在庫急増と需要低迷が市場を圧迫 南部都市では価格急落も
アメリカ最大手の不動産テック企業Zillowは、2025年6月から2026年6月までの最新12か月予測を発表し、全米の住宅価格が1.0%下落するとの見通しを示した。今年末までには、典型的な住宅価格が年初より2%下落すると予測している。
2025年7月21日に発表されたレポート「Zillow住宅価値と住宅販売予測(2025年7月)」では、新規掲載住宅数が販売数を上回り続けている状況が強調されている。これにより、総在庫量は前年同月比で約17%増加しており、ほぼすべての大都市圏で今後も在庫の増加が見込まれる。在庫は年末にはパンデミック前の水準にまで戻る可能性が高い。
予測の下方修正とその背景
Zillowは当初、2025年に入る時点で「今後12か月で住宅価格は2.6%上昇する」と予測していた。しかし、多くの地域で住宅市場の低迷が予想を上回り、同社は予測を複数回下方修正せざるを得なかった。現在、予測のさらなる下方修正は停止しているが、短期的には依然として全体的な市場見通しは悲観的である。
Zillowの経済学者は、3月の段階で「リストに載る住宅の増加が価格上昇の圧力を抑制している」と指摘している。供給の増加により、買い手には選択肢と交渉余地が生まれた一方で、手頃な価格帯の物件が依然として不足しており、多くの潜在的な買い手が購入を諦めて賃貸に流れている状況である。
パンデミック期間中、全米の住宅価格は40%以上も急騰し、住宅の手頃さは著しく悪化した。さらに2022年には住宅ローン金利が3%から6%へと急上昇し、在庫が積み上がりつつあり、これが短期的な価格への下方圧力となっている。
Zillowによれば、2025年上半期には売り手の市場参入が活発だったものの、買い手の需要がそれに追いついていない。結果として在庫が増加し、2025年通年の住宅価格は前年比で2.0%の下落が見込まれている。年末には住宅ローン金利がわずかに低下する可能性があるものの、手頃さの顕著な改善には至らないと見ている。こうした状況下で、買い手には選択肢が増え、交渉における優位性が高まると考えられている。
地域別の住宅価格予測 北東部は堅調で南部は深刻な下落
Zillowのモデルによれば、今後1年間で住宅価格が最も上昇する都市は以下の通りである。(2025年6月〜2026年6月)
ニュージャージー州アトランティックシティ(+2.9%)
ニューヨーク州キングストン(+2.2%)
テネシー州ノックスビル(+2.0%)
コネチカット州トリントン(+1.9%)
イリノイ州ロックフォード(+1.7%)
ニューハンプシャー州コンコード(+1.7%)
ペンシルベニア州ポッツビル(+1.7%)
アーカンソー州ファイエットビル(+1.6%)
コネチカット州ノリッジ(+1.6%)
ペンシルベニア州イースト・ストラウズバーグ(+1.5%)
一方で、2025年4月から2026年4月の期間において、最も住宅価格が下落する都市は以下の通りである。
ルイジアナ州ホウマ(−9.6%)
ルイジアナ州レイクチャールズ(−9.5%)
ルイジアナ州アレクサンドリア(−8.0%)
ルイジアナ州ニューオーリンズ(−7.2%)
ルイジアナ州ラファイエット(−7.0%)
ルイジアナ州シュリーブポート(−6.9%)
テキサス州ボーモント(−6.5%)
カリフォルニア州サンフランシスコ(−6.1%)
テキサス州オースティン(−5.1%)
テキサス州コーパスクリスティ(−5.0%)
Zillowの予測では、北東部および中西部の一部小都市において住宅価格が上昇している一方、南部のルイジアナ州の各都市では最大級の価格下落が見られている。加えて、サンフランシスコやオースティンといった大都市も下落都市のリストに名を連ねている。特に南部の「サンシャインベルト」地域は不動産市場の低迷が顕著であり、中でもフロリダ州南西部は全国的な住宅価格の下落を牽引する要因となっている。
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