ロシア当局によると、シベリア・極東ペスト研究所の研究員が原因不明の肺炎で死亡し、ペスト発生への懸念が広がっている。ロシア当局はペストの発生を否定し、防疫措置もすでに解除したが、現地の中国人の間ではマスクを大量に購入する動きがみられ、一時帰国して状況を見守る人もいる。
周辺国が国境での健康監視を強化するなか、中国内モンゴル自治区フルンボイル市の疾病予防管理センターもペストへの警戒を呼びかけた。
ロシア人は普段通り 現地の中国人はマスクを買いだめ
ロシア・イルクーツク州は10月8日、この問題を受けて実施していた防疫・隔離措置を正式に解除した。
イルクーツクのバイカル国立大学に留学する権さん(仮名)は12日、大紀元の取材に対し、「こちらは特に緊張感はない。オンライン授業にもなっていないし、みんなマスクもしていない。私も今、外にいるがマスクはしていない。本当に緊張感はなく、特別な予防措置もない。今日は多くの人が外出して用事を済ませており、午後には授業もある」と話した。
医薬品の買い占めは起きていないという。一方、事情を知る人物によると、中国人がマスクを大量に購入する動きが出ている。
中国メディア「澎湃新聞」も11日、イルクーツク国立大学の中国人留学生の話として、地元住民は防疫をあまり気にせず普段通り生活している一方、中国人が薬局のマスクをほぼ買い尽くしたと報じた。ロシア人でマスクを着ける人はほとんどいないという。
同報道のコメント欄には「言葉に信用がない以上、警戒せざるを得ない」との声も寄せられた。
北京出身の双竜さん(仮名)は、一時帰国して様子を見ることを選んだ。大紀元の取材に「6千元余りを払い、乗り継ぎ便で北京に戻った。11日未明に到着した。1か月の無給休暇を取り、自費で帰国して様子を見ることにした。万が一に備えるためだ。1%の可能性にも賭けたくない。ロシア政府は信用していない。旧ソ連のチェルノブイリ事故も初期には『問題ない』と言っていた」と語った。
モスクワでは表面上、特に異変は感じられなかったという。
「飛行機を降りた後も特に制限はなかった。機内はロシア人が多く、満席だったが、マスクをしている人はいなかった。中国人も少なくなかったが、やはり誰もマスクをしていなかった。薬を買い込んだりもしていない。ただ1か月ほど家に戻って様子を見るつもりだ」
黒竜江省ハルビン出身の楊明さん(仮名)は、「イルクーツクの友人に聞いたところ、現地では『すでに抑え込んだ』と言っているそうだ。ただ、実際の状況は誰にも分からない。今回は報道されたから知ることができたが、報道されなければ一般の人には何も分からない」と話した。
内モンゴルがペスト警戒を呼びかけ
ロシア当局によると、28歳の女性研究員ダリア・シピロワさんは10月2日、「原因不明の肺炎」で死亡した。遺体や関連検体からは、ペスト菌など危険性の高い病原体は検出されなかったとしている。
イルクーツク市と周辺地域では一時、防疫措置が取られた。ロシア側は、研究所で生物安全上の事故は起きておらず、約200人の濃厚接触者に対する健康観察や隔離も、研究所の業務内容を踏まえた予防措置だったと説明している。現時点で感染が持続的に広がっている証拠はないとしている。
一方、WHOは、ロシア側から提供された情報がなお不十分で、独自にリスクを評価できないとしている。死者や接触者の詳しい検査結果、正確な病原体、隔離措置を取った理由などについて、引き続き情報提供を求めている。
ロシア当局はペストの発生を否定しているものの、研究員の死亡原因となった病原体については現在も明らかにしていない。
情報不足への懸念から、周辺国も警戒を強めている。ロシアの研究所職員がペストに感染して死亡したとの情報が広がった後、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタンなどは検疫や隔離措置、検査を強化した。モンゴル政府もロシアとの国境で健康監視措置を実施している。
中国でも、内モンゴル自治区フルンボイル市がペスト感染への注意を呼びかけた。
内モンゴル放送局によると、フルンボイル市疾病予防管理センターは10日、同市がペストの自然疫源地で、ロシア極東地域と隣接し、人の往来も多いとして、ロシア極東のペスト自然疫源地から中国に入国した人に健康状態への注意を促した。
疑われる症状が出た場合は速やかに医療機関を受診し、ペスト自然疫源地への渡航歴を正確に伝えるよう求めている。
内モンゴル自治区満洲里市の疾病予防管理センターも8日、ペスト流行のリスク評価会議を開き、中国国内外のペスト発生状況を分析した。ロシアで発生した原因不明の肺炎も重点項目として取り上げた。
ロシアから離れた湖南省や広東省の衛生当局も、9日前後にペストへの注意喚起を出した。
中露はそれぞれ2025年9月15日と12月1日から、相手国民に対するビザ免除措置を開始した。2025年の中露間の人的往来は300万人を超え、今年上半期も前年同期比43%増えた。ロシアは中国を訪れる外国人旅行者の出身国別で2位となった。
中国でもペスト散発 感染症への警戒強まる
中国では現在もペストの感染例が確認されている。2010年以降、中国本土では散発的な発生が中心で、年間の報告例は少数にとどまっている。
現在は内モンゴル、寧夏、青海、雲南などの自然疫源地を中心に患者が確認されており、野生動物との接触や牧畜地域での活動に関連する感染が多い。
2023年には、内モンゴル自治区で1週間に3人のペスト患者が確認された。3人はいずれも同じ家族だった。
2020年8月2日には、包頭市達茂旗石宝鎮で腸ペストによる死亡例が1件報告された。2019年11月には新華社が、内モンゴル自治区で2人の患者が確認され、人から人へ感染する「肺ペスト」と診断されたと報じている。
ロシアでの「原因不明の感染症」をめぐる情報は、中国国内でも関心を集めている。コロナの流行や都市封鎖を経験したこともあり、感染症への警戒感は根強い。
SNSや通販サイトでは、医薬品を買い求める動きが急速に広がっている。公式に確認されていない情報も拡散し、「薬を備蓄しておいた方がいい」と呼びかける投稿や、東北3省で「都市封鎖が行われるかもしれない」として、食料やマスク、抗生物質の備蓄を勧める投稿も出ている。
内モンゴル自治区ハイラルの大鵬さん(仮名)は、大紀元の取材に「念のためKN95マスクを500枚買った。本当に感染が広がっても、外出するのは買い物くらいだろうから、マスクと消毒用アルコールを用意しておけばいい。今のところマスクをしている人はごく一部で、特に変化は感じない。12月ごろまで様子を見るしかない」と話した。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。