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トランプ大統領 独立記念日に「ワン・ビッグ・ビューティフル法案」に署名

2025/07/05
更新: 2025/07/05

【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は7月4日、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」に署名し、ホワイトハウスでの式典で大きな立法上の勝利とアメリカ独立記念日を祝った。署名は午後5時45分、ホワイトハウス敷地内で開催された軍人家族向けのピクニックの最中に行われた。署名式では、ホワイトマン空軍基地からB-2スピリット爆撃機2機が、それぞれF-35戦闘機2機に護衛されて上空を飛行した。

米下院議長マイク・ジョンソン氏(共和党・ルイジアナ州)、上院議員リンジー・グラム氏(共和党・サウスカロライナ州)、財務長官スコット・ベッセント氏、司法長官パム・ボンディ氏、その他複数の閣僚、共和党の上院・下院議員らが出席した。

「これは我が国の歴史上、最も人気のある法案だ」とトランプ大統領は署名前に述べた。「今、我々はあらゆる経済記録を塗り替えている。この法案が施行されれば、我が国の経済はロケットのように飛躍するだろう」とも語った。

また、最近のイランの核施設を標的とした米軍の作戦についても、「アメリカ史上最も完璧な軍事作戦の一つ」として成功を強調した。

トランプ大統領は、B-2爆撃機の拠点であるミズーリ州ホワイトマン空軍基地から150人の空軍兵士とその家族をホワイトハウスの署名式に招待した。この法案はトランプ大統領にとって大きな政治的勝利であり、国内政策の推進を可能にするものである。

この歴史的な法案は、数週間にわたる共和党内および上下院間の激しい交渉の末に成立した。主な内容は、2017年減税の恒久化、チップ・残業・社会保障所得の減税、国境の壁建設への資金提供、防衛費1,500億ドルの割り当て、いわゆるグリーンエネルギー税控除の廃止などである。

2025年7月4日、ワシントンのホワイトハウス南庭で行われた独立記念日の軍人家族ピクニックで、ドナルド・トランプ大統領が国歌斉唱に起立する中、B-2スピリット爆撃機がホワイトハウス上空を飛行する。Eric Lee/Getty Images

法案の主な構成要素は以下の通りである。

2017年減税の恒久化

この法案の中心は、2017年減税・雇用法で導入された個人所得税率の引き下げを恒久化することにある。これがなければ、減税は2025年末で失効し、2026年には税率が上昇して数百万世帯の税負担が増加することとなっていた。

児童税額控除の増額

児童税額控除が1人当たり2,000ドルから2,200ドルに引き上げられ、控除が恒久化される。

チップ・残業・自動車ローンの減税

トランプ大統領の選挙公約の一つである、チップ、残業代、自動車ローンに対する減税が実現する。納税者は、チップ収入のうち最初の25,000ドル、独身なら残業収入の12,500ドル、夫婦合算なら25,000ドルまで、米国製自動車ローン利息のうち10,000ドルまでを控除できる。

高齢者の社会保障所得控除

高齢者には社会保障所得から6,000ドルの控除が認められる。ただし、年収75,000ドル超(夫婦合算なら150,000ドル超)で段階的に減少し、独身で175,000ドル以上、夫婦合算で250,000ドル以上の場合は対象外となる。

国境警備への大規模資金

移民取締強化のため、1,500億ドルが割り当てられる。うち約300億ドルは移民・税関執行局(ICE)に、135億ドルは協力する州・地方自治体への助成金に充てられる。また、不法移民の収容に450億ドル、米墨国境の壁建設継続に465億ドルが計上され、2029会計年度末まで資金が確保される。

国防費

国防費として1,570億ドルが計上され、うち290億ドルは海洋能力・造船、250億ドルは弾薬、250億ドルは「ゴールデンドーム」ミサイル防衛プロジェクトに充てられる。これらは2029会計年度末までの支出をカバーする。

