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日本の潜水艦は隠れる場所がなくなるのか? 専門家が中共が主張するAIや量子レーダーの優位性を疑問視 

2025/11/13
更新: 2025/11/13

論評
中国が最近発表した量子レーダーおよび人工知能(AI)を利用した潜水艦探知技術に関する声明は、潜水艦やステルス航空機の作戦上の優位性を奪い去るものであり、台湾防衛に積極的に関与しようとする国々の考えをくじくことを目的としていることは、ほとんど疑いの余地がない。また、これらの発表は台湾の士気をくじく意図もある。

しかしながら、こうした発表の意図に疑いの余地はほとんどない一方で、その正確性については多少の疑問の余地がある。

最初の発表は、安徽省で量産が開始された4チャンネル単一光子検出器に関するものである。この部品は、アメリカのステルス航空機を可視化する量子レーダーシステムの礎として称えられている。

2つ目の発表は、中国とロシアの合同軍事演習「Joint Sea-2025」で実証されたとされる、5層構造のAI強化型海洋グリッド(海洋探知システム)に関するものである。中国は、このAI搭載の海洋探知システムによって西太平洋が「透明な」海となり、潜水艦が隠れる場所がなくなると主張している。

一見すると、この2つの取り組みは画期的なもののように見えるが、北京が誇張した主張を繰り返してきた過去を踏まえれば、一定の健全な懐疑心が必要である。

確かに、これらの技術が明日にでも、あるいは数か月以内に実用化される可能性はある。しかし、中国共産党(CCP)の習近平が2027年までに台湾侵攻への準備を命じていることを考えると、これらの発表は実際の軍事技術というよりも、台湾を支援しようとする者たちの心に恐怖、不確実性、疑念を植え付けることを狙った心理的作戦の側面が強い可能性もある。この点を念頭に、これらの主張の信頼性を簡潔に検討してみたい。

10月14日、中国科学技術部の公式機関紙「科学技術日報」は、中国が「単一光子検出器」の量産により、量子情報部品における自給自足と国際的主導権を達成したと宣言した。このマッチ箱サイズの装置は、華氏マイナス184度で単一光子を90%の効率で検出し、ノイズを90%低減し、他国が達成したサイズの9分の1に小型化したとされている。

もし本当にその温度で動作し、良好な結果を得られるのであれば、それは大きな成果である。というのも、アメリカが開発している高性能単一光子検出器は、絶対零度に近い華氏マイナス458度からマイナス452度で動作するものだからである。

しかし、この主張を裏付ける詳細な査読付き論文が存在しないため、中国の単一光子検出器の実力がどの程度のものなのかは実際のところ不明である。中国はまた、自国の量子レーダーの探知距離が62マイル(1 マイル = 1.6093 キロ)に達すると主張している。もしこれが事実であれば、アメリカの量子レーダー(探知距離6.2マイル)を大幅に上回ることになる。

しかし、実際に効果的かつ軍事的に有用な量子レーダーであれば、数百マイルの探知距離を持つべきであり、62マイルという距離は実用上の価値が限られている。なぜなら、従来の対ステルスレーダーでも62マイル先の探知はすでに可能だからだ。さらに、これらの物理学・材料科学・工学の主要な進歩については独立した検証が存在しない。したがって、前述のように、健全な懐疑心を持つ余地がある。

中国は確かに量子技術を含む多くの有効な研究を発表しているが、同時に科学論文の撤回数で世界一を大きく上回っている。これまでに3万2千件以上の論文が撤回されており、撤回件数の多い上位10機関のうち7つが中国の研究機関である。

Retraction Watchのデータベースによれば、撤回理由にはデータまたは結果の有効性(2万4千件以上)、データに関する著者の偽造・捏造(180件)、画像の不正(4300件)、査読の偽装(6200件)、倫理問題などが含まれる。また、量子技術、AI、レーダー、センサー融合に関連する論文も、それぞれ150件、680件、23件、10件が撤回されている。

中国の研究倫理に関する撤回論文の事例研究では、なぜこれほど多くの欠陥・不正な研究が生じているのか、その背景が分析されている。こうした点を踏まえると、中国の主張を裏付けるために発表された研究論文にも欠陥がある可能性がある。

一方、アメリカではMIT(マサチューセッツ工科大学) 、レイセオン(アメリカの軍需製品メーカー)、その他多数の研究機関が量子レーダーの開発に取り組んでおり、国防高等研究計画局(DARPA)は「強靭な量子センサー」の開発を進めている。しかし、量子デコヒーレンス(量子の位相が失われる現象)の問題により、6.2マイルを超える探知距離を実現することは現時点で不可能である。軍事的に実用化可能な量子レーダーが数百マイルの探知距離を持つようになる時期について、いかなる予測も存在しない。中国が暗に示唆するような、数年以内の実戦配備という主張を裏付ける根拠はない。

量子レーダーの鍵となる量子センシング技術について、コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーは、短距離用途に限れば2030年代前半から半ばにかけて商業利用が始まる可能性があると述べている。ただし、これらの応用は量子レーダー最大の課題である「長距離でのコヒーレンス(量子信号の整合性)維持」を避けている。したがって、西側の専門家の多くは中国の主張に強い懐疑的立場をとっている。

一方で、中国が南華早報で報じたように、AIとソナー・磁気異常探知・塩分濃度センサーなどのセンサーフュージョン(融合分析)を用いて潜水艦を探知するという主張は、量子レーダーに比べればずっと現実的である。実際、このようなAIの応用は非常に明白なものであり、アメリカが毎年数千億ドルを軍事に費やしていることを考えれば、同様のシステムを開発していない方がむしろ問題といえる。

とはいえ、量子レーダーのような極めて難しい技術的障壁は存在しないにしても、中国の言う「AI搭載潜水艦探知ネットワーク」が実際に十分な速度と訓練精度を持ち、アメリカの潜水艦を95%の確率で探知できるという主張をそのまま信じるべきではない。

それでも、中国が最近の中露合同演習で自国およびロシアの潜水艦を探知できたのであれば、適切な訓練データによってアメリカの潜水艦探知能力を高めることはありうる。しかし、海中環境は極めて動的で複雑であり、ドイチェ・ヴェレの記事で引用された専門家たちは、この「95%」という精度には懐疑的である。したがって、95%という具体的な数値は疑わしいものの、技術的な概念自体は妥当である。よって、このAI潜水艦探知ネットワークの主張は完全に否定できるものではない。

この2つの発表のタイミングは、中国の競合国に恐怖・不確実性・疑念を植え付け、台湾の士気をくじく意図があることは間違いないが、それが即ち虚偽であるとは限らない。とはいえ、両主張を簡潔に検証した結果、AIを用いた潜水艦探知ネットワークは現実的にあり得る一方で、量子レーダーが数年以内に戦局を変える「ゲームチェンジャー」として配備される可能性は極めて低く、実際には宣伝的要素の方が強いと考えられる。

結論として、レーガン大統領の言葉を借りれば、共産中国に関しては「信用せず、常に検証せよ」ということだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。