美団、京東、アリババの間で繰り広げられているEC競争が激化する中、現在その戦火は地域生活サービス分野にも広がりを見せている。
9月10日、中国版Googleマップともいえるアリババ傘下の高徳地図は「高徳スカウトランキング」の開始を発表し、あわせて「ローカル飲食店支援プログラム」を始動した。この取り組みでは、飲食店、ホテル、観光地などの地元店舗に対し、AIによるランキングを提供する。また、ユーザーの来店消費を促すことを目的に、総額100億元(約2千億円)以上の補助金を支給する予定である。この施策は、生活関連サービスを手掛ける美団や最近、同分野に進出してきているEC(電子商取引)大手、京東集団(JDドット・コム)に対し、中国の消費者獲得競争における新たな圧力を加えることになる。
同社の声明によれば、今後は交通や飲食などの消費支出に対する補助金を通じた新たなインセンティブ策も導入するという。
ブルームバーグの報道によれば、アリババのこの一手は、三大企業による中国消費者争奪戦への投資家の懸念を呼び起こす可能性があるという。このEC(フードデリバリー)戦争は、京東が美団に対抗するため巨額の投資を行い、フードデリバリー分野に本格参入したことに端を発している。現在では、三社はクイックコマースや位置情報に基づくサービスといった新たな領域でも競争を繰り広げており、利益率への悪影響は予想を超えている。京東は2025年第2四半期の利益が半減し、美団は巨額の赤字を警告しているほか、8月には3社の株式が総額270億ドル(約4兆500億円)分売却された。
この激しいEC競争は、ついに北京当局をも緊張させる事態となっている。中国共産党の市場監督当局は9日、主要フードデリバリープラットフォームとの会合を実施し、不当競争の排除と悪質な補助金合戦の回避を求めた。
高徳地図は2014年に中国巨大テック企業のアリババに買収されており、同じく巨大テック企業の百度やテンセント傘下の類似サービスと競合している。アリババの提供する製品には、すでに位置情報を活用したライフスタイル機能が含まれており、配車サービスやホテル予約、目的地のランキングなどが提供されている。
アリババ自身も、いわゆる地域生活サービス分野において過去に挫折を経験している。東北証券の調査によれば、同分野のオンライン売上高は2025年には15兆元(約300兆円)に達する見通しである。アリババが提供していた団体購入サービス「口碑網」は、かつてYahoo!中国ポータルと統合されたものの、モバイルインターネットの発展初期には、競合する美団の「大衆点評」に打ち勝つことができなかった。
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