クリーンエネルギー税控除の削減

インフレ抑制法で創設された複数のクリーンエネルギー税控除が2025年以降段階的に削減される。電気自動車税控除は9月30日で終了。他の水素、風力、太陽光などのプロジェクト向け控除も、2027年12月31日または2028年1月1日までに稼働したものに限定される。

メディケイドと地方病院

メディケイド(低所得者向け医療保険)の支出抑制のため、健康な成人には毎月80時間の就労要件が課される。オバマケア拡大州では、病院・医師への課税率(プロバイダータックス)が6%から3.5%に引き下げられる。拡大していない10州には変更なし。地方病院への影響を緩和するため、500億ドルが支援に充てられる。また、1年間、中絶クリニックへのメディケイド資金提供が禁止される。

アメリカの州政府は、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の財源の一部として、病院や医師などの医療提供者に「医療提供者税(プロバイダータックス)」を課している。この税収は州のメディケイド予算に組み込まれ、連邦政府からの補助金を受ける際の自己負担分として使われる。

オバマケア(正式名称:医療費負担適正化法、ACA)によってメディケイドの受給資格を拡大した州(オバマケア拡大州)では、これまで最大6.0%まで医療提供者税を課すことができた。しかし新法案では、この上限が段階的に3.5%まで引き下げられる。

この変更の背景には、州が医療提供者税を多く課すことで、連邦政府からより多くの補助金を受け取れる仕組みがあり、これを抑制する狙いがある。なお、医療提供者はこの税を支払うが、通常は州から全額払い戻されるため、実質的な負担はほとんどない。

つまり、「課税率が6%から3.5%に引き下げられる」とは、州が病院や医師に課せる税率の上限が下がることであり、州のメディケイド財源が減少し、連邦補助金も減るため、州はメディケイドの受給対象者を絞り込まざるを得なくなる可能性がある、という意味である。

SNAP(フードスタンプ)削減

初めて、各州にSNAP(補助的栄養支援プログラム、Supplemental Nutrition Assistance Program)への拠出が義務付けられる。各州は、支払い誤差率に応じて給付費の5~15%を負担する。アラスカ州とハワイ州は、誤差削減への善意の努力を示せば免除申請が可能。事務費の州負担割合も50%から75%に引き上げられる。

従来、SNAPの給付費(実際に低所得世帯などに配られる食費補助)は全額連邦政府が負担してきた。しかし新しい法案では、各州も給付費の一部を負担しなければならなくなる。その負担割合は、各州の「支払い誤差率(給付の計算ミスや支給ミスの割合)」によって5%から15%の範囲で決まる。誤差率が高いほど州の負担割合も高くなる。

5兆ドルの債務上限引き上げ

米国債務上限が5兆ドル引き上げられる。財務省が数カ月以内にデフォルトの危機を迎える中、最重要項目の一つとなっている。

SALT控除上限の拡大

州・地方税(SALT,State and Local Tax)控除の上限が、2017年減税・雇用法で設定された現行の10,000ドルから40,000ドルに引き上げられ、今後5年間で毎年1%ずつ増加する。

2030年からは再び10,000ドルに戻る。SALT控除は、納税者が州・地方税の一部を連邦課税所得から差し引ける制度であり、保守派の間では、高税率の青い州(民主党州)に有利で、低税率の赤い州(共和党州)の住民に不利だとして長年論争となってきた。

教育政策の変更

ペルグラント(低所得者向け奨学金、Pell Grant)の高所得者や全額給付の学生への適用が縮小される。ペルグラントとは、アメリカ連邦政府が低所得の大学学部生を対象に支給する、返済不要の給付型奨学金である。

連邦学生ローンの返済プランも2種類導入され、従来型と所得連動型が選択できるようになる。

さらに、大学の基金(エンダウメント、endowment)に対し、資産規模に応じて1.4%、4%、8%の変動税率が課される。

Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、トランプ政権担当記者。 バイデン前政権とトランプ第一次政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。