命令を出した。

この命令は、DHSが拷問等禁止条約(CAT)に基づく保護請求の可能性を評価するために、裁判所が独自に定めた厳格な手続きを満たさない限り、第三国送還を認めないもので、たとえその請求が「一見して信憑性が低くても」適用される。。政府は、この命令が「大統領の移民政策の権限を侵害」、「第三国送還プロセスに混乱をもたらしている」と主張し、最高裁に解除を求めた。

申し立て書によると、5月27日の申立てが行われる数日前から、政府は「恐ろしい犯罪を犯し、最終的な送還命令を受けながらも何年、あるいは何十年もアメリカに留まっている一部の犯罪歴のある外国人」の送還手続きを進めていた。政府は、これらの移民が刑事裁判や移民手続きで「十分な法的プロセス」を経ているにもかかわらず、単一の地方裁判所が全国的な送還努力を妨げていると批判した。

移民側の主張

移民を代表する全米移民訴訟連盟(National Immigration Litigation Alliance)などの団体は、6月4日の意見書で、マーフィー判事の命令は「法に従った基本的な公平性を提供するもの」であり、「意味のある通知と聴聞の機会」を保証していると主張。政府が送還先で拷問や迫害の恐れがあるかどうかを適切に評価せずに送還を進めていると批判した。移民法では、出身国や事前に指定された国への送還が「実行不可能、不適切、または不可能」な場合にのみ第三国送還が認められるが、十分な通知や異議申し立ての機会が欠如していると指摘した。

最高裁の決定と反対意見

最高裁の6対3の決定は、マーフィー判事の命令を一時停止し、トランプ政権が第三国送還を再開することを認めるものだった。決定は無署名で理由は記載されておらず、緊急ドケット(shadow docket)に基づく典型的な形式だった。政府はこれを「アメリカ人の安全とセキュリティのための勝利」と歓迎し、国土安全保障省のマクラフリン報道官は「送還機を始動させろ」とSNSで述べた。

反対意見を表明したソトマヨール判事は、「命に関わる問題では慎重さが求められる」と強調。政府がグアテマラや南スーダン(米国務省が「犯罪、誘拐、武力紛争のため危険」と警告する国)への誤った送還を行ったと批判した。

ソトマイヨール判事は、「この重要な訴訟を下級審に必要な注意を払って扱う機会を与える代わりに、最高裁は政府が繰り返し無視してきた命令からの緊急救済を与えている」と非難。さらに、「私は、これほどまでに衡平的裁量の乱用に加わることはできない」と述べた。

「衡平的権限」とは、法律の厳格な適用が不当な結果を生む場合に、裁判所が公平な解決を図るために行使する裁量権のこと。

マシュー・ヴァダムは、受賞歴のある調査ジャーナリストです。